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第44話 お説教
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「ぼく、そろそろ集落へ戻らなくちゃいけないミャ」
ぼくがそう言うと、グレイさんは悲しそうな顔で必死に訴えてくる。
『何故だ? せっかく友達になれたのに、もう帰っちゃうのかっ? 寂しいから、帰らないでくれ! ずっと、オレの側にいてくれっ!』
「でも……、誰にも何も言わずにひとりで集落を飛び出して来ちゃったからミャ……」
ぼくが小さな声でボソボソと答えると、グレイさんは今度は怒り出した。
『なんだとっ? シロちゃんみたいなちっちゃくて可愛い仔猫が、ひとりで外へ出たら危ないじゃないかっ!』
グレイさんの低い怒鳴り声が怖くて、ぼくはビクッと体をこわばらせてしょんぼりと耳としっぽを垂れる。
叱られたことで反省の気持ちがこみ上げてきて、涙がポロポロとこぼれ落ちる。
ぼくみたいな弱い仔猫が、ひとりで集落を出たら危ないってことは分かっている。
「ごめんなさいミャ。きっと今頃、集落のみんなもお父さんもお母さんも心配していると思うミャ……」
『当たり前だ! なんで、こんなことをしたんだっ!』
「でも正直に『トマークトゥスを助けに行く』って言ったら、みんなに止められていたはずミャ……」
『あ……』
「だからみんなに黙って、こっそりと集落を飛び出して来るしかなかったミャ……」
『……そうか、そうだよな。オレを助ける為に来てくれたのに、怒鳴って悪かった』
集落を飛び出した理由を聞いたグレイさんは、申し訳なさそうな顔で謝ってくれた。
慰めるように、ぼくの顔をペロペロと舐めながら続ける。
『泣かないでくれ。シロちゃんが泣いていると、オレまで悲しくなる。いや、オレが泣かせたんだったんだな。本当にすまない』
「グレイさんは、ぼくのことが心配だから叱ってくれたんでしょ? 悪いことをしたんだから、叱られて当たり前ミャ……」
ぼくもお返しに、グレイさんの顔をペロペロと舐めた。
「それにぼくはまだ、グレイさんを助けられていないミャ」
『いや、もう十分助けてもらったが?』
「虫歯の治療がまだミャ」
『虫歯?』
グレイさんは、不思議そうに首を傾げている。
「虫歯」なんて言葉は、初めて聞く言葉だと思う。
病名は、誰かが付けた名前に過ぎない。
治せなくても、これ以上悪くなるのを食い止めることは出来るはず。
「グレイさん、あ~んしてミャ」
『あ~……』
グレイさんの虫歯の状態を確認する為、口を大きく開けてもらった。
見れば、歯全体が茶色くなっていて、ところどころ欠けていた。
歯茎も、赤く腫れている。
これは痛そうだ、早くなんとかしないと。
確か、万能薬のヨモギが歯痛に効いたはず。
ヨモギなら、簡単に手に入る。
あとは歯磨き効果がある、偶蹄目の骨や角を手に入れないと。
ウシやシカを狩るには、お父さんとお母さんを頼らないといけない。
やっぱり一度、集落へ戻る必要がある。
しかし、グレイさんを集落へ連れて行くことは出来ない。
グレイさんとは、ここで一旦お別れしなきゃ。
「グレイさん、また来るミャ!」
『ああ、またいつでも会いに来てくれ! オレはシロちゃんが来てくれるのを、いつまでも待っているぞっ!』
ぼくが別れを告げると、グレイさんは名残り惜しそうな目でぼくをじっと見つめた。
グレイさんの話によれば、ぼくは初めての友達だそうだ。
トマークトゥスの群れは血のつながりがあることが多く、仲間意識が強い。
同じ群れにいるもの同士強い絆はあっても、友達と呼べるものはいなかったらしい。
「仲間」と「友達」は違う。
しかも、グレイさんは愛猫家。
大好きな猫と話せるとあって、ぼくに対する愛が重いんだ。
ぼくも猫に生まれ変わって猫と話せるようになった時は、めちゃくちゃ嬉しかったもん。
気になって何度か振り返ってみると、グレイさんはいつまでもぼくを見つめていた。
群れから追い出されて、ひとりぼっちで寂しいってのもあるんだろうな。
ここから集落までの距離は、そう遠くない。
だけど、ずいぶん長い時間、グレイさんと話し込んでしまった。
集落を飛び出してから、かなりの時間が経っている。
いくら自由気ままな猫でも、ぼくがいなくなったことに気付いているだろう。
きっと今頃、お父さんもお父さんも集落のみんなもぼくを心配して探しているに違いない。
「虫歯のトマークトゥスを探しに行った」なんて、言えるはずがない。
集落を出た上手い理由を、考えなくては……。
・集落には生えていない薬草を、採りに行った。
・ひとりで、狩りに行った。
それっぽい理由としては、このへんかな。
どんな上手い言い訳が出来たところで、叱られるのだけは避けられないだろうけど……。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
そんなこんなでイチモツの集落へ、戻ってきた。
ぼくとしてはこっそりと集落へ入ったつもりだったんだけど、バレバレだったらしい。
過保護で心配性のお父さんとお母さんに、すぐ見つかってしまった。
「シロちゃん、どこに行ってたのニャー!」
「シロちゃんがいなくなって、とってもとっても心配したニャ」
「ごめんなさい、ちょっと気になることがあってミャ……」
言い訳しながら近付いて行くと、お父さんとお母さんがビクッとして、立ち止まった。
今まで、見たこともない反応。
何か、おかしなことでもあったのかな?
ふたりはぼくに近付くと、臭いを嗅ぎ始める。
あれ? ひょっとして臭い?
そういえば、グレイさんに舐め回されたっけ。
あの後、自分で毛づくろいもしていない。
ってことは……。
「シロちゃんの体から、知らない獣の臭いがするニャッ!」
「この臭いは、もしかして……。まさかシロちゃん、あのトマークトゥスに襲われたニャーッ?」
「トマークトゥスッ? シロちゃん、大丈夫だったニャッ? どこか、ケガはないニャッ?」
お父さんとお母さんは、不安と恐怖が入り混じった表情で、問い詰めてきた。
臭いで、あっさりバレてしまった。
こうなったら、隠し通せない。
ぼくは、正直に話すことにした。
「集落の周りをウロウロしていたトマークトゥスがいなくなったから、気になって探しに行ったミャ。グレイさんっていう名前なんだけど、おなかが空いて死にそうになっていたから助けたミャ。お友達になったミャ」
ぼくの話を聞いたお父さんとお母さんは、恐怖の表情で震え上がっている。
「シロちゃん、トマークトゥスに会いに行くなんて危ないことしちゃダメニャー!」
「シロちゃんが、トマークトゥスに食べられなくて良かったニャ!」
「いくらシロちゃんでも、トマークトゥスと友達になったなんて信じられないニャー……」
う~む……、やっぱり信じてくれないか。
よし、こうなったら話を変えてごまかそう。
「お父さんとお母さん、一緒に狩りへ行かないミャ?」
「もちろん、一緒に行くニャー。シロちゃんひとりで、行かせられないニャー」
「シロちゃん、おなかが空いたかニャ? じゃあ、美味しいお肉を狩りに行くニャ」
ふたりを誘うと、狩りに行ってくれることになった。
グレイさんの為にウシやシカを狩って、骨と角を手に入れなくちゃ。
ぼくがそう言うと、グレイさんは悲しそうな顔で必死に訴えてくる。
『何故だ? せっかく友達になれたのに、もう帰っちゃうのかっ? 寂しいから、帰らないでくれ! ずっと、オレの側にいてくれっ!』
「でも……、誰にも何も言わずにひとりで集落を飛び出して来ちゃったからミャ……」
ぼくが小さな声でボソボソと答えると、グレイさんは今度は怒り出した。
『なんだとっ? シロちゃんみたいなちっちゃくて可愛い仔猫が、ひとりで外へ出たら危ないじゃないかっ!』
グレイさんの低い怒鳴り声が怖くて、ぼくはビクッと体をこわばらせてしょんぼりと耳としっぽを垂れる。
叱られたことで反省の気持ちがこみ上げてきて、涙がポロポロとこぼれ落ちる。
ぼくみたいな弱い仔猫が、ひとりで集落を出たら危ないってことは分かっている。
「ごめんなさいミャ。きっと今頃、集落のみんなもお父さんもお母さんも心配していると思うミャ……」
『当たり前だ! なんで、こんなことをしたんだっ!』
「でも正直に『トマークトゥスを助けに行く』って言ったら、みんなに止められていたはずミャ……」
『あ……』
「だからみんなに黙って、こっそりと集落を飛び出して来るしかなかったミャ……」
『……そうか、そうだよな。オレを助ける為に来てくれたのに、怒鳴って悪かった』
集落を飛び出した理由を聞いたグレイさんは、申し訳なさそうな顔で謝ってくれた。
慰めるように、ぼくの顔をペロペロと舐めながら続ける。
『泣かないでくれ。シロちゃんが泣いていると、オレまで悲しくなる。いや、オレが泣かせたんだったんだな。本当にすまない』
「グレイさんは、ぼくのことが心配だから叱ってくれたんでしょ? 悪いことをしたんだから、叱られて当たり前ミャ……」
ぼくもお返しに、グレイさんの顔をペロペロと舐めた。
「それにぼくはまだ、グレイさんを助けられていないミャ」
『いや、もう十分助けてもらったが?』
「虫歯の治療がまだミャ」
『虫歯?』
グレイさんは、不思議そうに首を傾げている。
「虫歯」なんて言葉は、初めて聞く言葉だと思う。
病名は、誰かが付けた名前に過ぎない。
治せなくても、これ以上悪くなるのを食い止めることは出来るはず。
「グレイさん、あ~んしてミャ」
『あ~……』
グレイさんの虫歯の状態を確認する為、口を大きく開けてもらった。
見れば、歯全体が茶色くなっていて、ところどころ欠けていた。
歯茎も、赤く腫れている。
これは痛そうだ、早くなんとかしないと。
確か、万能薬のヨモギが歯痛に効いたはず。
ヨモギなら、簡単に手に入る。
あとは歯磨き効果がある、偶蹄目の骨や角を手に入れないと。
ウシやシカを狩るには、お父さんとお母さんを頼らないといけない。
やっぱり一度、集落へ戻る必要がある。
しかし、グレイさんを集落へ連れて行くことは出来ない。
グレイさんとは、ここで一旦お別れしなきゃ。
「グレイさん、また来るミャ!」
『ああ、またいつでも会いに来てくれ! オレはシロちゃんが来てくれるのを、いつまでも待っているぞっ!』
ぼくが別れを告げると、グレイさんは名残り惜しそうな目でぼくをじっと見つめた。
グレイさんの話によれば、ぼくは初めての友達だそうだ。
トマークトゥスの群れは血のつながりがあることが多く、仲間意識が強い。
同じ群れにいるもの同士強い絆はあっても、友達と呼べるものはいなかったらしい。
「仲間」と「友達」は違う。
しかも、グレイさんは愛猫家。
大好きな猫と話せるとあって、ぼくに対する愛が重いんだ。
ぼくも猫に生まれ変わって猫と話せるようになった時は、めちゃくちゃ嬉しかったもん。
気になって何度か振り返ってみると、グレイさんはいつまでもぼくを見つめていた。
群れから追い出されて、ひとりぼっちで寂しいってのもあるんだろうな。
ここから集落までの距離は、そう遠くない。
だけど、ずいぶん長い時間、グレイさんと話し込んでしまった。
集落を飛び出してから、かなりの時間が経っている。
いくら自由気ままな猫でも、ぼくがいなくなったことに気付いているだろう。
きっと今頃、お父さんもお父さんも集落のみんなもぼくを心配して探しているに違いない。
「虫歯のトマークトゥスを探しに行った」なんて、言えるはずがない。
集落を出た上手い理由を、考えなくては……。
・集落には生えていない薬草を、採りに行った。
・ひとりで、狩りに行った。
それっぽい理由としては、このへんかな。
どんな上手い言い訳が出来たところで、叱られるのだけは避けられないだろうけど……。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
そんなこんなでイチモツの集落へ、戻ってきた。
ぼくとしてはこっそりと集落へ入ったつもりだったんだけど、バレバレだったらしい。
過保護で心配性のお父さんとお母さんに、すぐ見つかってしまった。
「シロちゃん、どこに行ってたのニャー!」
「シロちゃんがいなくなって、とってもとっても心配したニャ」
「ごめんなさい、ちょっと気になることがあってミャ……」
言い訳しながら近付いて行くと、お父さんとお母さんがビクッとして、立ち止まった。
今まで、見たこともない反応。
何か、おかしなことでもあったのかな?
ふたりはぼくに近付くと、臭いを嗅ぎ始める。
あれ? ひょっとして臭い?
そういえば、グレイさんに舐め回されたっけ。
あの後、自分で毛づくろいもしていない。
ってことは……。
「シロちゃんの体から、知らない獣の臭いがするニャッ!」
「この臭いは、もしかして……。まさかシロちゃん、あのトマークトゥスに襲われたニャーッ?」
「トマークトゥスッ? シロちゃん、大丈夫だったニャッ? どこか、ケガはないニャッ?」
お父さんとお母さんは、不安と恐怖が入り混じった表情で、問い詰めてきた。
臭いで、あっさりバレてしまった。
こうなったら、隠し通せない。
ぼくは、正直に話すことにした。
「集落の周りをウロウロしていたトマークトゥスがいなくなったから、気になって探しに行ったミャ。グレイさんっていう名前なんだけど、おなかが空いて死にそうになっていたから助けたミャ。お友達になったミャ」
ぼくの話を聞いたお父さんとお母さんは、恐怖の表情で震え上がっている。
「シロちゃん、トマークトゥスに会いに行くなんて危ないことしちゃダメニャー!」
「シロちゃんが、トマークトゥスに食べられなくて良かったニャ!」
「いくらシロちゃんでも、トマークトゥスと友達になったなんて信じられないニャー……」
う~む……、やっぱり信じてくれないか。
よし、こうなったら話を変えてごまかそう。
「お父さんとお母さん、一緒に狩りへ行かないミャ?」
「もちろん、一緒に行くニャー。シロちゃんひとりで、行かせられないニャー」
「シロちゃん、おなかが空いたかニャ? じゃあ、美味しいお肉を狩りに行くニャ」
ふたりを誘うと、狩りに行ってくれることになった。
グレイさんの為にウシやシカを狩って、骨と角を手に入れなくちゃ。
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