ねこねここねこなお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話

橋元 宏平

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第108話 猫が吐く理由

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「サバシロさんの病気は、ぼくが治しますミャ。すぐに、集落しゅうらくへ送り届けますミャ」

 優しく笑いかけると、サバシロは安心したように少しだけ笑ってくれた。
 ぼくはグレイさんに視線を移して、話し掛ける。

「グレイさんは、ここで待っててミャ」
『ああ、もちろん。シロちゃんがいる集落は、オレが守るから安心してくれ』
「――……っ!」

 そこで初めて、サバシロはグレイさんに気付いたようだ。
 サバシロは全身の毛を逆立てて大きく跳び上がったと思ったら、倒れてぐったりとしてしまった。

「サバシロさん! 大丈夫ですミャッ?」

『病名:呼吸器疾患こきゅうきしっかんともう、一過性意識障害いっかせいいしきしょうがい

『処置:一過性いっかせいの為、必要なし』

 それって、どういう病気?

『ビックリしたショックで、気絶きぜつ

 そりゃそうだよね……、なんか悪いことしちゃったな。
 天敵てんてきのトマークトゥスが近くにいたら、普通の猫はめちゃくちゃビックリするよね。
 トマークトゥスのグレイさんと一緒に旅をしている、ぼくたちがおかしいんだ。
 いつものくせで、グレイさんに普通に話し掛けてしまった。

 サバシロの呼吸を確認すると、苦しそうだけどちゃんと息はしていた。
 胸に手を当ててみると、鼓動こどうが早い。
 よっぽど、ビックリしたらしい。
 呼吸しやすいように胸やのど圧迫あっぱくしない姿勢しせいにして、しばらく様子を見よう。
 むやみに動かすと、容態ようたいが悪化してしまうかもしれない。

 きっと今頃、集落の猫たちもサバシロがいなくなって心配しているはずだ。
 サバシロの容態が落ち着いたら、お父さんとお母さんにお願いして集落まで運んでもらおう。
 サバシロの鼓動が落ち着いたところで、集落へと運んだ。
 数匹の猫たちが日向ぼっこしていたので、声を掛ける。

「あの、すみませんミャ。初めまして、こんにちはミャ」
「初めましてナ~、初めて見る仔猫こねこちゃんナ~。どこから迷い込んだ子ナ~?」
「ぼくは、お父さんとお母さんと一緒に旅をしている猫ですミャ。こちらの猫が、すぐそこで倒れていたのでお届けに参りましたミャ。ここの猫で、間違いありませんミャ?」
「あ! サバシロさんナ~ッ! 急にいなくなっちゃったから、心配していたナ~! 助けてくれて、ありがとうナ~っ!」

 集落の猫たちは、驚いてサバシロを囲んだ。
 やっぱりサバシロは、この集落の猫だったようだ。
 サバシロは相変わらず、苦しそうな息をしながらぐったりとしている。
 サバシロを見て、猫たちはオロオロするばかりだ。 
       
「さ、サバシロさん、とっても苦しそうナ~……。大丈夫かナ~……」
「サバシロさんは、病気なんですミャ。ですが、安心してくださいミャ。ぼくはこう見えても、お医者さんですミャッ」
「仔猫ちゃんがナ~? 本当かナ~?」

 集落の猫たちは、うたがいの目でぼくを見ている。
 誰にも信じてもらえないのは、いつものことだかられている。
 猫たちは首をかしげながら、話を続ける。

「もし本当にお医者さんだったら、うちの猫たちもて欲しいナ~」
「ほかにも、病気の猫がいるんですミャ?」
「最近、みんなよく吐くナ~」

 猫はよく吐く動物なので、吐くこと自体は珍しいことじゃない。
 猫が吐く理由は、いろいろある。
 単純に食べすぎや早食いで、吐いちゃうこともあるし。
 毛づくろいした時に、たくさんみ込んじゃった毛を吐くこともある。

 普通は、呑み込んだ毛は便と一緒に出るんだけど。
 特に換毛期《かんもうき》は抜ける量が多いから、毛玉を吐いちゃうんだ。
 食べ過ぎや早食い、毛玉を吐くなどの場合は心配しなくて大丈夫。

 問題なのは、病気で吐く場合だ。
 腐ったものや毒物を食べて、食中毒を起こした場合。
 胃や腸の病気など内臓系の病気で、具合が悪くなった場合。
 何度もくり返し吐いたり、吐いたものに血が混じっていた場合は要注意。
「具合が悪そうだな」と感じたら、すぐに病院へ連れて行こう。

 🐾ฅ^・ω・^ฅ🐾 

 さっそく、猫たちの健康診断をおこなうことにした。 
 ほとんどの猫は、換毛期の毛づくろいが原因の毛球症もうきゅうしょうだった。

 一部は、「猫瓜実条虫症ねこうりざねじょうちゅうしょう」にかかっていた。
 瓜実条虫は、いわゆる真田虫サナダムシのこと。
 サナダムシは、腸内に寄生する寄生虫きせいちゅう総称そうしょう(仲間)。

 春になってあったかくなってくると、ノミも活発かっぱつに動き始める。
 猫には、ネコノミという種類のノミが寄生する。
 毛づくろいすると、毛と一緒にネコノミも呑み込んでしまうんだ。
 呑み込んだネコノミの中に瓜実条虫の幼虫ようちゅうがいた場合、小腸に寄生されてしまう。

 瓜実条虫に寄生されると、栄養を取られてせちゃったり、おなかをこわしちゃったりする。
 猫瓜実条虫症の治療には、駆虫薬くちゅうやくを飲ませる。
 駆虫薬は、いつも通りニガヨモギでいいか。

 毛球症になると、吐いたり、便秘になったり、おなかがパンパンにふくらんだり、エサを食べなくなっちゃったりする。
 吐き出せないくらい、おなかの中にめ込んだ毛玉が大きくなっちゃった場合は手術が必要となる。

 そうなる前に、毛球症予防をしよう。
 毛球症予防には、毛玉ケアキャットフードや毛玉軽減おやつを食べさせるのが一般的。
 毛玉ケアキャットフードには、食物繊維しょくもつせんい油脂あぶら配合はいごうされている。
 吞み込んじゃった毛を、便と一緒に出やすくしてあげるんだ。

 毛玉ケアキャットフードに入っている食物繊維といえば、サイリウム。
 サイリウムの原材料は、オオバコ。
 オオバコの種子しゅしからを粉にしたものが、サイリウムパウダー。
 オオバコは、日本ならどこにでも生えている雑草。
 ちょうど春頃に、柔らかい若葉が生えてくる。

 オオバコの若葉を、猫草として食べる猫もいるよ。
 ただし、食物繊維たっぷりだから食べすぎないように注意。
 犬猫の便秘対策やダイエットフードにも、有効な植物なんだ。    

 オオバコは、ハーブティーにもなる。
 毛球症予防には水分もたっぷりった方が良いから、ハーブティーを飲ませても良いかもね。
 この集落の猫たちにも、ハーブティーの作り方を教えよう。

 猫草といえば、ねこじゃらしの葉っぱもこのんで食べる。
 猫が猫草を食べる理由は、毛球症を予防するためと言われている。
 猫草を食べて、おなかにたまった毛玉を吐くんだよ。 

 このあたりにもねこじゃらしはたくさん生えているから、この集落の猫たちも食べているはずなんだ。
 ねこじゃらしを見れば、思った通り猫にかじられた跡がたくさんあった。
 あんまりよく吐くようだと、胃液で逆流性食道炎ぎゃくりゅうせいいえんになる。
 逆流性食道炎になると、胸やけを起こしたり喉が痛くなったりする。

 毛球症予防には、こまめなブラッシングが有効。
 特に冬毛から夏毛に生え替わる春の換毛期は、毛量が多い。
 ブラッシングすれば呑み込む毛量を減らせるし、ノミも駆虫出来るしブラッシングすると気持ちがいい。 
 まさに、いいことくし。

 猫の毛づくろいを止めることは出来ないけど、呑み込む毛の量を減らすことは出来る。
 イチモツの集落でも、換毛期にノミブラシを作ったら好評だったよ。

 さっそく、この集落の猫たちにもノミブラシの作り方を教えることにした。
 松の葉をたばねて作ったノミブラシは、一度使えば良さが分かる。
 猫たちはブラッシングすると、みんなうっとりと気持ちよさそうな顔をする。
 このうっとりとした顔が、可愛いんだ。 

「これは気持ちがいいナ~」
「ふにゃっ? いっぱい抜けたふにゃっ!」

 猫たちは、自分の体から抜けた大量の毛にビックリしている。
 換毛期は、本当にビックリするくらい毛が抜ける。
 もともと猫の毛は抜けやすく、通常時でも1日平均5000~1万本は抜けると言われている。
 換毛期になると、数万本に達することもあるんだとか。
 こんなにたくさん抜け毛を呑み込んだら、毛球症にもなるよね。
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