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花冷え 後編
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マンションに帰って来ると、倫を抱き上げて寝室に連れていき、ベッドにもつれこんだ。
「ちょっと!」
亮の抗議の声が後ろから聞こえてきたが、無視をして倫の上に乗り、額や鼻先、頬に口づけを落とす。泣き黒子には舌を這わせてねっとりと舐める。
次第に目が快感に潤み、頬を上気させて薄く開いた唇から舌先を覗かせていたが、羞恥心は捨てきれていないようで、顔を手で隠そうとしている。
「だめだ」
キスで宥めながら倫の手を首に回すようにすると、しがみつくように体を密着させてきた。下半身が緩く勃ちあがっているのを確認し、大河もそこに己の勃起したものを押しつける。擦りつけるように腰を揺らしながら唇を貪ると、倫は切なげに眉を寄せて強く抱きしめてきた。
ふと目の前に影が差す。唇を離して顔をあげると、上着を脱いで上半身裸になった将之が身を屈め、優しく倫の頭を撫でた。こういうときぐらい譲ればいいものを、参加する気満々の将之は、独り占めはするなと言わんばかりに、先ほどまで大河が口づけていた倫の唇を奪う。
亮は勝手に倫を連れ去られて、怒っていたようだったが、結局部屋に来た。ベッドに腰をかけて、いつものように傍観者に徹している。倫と一緒にいる時間が長い亮は、いつでも触れられると思っているのか、こういうとき積極的に参加しない。あまり家にいない大河にとって、こうして倫と抱き合う時間は貴重なのでありがたいが、口元は笑っていながら冷めた目をしている亮の表情は、愛情や嫉妬、欲望とは違うものがあるような気がして、正直気味が悪かった。見るなとも言えず、いつも無視を決めこんで倫に集中するようにしている。
「んあっ……」
倫が甘い声をあげた。
見せつけるように、くちゅくちゅと唾液の音を立ててキスをしている将之に、多少いらっとしながらも、倫のパーカーを脱がせてシャツのボタンを外していく。誰かの口づけの跡が、日に焼けていない白い肌に花びらのように散っている。
薄い胸の中心にピンク色した小さな突起を摘まんで吸うと、倫は恥ずかしそうに身を捩った。同性同士も結婚ができるので、性別にかかわらずオープンにセックスする人も多いが、同性では食指がまるで動かず女性しか経験がない大河にとって、倫ははじめての男だった。
はじめて会ったとき強く感じた欲望は気のせいではなく、平らな胸見ても、自分と同じものがついている下半身に触れても、嫌悪感どころか、酷く興奮させられた。今ではこの桜の蕾のような慎み深い胸は大好物だ。
甘噛みすれば、どことなく甘い匂いが漂ってくる。
苛めるようにたっぷりと噛んだり舐めたりしながら、下着ごとパンツを脱がせ、尻の間を指で探ると、倫は声を押し殺して体を強張らせた。はじめは驚くほど狭かったそこも、今までは感じると汗ばんだようにしっとりと濡れてくる。オメガの特性だろうが、発情期でなくても受け入れやすいようになっているようだった。
ぷっくりと赤く尖った乳首に満足して、倫の足を開かせると、中心はすっかり勃ちあがり、先端から蜜をこぼしていた。倫の陰茎は子供のように小ぶりだ。陰嚢も小さくて、おそらくオメガは孕むことに特化していて、誰かを孕ませることはできないのではないかと思う。
ゆっくりと指を体内へ入れて、解すように広げていった。
息を呑んだ倫は、顔を真っ赤にさせて、胸の前で腕を交差させ、声が漏れないように唇を噛む。
「倫」
将之が優しい声で、名を呼び、頬を撫でる。
気持ちいときは声を出してもいいのだと、欲しいときは強請ってもいいと教えても、真面目な倫は羞恥を捨てきれない。それが愛おしくも歯がゆいのだが、いつか体を強張らせることがなくなり、素直に身を任せてもらえるよう、ひたすら愛を囁いて信頼してもらうまでだ。
「中に舌入れて舐め回してもいい?」
試しに訊くと、倫は振りきれんばかりに首を横に振る。
指はもう三本まで難なく飲み込むようになっていて、引き抜くと出て行くのを惜しむかのように内側が蠢いた。
限界が近い大河は素早く全裸になると、倫の足の間に体を進めていく。
先端を押し当てるだけで穴が閉じたり開いたりして、吸いつくように体内に引き入れようとしている。亀頭を潜りこませると、後はもう奈落の底に落ちるように、最奥へと突き進んでいく。
「あっ……」
倫が嬌声をあげて背を反らした。細い腰を掴み、やや体を浮かせた倫を引きつけて、ゆっくりと根元まで入れて留まる。あまりの気持ちよさに射精感が瞬く間にこみ上げてきた。締めつけてうねるように律動する倫の中は、今まで感じたことのないほど深い悦楽をもたらす。射精感に堪えながら腰を引くと、絡みつくように襞がまとわりついてきた。堪らずにすぐさま突き入れると、倫は胸を喘がせて、恍惚とした表情の中に苦しさを滲ませてシーツを強く握りしめる。
おもむろに将之がスラックスの前を寛げて、勃起したものを取り出し、倫の口に寄せた。
倫はじっと目の前に差し出されたものを見ていたが、ややして口を開けてしゃぶるように将之のものを舐めはじめた。
「上の口も下の口も美味しそうに咥えてるね」
そこにきて、じっと見ていただけの亮が倫の陰茎をぴんと弾く。倫はびくっと体を震わせて体内の大河を締めつける。
「可愛いおちんちんも美味しそう」
そう言って亮は身を屈め、軽く倫のものを二、三度扱くと、おもむろに口に含んだ。
「あっ……あっ……だめっ……」
倫は口の周りを涎まみれにしながら将之のものを口から出して喘いだ。
食いつくように倫の体内が脈動し、腰が溶けてしまうような心地よさに頭が痺れる。堪らなく気持ちいい。それは倫も同じようで、亮が陰茎だけでなく陰嚢までもすっぽり口に含んで吸いつくと、腰がびくびくと引き攣り、切なげな声をあげた。
三人で一人を抱く、倒錯的な光景。扇情的な姿ではあったが、どことなく初々しさが残るのは、まだ快楽に溺れきれない頑なな心と、どれだけ乱れてもふしだらに見えない清楚な雰囲気があるからだろう。背徳感に堕ちてしまえばいいのに、染まってしまえばいいのに、倫は最後の最後まで良心を手放さない。
乳首を弄びながら物欲しそうな唇に突き立てている将之が、少しずつ動きを速めてきた。
大河も閉じようとする倫の足を大きく開き、片足を掲げて激しく腰を動かした。
「ん……んっ……」
小さな口で大きなものを必死で頬張る倫の目が潤んで、閉じた拍子に涙が零れ落ちる。それを優しい手つきで将之が親指で拭う。
「倫、いきそう?」
飴玉のように倫の陰茎をしゃぶりながら、亮が訊く。
倫は聞こえているのかいないのか、将之のものを咥えた口をごもごと動かして何かを喋ったが、聞き取れない。
一番奥まで穿つと、先端がこつんこつんと襞とは違う何かに当たる。子宮の入り口だ。そこを突くと、倫は身もだえるようによがった。
「いくぞ、倫」
宣言すると、倫は涙目になった視線をこちらに向けて、縋るように見た。
深く突いて子宮の入り口を押し当てて動きを止めると、中に注ぎ込むように射精する。
「ふあっ……」
小さな悲鳴をあげて、倫の体が激しく痙攣して、体内をさらに締めつけてきた。食らいつくような締めつけに、深い息をつくと、ぶるっと腰を震わせて何度も迸らせる。そのたびに、倫の体が悦んでいるようにいるように、びくんびくんと反応する。
将之は荒い息をついて倫の口から抜くと、自身を扱いてそのまま顔めがけて、白濁を勢いよく散らした。
何度も何度も大量の精液が顔にかかり、呆けたような顔をした倫の口の中にもたっぷりと入っていく。達してもなお、未だいきり立っているものを頬に擦りつけた将之は、満足げに愛おしげに、倫の髪を撫でた。
亮は倫のものを咥えたまま、頭を上下させて搾り取るように口を窄めて、ごくりと飲み干した。
「倫のミルク美味しいね」
亮が口から陰茎を抜くと、倫同様にぐったりと萎えて、先端から僅かな体液がとろりと零れる。亮が体から退いたので、再び倫の腰を掴み、二度三度強く根元まで差しこんで精液を出し切る。
貪欲に飲みこむ倫のそこは達してもなお、大河のものを咥えこんで離さなかったが、惜しむように、腰をゆっくりと引いて抜いた。今まで入っていたそこは赤くぷっくりと腫れていて、まだ咥え足りないようにひくついては、白濁を垂れ流している。
尻から太腿にかけて労わるように撫でて、膝を持ち上げ、至る所にキスを落とす。
最後に足の甲にも、傅くように唇を押し当てた。
忙しない呼吸を繰り返していた倫が、法悦に浸っているかのように開いた口から精液を垂れ流したままぼんやりとしている。
「疲れたか?」
将之が訊くと、倫は緩く首を横に振る。そのまま起き上がろうとしていたが、体に力が入らないようで、再びベッドに沈みこんだ。その体にシーツを巻きつけて将之が抱き上げた。
「顔にかけて悪かった。綺麗にしよう」
シーツで顔を拭きながら部屋を出て行った将之は、バスルームへ向かったようだ。
このままついて行くか、留まるか悩んだのは一瞬、すぐに後を追う。亮はのんびり欠伸をしながらついてきた。
穏やかな表情ですやすやと眠る倫の様子を見て、ほっと安堵する。いつ、どんなときでも倫はセックスを拒まない。最初のときですら三人から求められて怖かっただろうに、震えながらも体を開いた。そんな姿が頭にあるから、いつも無理をさせているのではないかと思ってしまう。たまに一人ずつ相手をさせればいいとも考えたりするのだが、そうなるとマンションにいない大河は圧倒的に不利で、しかも抱きたいときに抱けないストレスは私生活にも仕事にも影響が出る。
「オメガが飛び降り自殺したって知ってる?」
亮が濡れた髪を拭きながら、椅子に座って急にそんな話を振ってきた。
「それはいつの話だ?」
倫の寝顔から顔をあげて訊くと、亮は「夜のニュースで流れてたよ」と携帯電話で情報を探し出して「ほら」と翳して見せた。
見れば、十三歳になるオメガの少年が自宅マンションの窓から飛び降り自殺したらしい。妊娠もしていたようで、その子もろとも死亡したと載っていた。
未成年なので名前は載っていないが、まさかと大河は考える。
「倫は知っているのか?」
亮は曖昧に首を傾げる。
「どうだろう? あんまりテレビ見ないからなあ。知らないかもしれない」
「ならいい」
ほっと胸を撫で下ろしたが、いつ知るかもしれないと思うと気が気ではない。倫がまた傷つく。あとでもう少し詳しく調べてみるが、こういう予感は大概当たる。
この世に妊娠している十三歳ぐらいのオメガを大河は一人しか知らないが、世の中そうそうオメガはいない。
「もしかして、これって前に言ってた倫と会ったっていうオメガの子?」
倫に起こったことは二人に包み隠さず全部話してある。どんな小さな出来事でも三人で情報を共有して危機管理をしていた。
「その可能性もある」
「名前は?」
「苗字は知らない。名前は聡って呼ばれてた」
亮は携帯電話を弄りながら部屋を出て行く。ただのひきこもりのぼんくらに見えるが、亮は数多の大企業から仕事を依頼されているフリーの天才プログラマーだ。ハッキングも得意と言っているように、昔は相当悪いこともしてきたようで、どんな情報でも膨大なネットの中から探しだす。
ほどなくして、ノートパソコンを持って部屋に戻ってきた。
「この子?」
画面には、見知った顔の写真が映し出されていた。
名前は観月聡。享年十三歳。K区の二十階建てマンションの窓から、飛び降り自殺。即死だったらしい。
「ああ」
ずっと無言だった将之が、横から画面を覗き見る。
「倫には知られたくない」
大河が呟くと亮は「そうだね。最近寝つきも悪かったようだから、気にしてたようだし」と寝返りを打った倫の顔をそっと撫でる。
「……オメガの待遇は今も昔も変わらない」
将之が言った言葉に、亮が頷いた。
「政府公認の人身売買だもんね。恋も知らない子供が、悪い大人に孕まされるためだけに買われていくんだから、幸せになれるはずがないよ」
辛辣に言い放った亮は、倫を見ながらうっとりと笑う。
「心を病むオメガも多いって言うし……倫は俺たちに買われてよかった」
「そうだといいんだが……」
将之がらしくもなく言い淀むと、亮は笑顔を引っこめて真顔になる。
「自信がないなら、この関係を降りなよ、将之」
いつになく強気の口調で言う亮は、表情がなく、たいして興味なさそうに大河を一瞥する。
「降りても誰も困らない。倫だって困らないよなあ?」
亮はそう言って寝ている倫の唇をつんつんとつついて「ちゅーしたら起きるかな?」などと子供のように悪戯している。
倫が三人に買われて幸せか……それを推し量る術はないが、施設にいた頃よりずっと明るくなったし、家事を率先してくれている姿は生き生きしているようでもあった。遠慮している部分は多いが、それでも毎日楽しそうだ。
「自信がないんじゃない。俺たちと倫の思いは違うから言ってるんだ」
将之は三人誰もが感じている痛い部分を突く。
大河は倫を愛している。その思いは他の二人も同じはず。ただ、倫は三人に対して好意のようなものはあるかもしれないが、恋愛感情はない……はずだ。買われたから、番になってしまったからここにいる。セックスを拒めないのも、嫌われたらどこにも行けないから、従順に体を開くのだ。
大河は倫の安らかな寝顔を見て、聡の泣きそうになって言った『施設にいた頃のほうがまだましだった』という言葉を思い出した。そんなことを倫の口から言わせたくない。
逃がしてやれないなら、倫を大切にして可愛がって、ひたすら愛してやるだけだ。何も考えられなくなるまで、どろどろに甘やかして蕩けさせて快楽に溺れさせて……好きになってくれなくてもいいから、側にいたいと楽しいと思っていて欲しい。
もはや、大河には倫がいない生活が考えられなかった。
「ちょっと!」
亮の抗議の声が後ろから聞こえてきたが、無視をして倫の上に乗り、額や鼻先、頬に口づけを落とす。泣き黒子には舌を這わせてねっとりと舐める。
次第に目が快感に潤み、頬を上気させて薄く開いた唇から舌先を覗かせていたが、羞恥心は捨てきれていないようで、顔を手で隠そうとしている。
「だめだ」
キスで宥めながら倫の手を首に回すようにすると、しがみつくように体を密着させてきた。下半身が緩く勃ちあがっているのを確認し、大河もそこに己の勃起したものを押しつける。擦りつけるように腰を揺らしながら唇を貪ると、倫は切なげに眉を寄せて強く抱きしめてきた。
ふと目の前に影が差す。唇を離して顔をあげると、上着を脱いで上半身裸になった将之が身を屈め、優しく倫の頭を撫でた。こういうときぐらい譲ればいいものを、参加する気満々の将之は、独り占めはするなと言わんばかりに、先ほどまで大河が口づけていた倫の唇を奪う。
亮は勝手に倫を連れ去られて、怒っていたようだったが、結局部屋に来た。ベッドに腰をかけて、いつものように傍観者に徹している。倫と一緒にいる時間が長い亮は、いつでも触れられると思っているのか、こういうとき積極的に参加しない。あまり家にいない大河にとって、こうして倫と抱き合う時間は貴重なのでありがたいが、口元は笑っていながら冷めた目をしている亮の表情は、愛情や嫉妬、欲望とは違うものがあるような気がして、正直気味が悪かった。見るなとも言えず、いつも無視を決めこんで倫に集中するようにしている。
「んあっ……」
倫が甘い声をあげた。
見せつけるように、くちゅくちゅと唾液の音を立ててキスをしている将之に、多少いらっとしながらも、倫のパーカーを脱がせてシャツのボタンを外していく。誰かの口づけの跡が、日に焼けていない白い肌に花びらのように散っている。
薄い胸の中心にピンク色した小さな突起を摘まんで吸うと、倫は恥ずかしそうに身を捩った。同性同士も結婚ができるので、性別にかかわらずオープンにセックスする人も多いが、同性では食指がまるで動かず女性しか経験がない大河にとって、倫ははじめての男だった。
はじめて会ったとき強く感じた欲望は気のせいではなく、平らな胸見ても、自分と同じものがついている下半身に触れても、嫌悪感どころか、酷く興奮させられた。今ではこの桜の蕾のような慎み深い胸は大好物だ。
甘噛みすれば、どことなく甘い匂いが漂ってくる。
苛めるようにたっぷりと噛んだり舐めたりしながら、下着ごとパンツを脱がせ、尻の間を指で探ると、倫は声を押し殺して体を強張らせた。はじめは驚くほど狭かったそこも、今までは感じると汗ばんだようにしっとりと濡れてくる。オメガの特性だろうが、発情期でなくても受け入れやすいようになっているようだった。
ぷっくりと赤く尖った乳首に満足して、倫の足を開かせると、中心はすっかり勃ちあがり、先端から蜜をこぼしていた。倫の陰茎は子供のように小ぶりだ。陰嚢も小さくて、おそらくオメガは孕むことに特化していて、誰かを孕ませることはできないのではないかと思う。
ゆっくりと指を体内へ入れて、解すように広げていった。
息を呑んだ倫は、顔を真っ赤にさせて、胸の前で腕を交差させ、声が漏れないように唇を噛む。
「倫」
将之が優しい声で、名を呼び、頬を撫でる。
気持ちいときは声を出してもいいのだと、欲しいときは強請ってもいいと教えても、真面目な倫は羞恥を捨てきれない。それが愛おしくも歯がゆいのだが、いつか体を強張らせることがなくなり、素直に身を任せてもらえるよう、ひたすら愛を囁いて信頼してもらうまでだ。
「中に舌入れて舐め回してもいい?」
試しに訊くと、倫は振りきれんばかりに首を横に振る。
指はもう三本まで難なく飲み込むようになっていて、引き抜くと出て行くのを惜しむかのように内側が蠢いた。
限界が近い大河は素早く全裸になると、倫の足の間に体を進めていく。
先端を押し当てるだけで穴が閉じたり開いたりして、吸いつくように体内に引き入れようとしている。亀頭を潜りこませると、後はもう奈落の底に落ちるように、最奥へと突き進んでいく。
「あっ……」
倫が嬌声をあげて背を反らした。細い腰を掴み、やや体を浮かせた倫を引きつけて、ゆっくりと根元まで入れて留まる。あまりの気持ちよさに射精感が瞬く間にこみ上げてきた。締めつけてうねるように律動する倫の中は、今まで感じたことのないほど深い悦楽をもたらす。射精感に堪えながら腰を引くと、絡みつくように襞がまとわりついてきた。堪らずにすぐさま突き入れると、倫は胸を喘がせて、恍惚とした表情の中に苦しさを滲ませてシーツを強く握りしめる。
おもむろに将之がスラックスの前を寛げて、勃起したものを取り出し、倫の口に寄せた。
倫はじっと目の前に差し出されたものを見ていたが、ややして口を開けてしゃぶるように将之のものを舐めはじめた。
「上の口も下の口も美味しそうに咥えてるね」
そこにきて、じっと見ていただけの亮が倫の陰茎をぴんと弾く。倫はびくっと体を震わせて体内の大河を締めつける。
「可愛いおちんちんも美味しそう」
そう言って亮は身を屈め、軽く倫のものを二、三度扱くと、おもむろに口に含んだ。
「あっ……あっ……だめっ……」
倫は口の周りを涎まみれにしながら将之のものを口から出して喘いだ。
食いつくように倫の体内が脈動し、腰が溶けてしまうような心地よさに頭が痺れる。堪らなく気持ちいい。それは倫も同じようで、亮が陰茎だけでなく陰嚢までもすっぽり口に含んで吸いつくと、腰がびくびくと引き攣り、切なげな声をあげた。
三人で一人を抱く、倒錯的な光景。扇情的な姿ではあったが、どことなく初々しさが残るのは、まだ快楽に溺れきれない頑なな心と、どれだけ乱れてもふしだらに見えない清楚な雰囲気があるからだろう。背徳感に堕ちてしまえばいいのに、染まってしまえばいいのに、倫は最後の最後まで良心を手放さない。
乳首を弄びながら物欲しそうな唇に突き立てている将之が、少しずつ動きを速めてきた。
大河も閉じようとする倫の足を大きく開き、片足を掲げて激しく腰を動かした。
「ん……んっ……」
小さな口で大きなものを必死で頬張る倫の目が潤んで、閉じた拍子に涙が零れ落ちる。それを優しい手つきで将之が親指で拭う。
「倫、いきそう?」
飴玉のように倫の陰茎をしゃぶりながら、亮が訊く。
倫は聞こえているのかいないのか、将之のものを咥えた口をごもごと動かして何かを喋ったが、聞き取れない。
一番奥まで穿つと、先端がこつんこつんと襞とは違う何かに当たる。子宮の入り口だ。そこを突くと、倫は身もだえるようによがった。
「いくぞ、倫」
宣言すると、倫は涙目になった視線をこちらに向けて、縋るように見た。
深く突いて子宮の入り口を押し当てて動きを止めると、中に注ぎ込むように射精する。
「ふあっ……」
小さな悲鳴をあげて、倫の体が激しく痙攣して、体内をさらに締めつけてきた。食らいつくような締めつけに、深い息をつくと、ぶるっと腰を震わせて何度も迸らせる。そのたびに、倫の体が悦んでいるようにいるように、びくんびくんと反応する。
将之は荒い息をついて倫の口から抜くと、自身を扱いてそのまま顔めがけて、白濁を勢いよく散らした。
何度も何度も大量の精液が顔にかかり、呆けたような顔をした倫の口の中にもたっぷりと入っていく。達してもなお、未だいきり立っているものを頬に擦りつけた将之は、満足げに愛おしげに、倫の髪を撫でた。
亮は倫のものを咥えたまま、頭を上下させて搾り取るように口を窄めて、ごくりと飲み干した。
「倫のミルク美味しいね」
亮が口から陰茎を抜くと、倫同様にぐったりと萎えて、先端から僅かな体液がとろりと零れる。亮が体から退いたので、再び倫の腰を掴み、二度三度強く根元まで差しこんで精液を出し切る。
貪欲に飲みこむ倫のそこは達してもなお、大河のものを咥えこんで離さなかったが、惜しむように、腰をゆっくりと引いて抜いた。今まで入っていたそこは赤くぷっくりと腫れていて、まだ咥え足りないようにひくついては、白濁を垂れ流している。
尻から太腿にかけて労わるように撫でて、膝を持ち上げ、至る所にキスを落とす。
最後に足の甲にも、傅くように唇を押し当てた。
忙しない呼吸を繰り返していた倫が、法悦に浸っているかのように開いた口から精液を垂れ流したままぼんやりとしている。
「疲れたか?」
将之が訊くと、倫は緩く首を横に振る。そのまま起き上がろうとしていたが、体に力が入らないようで、再びベッドに沈みこんだ。その体にシーツを巻きつけて将之が抱き上げた。
「顔にかけて悪かった。綺麗にしよう」
シーツで顔を拭きながら部屋を出て行った将之は、バスルームへ向かったようだ。
このままついて行くか、留まるか悩んだのは一瞬、すぐに後を追う。亮はのんびり欠伸をしながらついてきた。
穏やかな表情ですやすやと眠る倫の様子を見て、ほっと安堵する。いつ、どんなときでも倫はセックスを拒まない。最初のときですら三人から求められて怖かっただろうに、震えながらも体を開いた。そんな姿が頭にあるから、いつも無理をさせているのではないかと思ってしまう。たまに一人ずつ相手をさせればいいとも考えたりするのだが、そうなるとマンションにいない大河は圧倒的に不利で、しかも抱きたいときに抱けないストレスは私生活にも仕事にも影響が出る。
「オメガが飛び降り自殺したって知ってる?」
亮が濡れた髪を拭きながら、椅子に座って急にそんな話を振ってきた。
「それはいつの話だ?」
倫の寝顔から顔をあげて訊くと、亮は「夜のニュースで流れてたよ」と携帯電話で情報を探し出して「ほら」と翳して見せた。
見れば、十三歳になるオメガの少年が自宅マンションの窓から飛び降り自殺したらしい。妊娠もしていたようで、その子もろとも死亡したと載っていた。
未成年なので名前は載っていないが、まさかと大河は考える。
「倫は知っているのか?」
亮は曖昧に首を傾げる。
「どうだろう? あんまりテレビ見ないからなあ。知らないかもしれない」
「ならいい」
ほっと胸を撫で下ろしたが、いつ知るかもしれないと思うと気が気ではない。倫がまた傷つく。あとでもう少し詳しく調べてみるが、こういう予感は大概当たる。
この世に妊娠している十三歳ぐらいのオメガを大河は一人しか知らないが、世の中そうそうオメガはいない。
「もしかして、これって前に言ってた倫と会ったっていうオメガの子?」
倫に起こったことは二人に包み隠さず全部話してある。どんな小さな出来事でも三人で情報を共有して危機管理をしていた。
「その可能性もある」
「名前は?」
「苗字は知らない。名前は聡って呼ばれてた」
亮は携帯電話を弄りながら部屋を出て行く。ただのひきこもりのぼんくらに見えるが、亮は数多の大企業から仕事を依頼されているフリーの天才プログラマーだ。ハッキングも得意と言っているように、昔は相当悪いこともしてきたようで、どんな情報でも膨大なネットの中から探しだす。
ほどなくして、ノートパソコンを持って部屋に戻ってきた。
「この子?」
画面には、見知った顔の写真が映し出されていた。
名前は観月聡。享年十三歳。K区の二十階建てマンションの窓から、飛び降り自殺。即死だったらしい。
「ああ」
ずっと無言だった将之が、横から画面を覗き見る。
「倫には知られたくない」
大河が呟くと亮は「そうだね。最近寝つきも悪かったようだから、気にしてたようだし」と寝返りを打った倫の顔をそっと撫でる。
「……オメガの待遇は今も昔も変わらない」
将之が言った言葉に、亮が頷いた。
「政府公認の人身売買だもんね。恋も知らない子供が、悪い大人に孕まされるためだけに買われていくんだから、幸せになれるはずがないよ」
辛辣に言い放った亮は、倫を見ながらうっとりと笑う。
「心を病むオメガも多いって言うし……倫は俺たちに買われてよかった」
「そうだといいんだが……」
将之がらしくもなく言い淀むと、亮は笑顔を引っこめて真顔になる。
「自信がないなら、この関係を降りなよ、将之」
いつになく強気の口調で言う亮は、表情がなく、たいして興味なさそうに大河を一瞥する。
「降りても誰も困らない。倫だって困らないよなあ?」
亮はそう言って寝ている倫の唇をつんつんとつついて「ちゅーしたら起きるかな?」などと子供のように悪戯している。
倫が三人に買われて幸せか……それを推し量る術はないが、施設にいた頃よりずっと明るくなったし、家事を率先してくれている姿は生き生きしているようでもあった。遠慮している部分は多いが、それでも毎日楽しそうだ。
「自信がないんじゃない。俺たちと倫の思いは違うから言ってるんだ」
将之は三人誰もが感じている痛い部分を突く。
大河は倫を愛している。その思いは他の二人も同じはず。ただ、倫は三人に対して好意のようなものはあるかもしれないが、恋愛感情はない……はずだ。買われたから、番になってしまったからここにいる。セックスを拒めないのも、嫌われたらどこにも行けないから、従順に体を開くのだ。
大河は倫の安らかな寝顔を見て、聡の泣きそうになって言った『施設にいた頃のほうがまだましだった』という言葉を思い出した。そんなことを倫の口から言わせたくない。
逃がしてやれないなら、倫を大切にして可愛がって、ひたすら愛してやるだけだ。何も考えられなくなるまで、どろどろに甘やかして蕩けさせて快楽に溺れさせて……好きになってくれなくてもいいから、側にいたいと楽しいと思っていて欲しい。
もはや、大河には倫がいない生活が考えられなかった。
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