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第46話 グレイさんの想い
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お父さんとお母さんはすっかりビビり散らかしてしまい、全然近付いて来てくれない。
ぼくだってグレイさんが愛猫家じゃなかったら、絶対に友達になれなかった。
普通のトマークトゥスは、近付いたら間違いなく喰われるし。
グレイさんだけが、特別なんだよね。
理解してくれなくても良い。
ただぼくとグレイさんが友達だってことを、お父さんとお母さんに知って欲しい。
「あそこにいるのが、ぼくのお父さんとお母さんなんだけどミャ……。ふたりとも怖がっちゃってミャ」
『いや、大丈夫だ。猫に怯えられるのは、いつものことだから慣れている』
「グレイさんに紹介したかったのに、ごめんなさいミャ」
『謝らないでくれ、シロちゃん。オレは、可愛い猫を遠くから眺められるだけでいいんだ』
そう言って、グレイさんは悲しそうに笑った。
グレイさんは、愛猫家なのに、猫に近付くことも出来ない。
せめて、ぼくだけでもたくさん仲良くなりたい。
ぼくは、出来るだけ明るく笑い掛ける。
「あっ、そうミャ! グレイさんに、お土産を持ってきたミャッ!」
『オレは、シロちゃんが会いに来てくれるだけでも嬉しいのに。シロちゃんがくれるものなら、なんでも喜んで受け取るぞ』
ぼくは背負っていた骨と角を降ろして、グレイさんの前に差し出す。
「はい、シンテトケラスの骨と角ミャ。お肉もたっぷり付いているところを、選んできたミャ」
『おおっ、ありがとう! これは美味しそうな骨と角だっ! オレは、骨を齧るのが大好きなんだっ!』
グレイさんは大喜びで、骨をガジガジと噛み始めた。
グレイさんが喜んでくれて、ぼくも嬉しい。
「毎日そうやって骨をガジガジしていたら、きっと歯も良くなるミャ」
『なに? シロちゃんは、オレの歯も心配してくれていたのか?』
「もちろんミャ。グレイさんにこの骨と角をあげたかったから、お父さんとお母さんに頼んで狩ってきてもらったミャ」
『シロちゃん……っ!』
ぼくがにっこりと笑うと、グレイさんは驚いた顔で骨を落として大粒の涙を流し始めた。
グレイさんが急に泣き出したので、ぼくはギョッとする。
「ど、どうしたミャッ? ガジガジして、歯が痛くなったミャッ?」
『ありがとう、ありがとう……。シロちゃんが友達になってくれただけでも、オレは充分すぎるくらい幸せなのに。歯の心配までしてくれて、本当に嬉しくて仕方がないんだ……』
涙の意味を知ったぼくは、グレイさんが泣き止むまで涙をペロペロ舐め続けた。
「シロちゃん」
「ミャ?」
声を掛けられて振り向くと、お父さんとお母さんがさっきよりも近いところにいた。
まだ10メートルくらい距離はあるけど、大きな進歩だ。
だけどまだかなり怯えているみたいで、「やんのかステップ」をしている。
「やんのかステップ」っていうのは、猫がイカ耳になって背中を丸めて毛を逆立てながら、ステップを踏むことだよ。
「シロちゃんが、そのトマークトゥスとお友達だってことは分かったニャー」
「でも、トマークトゥスは怖いニャ……」
「グレイさんは、他のトマークトゥスとは違うミャ。グレイさんはとっても優しいから、絶対に猫を食べないミャ。だから、グレイさんと会うのを許して欲しいミャ」
ぼくが一生懸命説明していると、ようやく落ち着いたらしいグレイさんがお父さんとお母さんを見て嬉しそうにしっぽを振っている。
『シロちゃんのお父さんとお母さんも、オレとお友達になってくれるのか?』
「お父さんとお母さんと、お友達になるのは難しいかもしれないミャ。だけどぼくとグレイさんが仲良くすることは、許してもらうミャ」
『そうか! それならばオレからも、シロちゃんのお父さんとお母さんにお願いしようっ!』
「グレイさんの言葉は、お父さんとお母さんには分からないミャ。ぼくが代わりに通訳するミャ」
『だったらお父さんとお母さんに、オレの気持ちを伝えてくれ』
「分かったミャ」
『オレは、シロちゃんが大好きだ! 心から愛しているっ! 猫の中で、一番愛している! オレには、シロちゃんが必要なんだっ! オレはもう、シロちゃんがいないと寂しくて死んでしまう! 絶対に大切にするから、シロちゃんをオレにくれっ! いや、下さいっ!』
「ミャッ?」
いやいやいやいやいや、待って待って待って待ってっ!
それもう、お友達じゃない!
完全に、両親に結婚の許しをもらいに来た婚約者のセリフだよっ!
グレイさんは、ぼくと番になりたいのっ?
ぼくはグレイさんとお友達になりたいだけで、それ以上の関係は求めてないんだけどっ!
そもそも種類が違う動物は、番にはなれない。
そんなこと言われたって、こんなことお父さんとお母さんに伝えられないよ……。
推しを語るオタクみたいに早口で言われたから、ほとんど覚えられなかったし。
「えっと、グレイさんの気持ちは分かったミャ……」
ん? いや待てよ?
グレイさんは愛猫家だから、単純に「猫が好き」ってことだよね。
ぼくだって猫が大好きだ、愛している。
それにグレイさんにとってぼくは、初めて出来た猫の友達。
初めての友達だから、距離感がちょっとおかしいだけなんだ。
てっきり、ぼくと番になりたいってことかと思っちゃったよ。
めちゃくちゃ悩んだ末に、「グレイさんはぼくと仲良くなりたいんだって」とだけ伝えておいた。
グレイさんのぼくに対する愛が重いことは、お父さんとお母さんに伝えられなかった。
ぼくの話を聞いたお父さんとお母さんは、深々とため息を吐いた。
「分かったニャー。シロちゃんがそんなに言うなら、グレイさんとお友達になっても良いニャー」
「ただし、シロちゃんひとりで、集落から出るのは危ないからダメニャ」
「私たちと一緒に会うなら、良いニャー」
「本当ミャ? ありがとうミャ!」
両親同伴だけど、これからもグレイさんと会えることになった。
グレイさんにもそのことを伝えると、ちぎれんばかりにブンブンとしっぽを振り出す。
『本当かっ? これからもずっと、シロちゃんと一緒にいられるんだなっ?』
「ぼくも、これからもグレイさんとお友達でいられて嬉しいミャ」
『だったら、シロちゃんの集落へ行きたいっ!』
「えっ? イチモツの集落に来るのミャッ?」
『ダメなのかっ?』
「それはさすがに、ムリだと思うミャ」
『集落に入りたいなんて、贅沢は言わない! 集落の近くに、いさせてもらえるだけで良いんだっ! そうすればシロちゃんといつでも会えるし、オレも可愛い猫たちをずっと眺めていられるじゃないかっ!』
「う~ん、困ったミャ~……」
「触れなくてもいいから、可愛い猫をずっと眺めていたい」という気持ちは、ぼくにも良く分かる。
だけどグレイさんが集落の近くにいるだけで、猫たちは怯えて眠れなくなっちゃうんだよね。
両方の気持ちが分かるからこそ、グレイさんの望みを叶えられないと分かってしまう。
ぼくはやっぱり猫だから、グレイさんよりも集落の猫たちを大切にしたい。
ヘタに期待だけさせて、グレイさんをガッカリさせたくない。
だからぼくは、グレイさんに正直に打ち明けることにした。
「悪いけど、グレイさんは集落に来ちゃダメミャ」
『オレが、トマークトゥスだからか?』
「そうミャ」
『そうだよな……、すまなかった。さっきの話は、どうか忘れてくれ』
グレイさんの顔から笑みが消え、頭と耳としっぽがしょぼんと垂れる。
グレイさんは沈んだ顔で、ぽつぽつと喋り出す。
『オレも、分かっていたんだ。初めて猫とお話しが出来てシロちゃんとお友達になれたから、つい浮かれて調子に乗ってしまった……』
「期待に応えられなくて、ごめんなさいミャ……」
ぼくが謝ると、グレイさんは悲しげに微笑む。
グレイさんはぼくを抱き寄せて、ペロペロと顔を舐める。
『いや、良いんだ。オレは、シロちゃんがお友達になってくれただけで充分だから』
「ぼくも、トマークトゥスのお友達はグレイさんだけミャ」
『シロちゃん、オレとお友達になってくれてありがとう』
「こちらこそ、ありがとうミャ」
『オレはここにいるから、いつでも会いに来てくれ。いつまでも、待っているから』
「うん、また来るミャ」
ぼくとグレイさんは笑い合い、会う約束をしてその場で別れた。
グレイさんは寂しそうな顔で、立ち去るぼくたちをいつまでも見つめていた。
――――――――――――――――――――
【トマークトゥスとリビアヤマネコの体格差】
<トマークトゥス>
推定全長約100~160cm
体重約25~50kg
<リビアヤマネコ>
全長約45~80cm
体重約3~8kg
<シロ(生後3ヶ月の仔猫)>
全長約20cm
体重約1kg
ぼくだってグレイさんが愛猫家じゃなかったら、絶対に友達になれなかった。
普通のトマークトゥスは、近付いたら間違いなく喰われるし。
グレイさんだけが、特別なんだよね。
理解してくれなくても良い。
ただぼくとグレイさんが友達だってことを、お父さんとお母さんに知って欲しい。
「あそこにいるのが、ぼくのお父さんとお母さんなんだけどミャ……。ふたりとも怖がっちゃってミャ」
『いや、大丈夫だ。猫に怯えられるのは、いつものことだから慣れている』
「グレイさんに紹介したかったのに、ごめんなさいミャ」
『謝らないでくれ、シロちゃん。オレは、可愛い猫を遠くから眺められるだけでいいんだ』
そう言って、グレイさんは悲しそうに笑った。
グレイさんは、愛猫家なのに、猫に近付くことも出来ない。
せめて、ぼくだけでもたくさん仲良くなりたい。
ぼくは、出来るだけ明るく笑い掛ける。
「あっ、そうミャ! グレイさんに、お土産を持ってきたミャッ!」
『オレは、シロちゃんが会いに来てくれるだけでも嬉しいのに。シロちゃんがくれるものなら、なんでも喜んで受け取るぞ』
ぼくは背負っていた骨と角を降ろして、グレイさんの前に差し出す。
「はい、シンテトケラスの骨と角ミャ。お肉もたっぷり付いているところを、選んできたミャ」
『おおっ、ありがとう! これは美味しそうな骨と角だっ! オレは、骨を齧るのが大好きなんだっ!』
グレイさんは大喜びで、骨をガジガジと噛み始めた。
グレイさんが喜んでくれて、ぼくも嬉しい。
「毎日そうやって骨をガジガジしていたら、きっと歯も良くなるミャ」
『なに? シロちゃんは、オレの歯も心配してくれていたのか?』
「もちろんミャ。グレイさんにこの骨と角をあげたかったから、お父さんとお母さんに頼んで狩ってきてもらったミャ」
『シロちゃん……っ!』
ぼくがにっこりと笑うと、グレイさんは驚いた顔で骨を落として大粒の涙を流し始めた。
グレイさんが急に泣き出したので、ぼくはギョッとする。
「ど、どうしたミャッ? ガジガジして、歯が痛くなったミャッ?」
『ありがとう、ありがとう……。シロちゃんが友達になってくれただけでも、オレは充分すぎるくらい幸せなのに。歯の心配までしてくれて、本当に嬉しくて仕方がないんだ……』
涙の意味を知ったぼくは、グレイさんが泣き止むまで涙をペロペロ舐め続けた。
「シロちゃん」
「ミャ?」
声を掛けられて振り向くと、お父さんとお母さんがさっきよりも近いところにいた。
まだ10メートルくらい距離はあるけど、大きな進歩だ。
だけどまだかなり怯えているみたいで、「やんのかステップ」をしている。
「やんのかステップ」っていうのは、猫がイカ耳になって背中を丸めて毛を逆立てながら、ステップを踏むことだよ。
「シロちゃんが、そのトマークトゥスとお友達だってことは分かったニャー」
「でも、トマークトゥスは怖いニャ……」
「グレイさんは、他のトマークトゥスとは違うミャ。グレイさんはとっても優しいから、絶対に猫を食べないミャ。だから、グレイさんと会うのを許して欲しいミャ」
ぼくが一生懸命説明していると、ようやく落ち着いたらしいグレイさんがお父さんとお母さんを見て嬉しそうにしっぽを振っている。
『シロちゃんのお父さんとお母さんも、オレとお友達になってくれるのか?』
「お父さんとお母さんと、お友達になるのは難しいかもしれないミャ。だけどぼくとグレイさんが仲良くすることは、許してもらうミャ」
『そうか! それならばオレからも、シロちゃんのお父さんとお母さんにお願いしようっ!』
「グレイさんの言葉は、お父さんとお母さんには分からないミャ。ぼくが代わりに通訳するミャ」
『だったらお父さんとお母さんに、オレの気持ちを伝えてくれ』
「分かったミャ」
『オレは、シロちゃんが大好きだ! 心から愛しているっ! 猫の中で、一番愛している! オレには、シロちゃんが必要なんだっ! オレはもう、シロちゃんがいないと寂しくて死んでしまう! 絶対に大切にするから、シロちゃんをオレにくれっ! いや、下さいっ!』
「ミャッ?」
いやいやいやいやいや、待って待って待って待ってっ!
それもう、お友達じゃない!
完全に、両親に結婚の許しをもらいに来た婚約者のセリフだよっ!
グレイさんは、ぼくと番になりたいのっ?
ぼくはグレイさんとお友達になりたいだけで、それ以上の関係は求めてないんだけどっ!
そもそも種類が違う動物は、番にはなれない。
そんなこと言われたって、こんなことお父さんとお母さんに伝えられないよ……。
推しを語るオタクみたいに早口で言われたから、ほとんど覚えられなかったし。
「えっと、グレイさんの気持ちは分かったミャ……」
ん? いや待てよ?
グレイさんは愛猫家だから、単純に「猫が好き」ってことだよね。
ぼくだって猫が大好きだ、愛している。
それにグレイさんにとってぼくは、初めて出来た猫の友達。
初めての友達だから、距離感がちょっとおかしいだけなんだ。
てっきり、ぼくと番になりたいってことかと思っちゃったよ。
めちゃくちゃ悩んだ末に、「グレイさんはぼくと仲良くなりたいんだって」とだけ伝えておいた。
グレイさんのぼくに対する愛が重いことは、お父さんとお母さんに伝えられなかった。
ぼくの話を聞いたお父さんとお母さんは、深々とため息を吐いた。
「分かったニャー。シロちゃんがそんなに言うなら、グレイさんとお友達になっても良いニャー」
「ただし、シロちゃんひとりで、集落から出るのは危ないからダメニャ」
「私たちと一緒に会うなら、良いニャー」
「本当ミャ? ありがとうミャ!」
両親同伴だけど、これからもグレイさんと会えることになった。
グレイさんにもそのことを伝えると、ちぎれんばかりにブンブンとしっぽを振り出す。
『本当かっ? これからもずっと、シロちゃんと一緒にいられるんだなっ?』
「ぼくも、これからもグレイさんとお友達でいられて嬉しいミャ」
『だったら、シロちゃんの集落へ行きたいっ!』
「えっ? イチモツの集落に来るのミャッ?」
『ダメなのかっ?』
「それはさすがに、ムリだと思うミャ」
『集落に入りたいなんて、贅沢は言わない! 集落の近くに、いさせてもらえるだけで良いんだっ! そうすればシロちゃんといつでも会えるし、オレも可愛い猫たちをずっと眺めていられるじゃないかっ!』
「う~ん、困ったミャ~……」
「触れなくてもいいから、可愛い猫をずっと眺めていたい」という気持ちは、ぼくにも良く分かる。
だけどグレイさんが集落の近くにいるだけで、猫たちは怯えて眠れなくなっちゃうんだよね。
両方の気持ちが分かるからこそ、グレイさんの望みを叶えられないと分かってしまう。
ぼくはやっぱり猫だから、グレイさんよりも集落の猫たちを大切にしたい。
ヘタに期待だけさせて、グレイさんをガッカリさせたくない。
だからぼくは、グレイさんに正直に打ち明けることにした。
「悪いけど、グレイさんは集落に来ちゃダメミャ」
『オレが、トマークトゥスだからか?』
「そうミャ」
『そうだよな……、すまなかった。さっきの話は、どうか忘れてくれ』
グレイさんの顔から笑みが消え、頭と耳としっぽがしょぼんと垂れる。
グレイさんは沈んだ顔で、ぽつぽつと喋り出す。
『オレも、分かっていたんだ。初めて猫とお話しが出来てシロちゃんとお友達になれたから、つい浮かれて調子に乗ってしまった……』
「期待に応えられなくて、ごめんなさいミャ……」
ぼくが謝ると、グレイさんは悲しげに微笑む。
グレイさんはぼくを抱き寄せて、ペロペロと顔を舐める。
『いや、良いんだ。オレは、シロちゃんがお友達になってくれただけで充分だから』
「ぼくも、トマークトゥスのお友達はグレイさんだけミャ」
『シロちゃん、オレとお友達になってくれてありがとう』
「こちらこそ、ありがとうミャ」
『オレはここにいるから、いつでも会いに来てくれ。いつまでも、待っているから』
「うん、また来るミャ」
ぼくとグレイさんは笑い合い、会う約束をしてその場で別れた。
グレイさんは寂しそうな顔で、立ち去るぼくたちをいつまでも見つめていた。
――――――――――――――――――――
【トマークトゥスとリビアヤマネコの体格差】
<トマークトゥス>
推定全長約100~160cm
体重約25~50kg
<リビアヤマネコ>
全長約45~80cm
体重約3~8kg
<シロ(生後3ヶ月の仔猫)>
全長約20cm
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