ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

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第69話 おにごっこ

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 広い草原を走るのは、とても気持ちが良い。
 同じ走るでも、森の中を走るのとは全然違う。
 森は木がいっぱい生えているから、木や枝をけないとケガをしてしまう。
 草原には柔らかい草花くさばなしか生えていないから、思いきり走り回れる。

 ぼくの横を走るグレイさんも、元気いっぱいでめちゃくちゃ楽しそうだ。
 グレイさんは「森から出るのが初めてだ」と言っていたから、草原を走るのも初めてのはず。
 初めてのドッグラン(犬が自由に走り回ったり、遊んだり出来る施設しせつ)で、はしゃぎまくる犬みたいだ。

『ここは走りやすくて、とっても楽しいなっ!』
「どっちが先に湖にけるか、かけっこしようミャ」
『それなら、狩りごっこしよう。シロちゃんが逃げて、オレが追いかけるんだ。オレに捕まらずに湖までたどり着けたら、シロちゃんの勝ち。先にオレに捕まったら、オレの勝ち。どうだ?』

 それって、おにごっこのことだよね。
 おにごっこはルールが分かりやすいし、道具もいらない。
 子供も大人も、楽しめる遊びだよね。
 ネコもオオカミも狩りをする動物だから、おにごっこは大好き。

「分かったミャ、逃げるから捕まえてミャ」
『このオレから、逃げ切れると思うなよ?』
「それじゃっ、よ~いドンミャ!」

 ぼくが走り出すと、グレイさんが追いかけてくる。
 時々振り返って、声をかける。

「捕まえられるものなら、捕まえてみろ~ミャ!」
『ふふふっ、可愛いな。絶対に捕まえてやる!』

 遊びだけど、負けるのはくやしい。
 グレイさんが距離をめてきたら、方向転換急カーブして、スピードを上げる。
 素早すばやい動きで逃げ回るぼくに、グレイさんが文句を言う。

『シロちゃん、そんなにちょこまか逃げるのは、ズルいぞっ!』
「ズルくないミャ! これも作戦ミャッ!」
『ならばこっちも、本気を出させてもらうぞっ!』

 言うが早いかグレイさんのスピードが上がり、あっという間に追い付かれる。

「ミャッ?」
『捕まえた! オレの勝ちだっ!』

 グレイさんの右前足で地面に押さえつけられ、首根くびねっこをくわえられた。
 そのまま持ち上げられて、水辺みずべまで運ばれた。
 こうなったら仕方がない、大人しく負けを認めよう。

「ぼくの負けミャ~。あとちょっとで、逃げ切れたのにミャ~……」
『残念だったな。仔猫こねこが、トマークトゥスに勝てる訳がないだろ』
「ミャ~……、グレイさんこそズルいミャ」
『すまんすまん。逃げるシロちゃんが可愛いすぎて、つい本気を出してしまった』

 そんなことを話しながら、ふたりが寝転ねころがってじゃれ合っていると。
 お父さんとお母さんが慌てた様子で、息を切らせて駆け寄って来る。

「シロちゃん、大丈夫ニャー?」
「急に狩りごっこを始めるから、ビックリしたニャ」

 あ、そっか。
 お父さんとお母さんは、グレイさんが猫を食べないと知っているけど。
 一見いっけんすると、トマークトゥスに襲われているように見えるよね。
 それで、あせって追いかけてきたらしい。
 お父さんとお母さんに「勘違かんちがいさせちゃってごめんね」と、謝った。

 🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾

Presbyornisプレスビオルニス(フラミンゴみたいに足が長いカモ)を狩って食べた後、4匹で食後のお昼寝をした。
 たっぷり眠って、元気いっぱい。
 寝起きの伸びをして、毛づくろいしながら考える。

 さて、これからどうしようか?
 ドクダミの群生地ぐんせいちけていたら、森を出てしまった。
 このまま草原を歩きながら、猫の縄張なわばりを探してみるか。
 それとも森へ戻って、猫の集落しゅうらくを探すか。

 今回の旅の目的は、イチモツの森にある猫の集落を回って薬草を教えること。
 だけど、久し振りに外へ出たから、冒険してみたいって気持ちもあるんだよね。
 ここはぼくひとりで決めずに、みんなにも相談してみよう。

「お父さん、お母さん、どこか行きたいところはあるミャ?」
「シロちゃんの行きたいところがあるなら、どこでも行くニャー」
「シロちゃんは、次はどこへ行きたいニャ?」

 お父さんとお母さんはそう言って、ニコニコと優しく笑った。
 ふたりはいつも、ぼくが行きたいところならどこでも良いって言うんだよね。
 これじゃあ、ひとりで決めるのと変わらない。

 でも今回は、グレイさんがいる。
 グレイさんは自分をしっかり持っているから、きっと違う答えが出るはず。

「グレイさんは、どこか行きたいところはあるミャ?」
『シロちゃんの行きたいところが、オレの行くべき場所だ。愛し合うオレたちは、永遠に離れられない運命なのだからな。いつまでも、どこまでも一緒だ』

 グレイさんはニッコリと笑って、ぼくに体をすり寄せた。
 お前もかい。

 相談したのに、誰も自分の意見を持っていなかった。
 今までも誰ひとり文句も言わずに、ぼくが行きたいところへついて来てくれた。
 これからも、ぼくのワガママに付き合ってくれるらしい。
 ありがたいけど、「どこでも良い」が一番困るんだよね。
 結局、ぼくひとりで決めることになってしまった。

 目の前には、大きな湖と見渡みわたす限りの大草原だいそうげんが広がっている。
 この草原を『走査そうさ』してみたら、森の中にはなかった新しい薬草が見つかるかもしれない。
 この辺りにも、猫の縄張りがあるかもしれない。
 もしかしたら、ぼくよりずっと立派なお医者さんに会えるかもしれない。

 山を越えて、南の大陸のはしっこまで行ったら海へ辿たどり着いた。
 北の端っこには、何があるんだろう?
 せっかく、森の外へ出たんだから、違う景色を見てみたい。

 森の中はどこへ行っても、あまりわりえしない景色がずっと続くんだよね。
 とりあえず、行けるところまで行ってみよう。
 
「じゃあ、みんな! ぼくに付いて来てミャッ!」

 元気よく声を掛けて走り出すと、3匹もぼくに続いて走り出した。
 大きな湖の水辺に沿って、ぼくたちは駆けていく。

 湖を越えた先には、再び広い草原が広がっていた。
 この辺りで、新しい薬草を探そう。
 森の中と外では、生えている植物の種類が全然違う。
 少しずつ速度をゆるめて、立ち止まる。

「ここらへんで、ちょっとひと休みしようミャ」

 草原には、たくさんのねこじゃらしがゆらゆらと揺れていた。
 ねこじゃらしは、あったかいお日様の下をこのむ。
 ねこじゃらしの本当の名前は、「狗尾草エノコログサ
 エノコログサはイネ科の植物だから、猫草ねこくさとして食べられる。

 猫が食べられるのは、柔らかい葉っぱの部分。
 ねこじゃらしとして使うの部分はチクチクしてて、そのまま食べると胃が傷付く可能性があるから食べちゃダメ。
 ちなみに、あわ原種げんしゅ(食用や観賞用に改良される前の野生植物)なんだよ。
 でもその辺にえているねこじゃらしは、ばっちぃから食べちゃダメだよ。

 振り返れば、お父さんとお母さんはねこじゃらしに夢中になっていた。
 ねこじゃらしにじゃれる猫は、可愛い。
 ねこじゃらしを見ると、なんだかソワソワするんだよね。
 じゃれつきたくなっちゃうのは、猫の本能ほんのうなのかもね。
 ぼくも我慢出来がまんできなくなって、ねこじゃらしに飛びつく。
 ふわふわゆらゆらするねこじゃらしに、夢中になってじゃれる。

 ふとグレイさんを見れば、せの姿勢しせいでニコニコしながらぼくたちをながめている。

『ふふふっ、やっぱり猫は可愛すぎて困ってしまうな』
「そうミャ、猫は可愛すぎて困るミャ」

 愛猫家あいびょうかなら、この気持ちは分かるよね。
 猫って、なんでこんなに可愛いんだろう。
 やっぱり、猫を作ったのは猫の神様なのかな?
 だとしたら、猫の神様に心から感謝したい。
「可愛い」の最高傑作さいこうけっさくを作って下さって、ありがとうございますっ!

 猫の可愛さをみ締めていた時だった。
 いつものように自動的に、『走査そうさ』が発動した。

警告けいこく:アルゲンタヴィス接近中せっきんちゅう

「ミャ?」
 警告?
走査そうさ』が、そんなこと言ってくるのは初めてだった。
 あと、アルゲンタヴィスってなに?

 そう思った直後、目に見えない速さで大きな影が落ちてきた。

 何かに体をつかまれて、物凄ものすごい速さでギュンッと持ち上げられる。
 気が付いた時には、空を飛んでいた。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Argentavisアルゲンタヴィスとは?】
 今から約900~680万年くらい前に生息せいそくしていたと考えられている、たか祖先そせん
 史上最重量しじょうさいじゅうりょう飛翔鳥類ひしょうちょうるい(空を飛ぶ鳥)。
 空高くから急降下きゅうこうかして、着地ちゃくちすることなく獲物えものを連れ去っていたと考えられている。
 両方の翼を広げた時の長さは、約5~6.5m
 推定すいてい体長(くちばしからしっぽまで)、約3.5m
 推定体重、約70kg
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