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第107話 原虫性肺炎
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それじゃ、『走査』
ぼくが今まで訪れたことのない集落まで、案内してくれる?
もし、近くに病気やケガで苦しんでいるネコがいたら優先でお願い。
『対象:食肉目ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』
『病名:原虫性肺炎』
『概要:寄生性原生生物Toxoplasmaが、肺に寄生することによって発症する。肺水腫も併発』
『処置:抗菌薬、抗真菌薬、駆虫薬、抗生物質、サルファ剤、利尿薬の投与』
『位置情報:直進700m、右折20m、直進60m』
また、知らない病気が出てきたぞ。
でも、薬は分かる。
抗菌薬は、ヨモギ。
駆虫薬は、ニガヨモギ。
抗生物質と抗真菌薬は、ムラサキバレンギク。
利尿作用がある薬草は、結構たくさんあるんだよね。
ドクダミ、アサガオ、ローズヒップ、ナズナ、ノアザミ、オオバコ、ムラサキツメクサ、サルナシ、タンポポなどなど。
この中から、すぐ手に入りそうな薬草を使おう。
あと、サルファ剤ってのは?
『合成抗菌剤、化学療法薬の総称。生物由来ではない為、抗生物質とは呼ばれない』
つまり、抗生物質ってことか。
さっそく、ヨモギとニガヨモギとナズナとムラサキバレンギクを集めよう。
ヨモギとニガヨモギは、春に柔らかい若葉が出てくる。
ナズナは春の七草のひとつで、春に花が咲く。
ムラサキバレンギクの花は秋に咲くけど、葉っぱや茎もハーブティーに出来る。
薬草を集め始めたぼくを見て、お父さんとお母さんが話し掛けてくる。
「シロちゃんが薬草を集めているってことは、また病気の猫がいるのかニャー?」
「お薬を作るなら、私たちもお手伝いするニャ」
「ありがとう、助かるミャ。じゃあお父さんとお母さんは、ヨモギの柔らかい葉っぱを集めて欲しいミャ」
「それなら、お安い御用ニャー」
「どのくらい集めれば良いニャ?」
「そうだミャ~……」
教えて、『走査』
原虫性肺炎の猫は、何匹いるの?
『1匹』
「とりあえず、1回分あれば良いミャ」
「分かったニャー」
ヨモギ以外の薬草は、ぼくが集めよう。
しばらくすると、ヨモギを両腕いっぱいに抱えたお父さんとお母さんが声を掛けてくる。
「シロちゃん、ヨモギを集めたニャ」
「ありがとうミャ」
ヨモギは万能薬だから、たくさんあっても困らない。
ぼくは背負ってきた籠に、集めた薬草を入れた。
この籠は長い蔓を編んだもので、キノコ博士のアグチ先生からもらった。
ぼくも見よう見まねで何回も挑戦しているんだけど、綺麗な籠はまだ編めない。
アグチ先生は、おばあちゃんのだった。
今も、元気で暮らしているだろうか。
おっと、思い出に浸っている場合じゃなかった。
病気で苦しんでいる猫がいるんだ、早く助けてあげないと。
必要な薬草を集め終わると、グレイさんにお願いする。
「グレイさん、病気の猫がいるところへ連れて行ってくれるミャ?」
『ああ。シロちゃんのお願いなら、どこへだって連れて行くぞ』
グレイさんはニッコリ笑うと、ぼくの首根っこを咥えて運んでくれる。
急ぐ時は、こうしてグレイさんに運んでもらった方が早い。
『走査』の案内に従って、グレイさんに走ってもらった。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
『目的地周辺に到着』
いつもありがとう、『走査』
「グレイさん、ここミャ」
グレイさんに下ろしてもらうと、近くに苦しそうに浅い呼吸をくり返しているサバシロネコが横たわっていた。
「大丈夫ですミャ?」
サバシロは目を開けると、何も言わずにじっとぼくを見つめてくる。
猫がじっと見つめてくる時は、何か訴えたいことがあるサイン。
サバシロのしっぽも、ぼくのしっぽにからまってくる。
どうやらサバシロは、ぼくに助けを求めているようだ。
きっと苦しくて、喋ることも出来ないんだろう。
「今すぐ、お薬を作りますミャ」
『お薬を飲ませるんだったら、オレが水を汲んでこようか?』
「お願いミャ」
ぼくは葉っぱでお皿を作って、グレイさんに渡した。
グレイさんが水を汲みに行ってくれている間に、石のかまどを作って火を起こす。
お父さんとお母さんは、薬草を叩いて薬を作ってくれた。
やっぱり、3匹がいてくれるととても助かる。
ぼくひとりだと、出来ることは限られているから。
お父さんとお母さんも、このまま旅について来てくれたらいいのに。
「お薬が出来ましたので、お口を開けてくださいミャ」
ぼくがそう言うと、サバシロは素直に口を開けてくれた。
ニガヨモギのペーストを葉っぱで作ったスプーンに乗せて、舌に触らないように喉の奥へ入れる。
ニガヨモギは名前通り、とっても苦いからね。
次に、ヨモギとナズナとムラサキバレンギクのブレンドハーブティーを飲ませる。
今回は、生の葉をそのまま使ったフレッシュハーブティー。
ハーブティーは乾燥させた草花を使うタイプと、生のまま使うタイプがある。
淹れ方はどちらも同じで、ハーブと熱湯を入れて数分蒸らせばできあがり。
お好みで、ミント系の葉っぱを浮かべるとスッキリとした味わいになるよ。
お父さんとお母さんとグレイさんも飲みたがったので、3匹にも淹れた。
「このハーブティーも、美味しいニャー」
「前に飲んだハーブティーとは、全然違う味がするニャ」
「シロちゃんの作るものはなんでも、オレへの愛が感じられて美味しいなっ!」
3匹とも、喜んで飲んでくれて良かった。
サバシロには葉っぱのスプーンで、口元まで運ぶ。
「これは、元気になるお茶ですミャ。頑張って、飲んでくださいミャ」
サバシロはチロチロと舌を出して、飲んでくれた。
ハーブティーを飲むと、苦しそうなサバシロの表情がちょっとだけやわらいだ。
苦しそうに口呼吸をしていたから、喉が渇いていたのかもしれないね。
元気な猫は、基本的に鼻呼吸をしている。
猫が口を開けてハァハァと、口呼吸していたら病気のサイン。
口呼吸していたら、早めに病院へ連れて行ってね。
苦しそうに口呼吸するサバシロが可哀想で、背中をさする。
そういえば、原虫性肺炎って感染するの?
『ほぼ全ての哺乳類・鳥類は、トキソプラズマに感染する可能性あり』
マジか……。
ぼくたちもみんな、ニガヨモギを飲まないといけないな。
🐾ฅ^・ω・^ฅ🐾
みんなにもひと通り薬は飲ませたけど、これからどうしよう。
肺炎って、すぐ治る病気じゃないよね?
治るまでにどのくらいかかるの? 『走査《そうさ》』
『症状が軽い場合は、1週間程度。重症の場合は、1ヶ月以上掛かる』
そんなに掛かるのか。
どんなケガも病気も、基本的な治療法はゆっくりと寝ること。
脱水症状ならないように、こまめな水分補給も大事。
とりあえず、この猫の集落《しゅうらく》へ移動させたい。
弱っている猫が1匹でいたら、天敵《てんてき》に食べられちゃう。
「あなたの集落まで、運びますミャ。集落まで案内は、出来ますミャ?」
サバシロは、ぼくをじっと見つめたまま何も答えない。
サバシロのしっぽは相変わらず、ぼくのしっぽにからまっている。
喋れないのか、それとも喋りたくないのか。
病気で喉が嗄れていて、声が出せないのか。
なんにしても、喋《しゃべ》ってくれないと集落の場所が分からない。
どうしたものか……。
そうだ! 『走査』にサバシロの集落を案内してもらえばいいんだっ!
サバシロの集落まで案内して、『走査』
『位置情報:左折30m、直進40m』
良かった、サバシロの集落はここからそんなに離れていない。
サバシロもかなり弱っているから、遠くまでは行けなかったんだろう。
これなら、すぐに集落まで送り届けてあげられそうだ。
それにしてもサバシロは、こんなに具合が悪いのになんで集落から出てきたのかな?
こんなに弱った状態で集落から出たら、天敵に食べられちゃうのに。
そういえば、「猫は自分の死期を悟ると姿を消す」という。
死を悟った猫は、「静かな場所で死にたい」と思うらしい。
そして人目の付かない場所に隠れて、ひっそりと亡くなっていることが多い。
サバシロはたぶん、原虫性肺炎に罹って死期を悟ったんだ。
もしかすると、静かな場所へ移動する途中で力尽きたのかも。
『走査』が見つけてくれなかったら、サバシロは死んでいた。
死んじゃう前に、見つけられて良かった。
ぼくが今まで訪れたことのない集落まで、案内してくれる?
もし、近くに病気やケガで苦しんでいるネコがいたら優先でお願い。
『対象:食肉目ネコ科ネコ属リビアヤマネコ』
『病名:原虫性肺炎』
『概要:寄生性原生生物Toxoplasmaが、肺に寄生することによって発症する。肺水腫も併発』
『処置:抗菌薬、抗真菌薬、駆虫薬、抗生物質、サルファ剤、利尿薬の投与』
『位置情報:直進700m、右折20m、直進60m』
また、知らない病気が出てきたぞ。
でも、薬は分かる。
抗菌薬は、ヨモギ。
駆虫薬は、ニガヨモギ。
抗生物質と抗真菌薬は、ムラサキバレンギク。
利尿作用がある薬草は、結構たくさんあるんだよね。
ドクダミ、アサガオ、ローズヒップ、ナズナ、ノアザミ、オオバコ、ムラサキツメクサ、サルナシ、タンポポなどなど。
この中から、すぐ手に入りそうな薬草を使おう。
あと、サルファ剤ってのは?
『合成抗菌剤、化学療法薬の総称。生物由来ではない為、抗生物質とは呼ばれない』
つまり、抗生物質ってことか。
さっそく、ヨモギとニガヨモギとナズナとムラサキバレンギクを集めよう。
ヨモギとニガヨモギは、春に柔らかい若葉が出てくる。
ナズナは春の七草のひとつで、春に花が咲く。
ムラサキバレンギクの花は秋に咲くけど、葉っぱや茎もハーブティーに出来る。
薬草を集め始めたぼくを見て、お父さんとお母さんが話し掛けてくる。
「シロちゃんが薬草を集めているってことは、また病気の猫がいるのかニャー?」
「お薬を作るなら、私たちもお手伝いするニャ」
「ありがとう、助かるミャ。じゃあお父さんとお母さんは、ヨモギの柔らかい葉っぱを集めて欲しいミャ」
「それなら、お安い御用ニャー」
「どのくらい集めれば良いニャ?」
「そうだミャ~……」
教えて、『走査』
原虫性肺炎の猫は、何匹いるの?
『1匹』
「とりあえず、1回分あれば良いミャ」
「分かったニャー」
ヨモギ以外の薬草は、ぼくが集めよう。
しばらくすると、ヨモギを両腕いっぱいに抱えたお父さんとお母さんが声を掛けてくる。
「シロちゃん、ヨモギを集めたニャ」
「ありがとうミャ」
ヨモギは万能薬だから、たくさんあっても困らない。
ぼくは背負ってきた籠に、集めた薬草を入れた。
この籠は長い蔓を編んだもので、キノコ博士のアグチ先生からもらった。
ぼくも見よう見まねで何回も挑戦しているんだけど、綺麗な籠はまだ編めない。
アグチ先生は、おばあちゃんのだった。
今も、元気で暮らしているだろうか。
おっと、思い出に浸っている場合じゃなかった。
病気で苦しんでいる猫がいるんだ、早く助けてあげないと。
必要な薬草を集め終わると、グレイさんにお願いする。
「グレイさん、病気の猫がいるところへ連れて行ってくれるミャ?」
『ああ。シロちゃんのお願いなら、どこへだって連れて行くぞ』
グレイさんはニッコリ笑うと、ぼくの首根っこを咥えて運んでくれる。
急ぐ時は、こうしてグレイさんに運んでもらった方が早い。
『走査』の案内に従って、グレイさんに走ってもらった。
🐾ฅ^•ω•^ฅ🐾
『目的地周辺に到着』
いつもありがとう、『走査』
「グレイさん、ここミャ」
グレイさんに下ろしてもらうと、近くに苦しそうに浅い呼吸をくり返しているサバシロネコが横たわっていた。
「大丈夫ですミャ?」
サバシロは目を開けると、何も言わずにじっとぼくを見つめてくる。
猫がじっと見つめてくる時は、何か訴えたいことがあるサイン。
サバシロのしっぽも、ぼくのしっぽにからまってくる。
どうやらサバシロは、ぼくに助けを求めているようだ。
きっと苦しくて、喋ることも出来ないんだろう。
「今すぐ、お薬を作りますミャ」
『お薬を飲ませるんだったら、オレが水を汲んでこようか?』
「お願いミャ」
ぼくは葉っぱでお皿を作って、グレイさんに渡した。
グレイさんが水を汲みに行ってくれている間に、石のかまどを作って火を起こす。
お父さんとお母さんは、薬草を叩いて薬を作ってくれた。
やっぱり、3匹がいてくれるととても助かる。
ぼくひとりだと、出来ることは限られているから。
お父さんとお母さんも、このまま旅について来てくれたらいいのに。
「お薬が出来ましたので、お口を開けてくださいミャ」
ぼくがそう言うと、サバシロは素直に口を開けてくれた。
ニガヨモギのペーストを葉っぱで作ったスプーンに乗せて、舌に触らないように喉の奥へ入れる。
ニガヨモギは名前通り、とっても苦いからね。
次に、ヨモギとナズナとムラサキバレンギクのブレンドハーブティーを飲ませる。
今回は、生の葉をそのまま使ったフレッシュハーブティー。
ハーブティーは乾燥させた草花を使うタイプと、生のまま使うタイプがある。
淹れ方はどちらも同じで、ハーブと熱湯を入れて数分蒸らせばできあがり。
お好みで、ミント系の葉っぱを浮かべるとスッキリとした味わいになるよ。
お父さんとお母さんとグレイさんも飲みたがったので、3匹にも淹れた。
「このハーブティーも、美味しいニャー」
「前に飲んだハーブティーとは、全然違う味がするニャ」
「シロちゃんの作るものはなんでも、オレへの愛が感じられて美味しいなっ!」
3匹とも、喜んで飲んでくれて良かった。
サバシロには葉っぱのスプーンで、口元まで運ぶ。
「これは、元気になるお茶ですミャ。頑張って、飲んでくださいミャ」
サバシロはチロチロと舌を出して、飲んでくれた。
ハーブティーを飲むと、苦しそうなサバシロの表情がちょっとだけやわらいだ。
苦しそうに口呼吸をしていたから、喉が渇いていたのかもしれないね。
元気な猫は、基本的に鼻呼吸をしている。
猫が口を開けてハァハァと、口呼吸していたら病気のサイン。
口呼吸していたら、早めに病院へ連れて行ってね。
苦しそうに口呼吸するサバシロが可哀想で、背中をさする。
そういえば、原虫性肺炎って感染するの?
『ほぼ全ての哺乳類・鳥類は、トキソプラズマに感染する可能性あり』
マジか……。
ぼくたちもみんな、ニガヨモギを飲まないといけないな。
🐾ฅ^・ω・^ฅ🐾
みんなにもひと通り薬は飲ませたけど、これからどうしよう。
肺炎って、すぐ治る病気じゃないよね?
治るまでにどのくらいかかるの? 『走査《そうさ》』
『症状が軽い場合は、1週間程度。重症の場合は、1ヶ月以上掛かる』
そんなに掛かるのか。
どんなケガも病気も、基本的な治療法はゆっくりと寝ること。
脱水症状ならないように、こまめな水分補給も大事。
とりあえず、この猫の集落《しゅうらく》へ移動させたい。
弱っている猫が1匹でいたら、天敵《てんてき》に食べられちゃう。
「あなたの集落まで、運びますミャ。集落まで案内は、出来ますミャ?」
サバシロは、ぼくをじっと見つめたまま何も答えない。
サバシロのしっぽは相変わらず、ぼくのしっぽにからまっている。
喋れないのか、それとも喋りたくないのか。
病気で喉が嗄れていて、声が出せないのか。
なんにしても、喋《しゃべ》ってくれないと集落の場所が分からない。
どうしたものか……。
そうだ! 『走査』にサバシロの集落を案内してもらえばいいんだっ!
サバシロの集落まで案内して、『走査』
『位置情報:左折30m、直進40m』
良かった、サバシロの集落はここからそんなに離れていない。
サバシロもかなり弱っているから、遠くまでは行けなかったんだろう。
これなら、すぐに集落まで送り届けてあげられそうだ。
それにしてもサバシロは、こんなに具合が悪いのになんで集落から出てきたのかな?
こんなに弱った状態で集落から出たら、天敵に食べられちゃうのに。
そういえば、「猫は自分の死期を悟ると姿を消す」という。
死を悟った猫は、「静かな場所で死にたい」と思うらしい。
そして人目の付かない場所に隠れて、ひっそりと亡くなっていることが多い。
サバシロはたぶん、原虫性肺炎に罹って死期を悟ったんだ。
もしかすると、静かな場所へ移動する途中で力尽きたのかも。
『走査』が見つけてくれなかったら、サバシロは死んでいた。
死んじゃう前に、見つけられて良かった。
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