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第二部
白鷹迅①
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仕事中。
机の上の書類を整理しながら、俺はスマホを手に取った。
画面には直樹の今日のスケジュールが表示されている。
「……今日も忙しそうだな。桐島、近づいてないだろうな……」
送信ボタンを押して、夕菜にメッセージを送る。
「俺の直樹が変なことに巻き込まれてないか。桐島がまた近づいてないか確認を頼む」
送信してから、俺はふっとため息をつく。
“こんなに気を使わせるなんて、俺の方が大変だな……”
でも、その瞬間、心の奥の温かさが広がる。
(……いや、でも悪くない。むしろ幸せだ)
直樹はきっと、自分でも気づかないまま、周りをふわっと惹きつける。
無自覚で、あざとくなくて、なのに可愛い。
仕事でミスしそうになっても、一生懸命で、人たらしで。
俺が守らなきゃ、と思う理由は山ほどあって、それを心底楽しんでいる自分がいた。
スマホに返信が来る。
「桐島は距離を置いてるから大丈夫」
俺は軽く頷き、再び机に向かう。
だけど、心のどこかでチクチクと感じる不安も消えない。
(あいつ、無自覚だから……余計なことに巻き込まれたりしないだろうな)
苦労は多い。
でも、直樹が笑うたびに、心はふわっとほどける。
この子のためなら、俺は何だってできる。
いや、できるどころか……やりたい、と思ってしまう自分がいる。
(……ほんと、俺の直樹は手がかかる。でも、最高に可愛い)
そう思いながら、俺はスマホをしまった。
目の前の書類の山に向き合いつつ、頭の中は直樹でいっぱいだった。
寝室のカーテンを少し開け、朝の光が差し込む。
まだ眠そうな顔の直樹が、見える。
今日もちゃんと起きれるのか……?
朝食の準備をしていると、ふらふらとベッドから出てきて、目を半分閉じたままこちらに向かってくる。
「……おはようございます…」
そのまま、ちょこんと唇を差し出す。
「ん、キス……?」
直樹は無邪気に頷く。
(……ほんと、朝から無自覚すぎる)
軽く笑いながら、俺は顔を近づけて唇を合わせる。
温かく、柔らかく、眠気が残る直樹の香りが混ざった甘い感触。
「……お前、反則だろ……」
つい小声で呟くと、直樹は満足げに目を細める。
しかし、仕事の時間は待ってくれない。
「はいはい、朝の挨拶は終わり。さっさと支度しなさい」
思わず母親のような口調になりながら、俺は手を引いて直樹に着替えを促す。
二人で朝食のテーブルに向かう。
直樹の食べる様子をちらちら観察する。
直樹はまだ眠そうで、時々頬杖をつきながら、うとうとしそうになっている。
(……朝からこんなに甘えられると、心臓が持たない)
心の中で思いながらも、俺はにやりと笑う。
「今日も一日、頑張ろうな」
直樹はむくっと顔を上げ、眠そうに笑う。
「はい、迅さん……」
そして二人で一緒に朝ごはんを食べ、俺は作ったお弁当を直樹に渡して、今日も手をつないで出勤する。
直樹の無自覚な甘えっぷりに、俺の心は終始ドキドキしっぱなしだ。
休日の午後、カーテンの隙間から秋の日差しが差し込む。
ソファで資料をまとめていた俺の隣に、直樹がマグカップを二つ持ってやってきた。
「迅さん、コーヒーいれました」
「お、ありがとう」
湯気の上がるマグを受け取ったその瞬間、ふっと何かが香った。
シャンプーとも洗剤とも違う、でもどこか懐かしいような、やさしい匂い。
迅は思わず手を止める。
「……なんか、いい匂いするな」
「え、そうですか? 柔軟剤、変えたんですよ」
直樹はそう言って笑う。けれど、その笑顔がどこかぎこちない。
(柔軟剤、か……?)
俺は目を細めたけど、問い詰めるようなことはしなかった。
ただ、何かが変わっていることだけは、確かに感じていた。
その夜、夕食を済まして、入浴後の直樹の顔は赤くて、体もつらそうにしてる。
昼間、感じたいい匂いも幾分、強くなっている気もする。
「……直樹、そろそろ来るのか?」
直樹は黙って下を向いている。
肩を抱きよせると、直樹は息があがっている。
「……迅さん、ごめんなさい、つらくなってきちゃいました」
直樹は、俺がオメガ嫌いなのを気にしてる。
体は求めているのに、それを我慢していて、自分からは誘ってこれない。
必死に堪えている直樹を見ていると、本当に放っておけない。
仕方ないな……。
直樹を横抱きして、寝室へ連れていく。
静かに俺に身を委ねている直樹をベッドにおろして、口付ける。
「……迅さん、好きです。俺を抱いてください……」
上目使いで、俺を見る直樹は、無自覚に俺を煽っている。
こんなかわいい直樹が嫌いなわけがない。
……俺は、直樹以外の、オメガが嫌いなんだ、と言い訳をする。
机の上の書類を整理しながら、俺はスマホを手に取った。
画面には直樹の今日のスケジュールが表示されている。
「……今日も忙しそうだな。桐島、近づいてないだろうな……」
送信ボタンを押して、夕菜にメッセージを送る。
「俺の直樹が変なことに巻き込まれてないか。桐島がまた近づいてないか確認を頼む」
送信してから、俺はふっとため息をつく。
“こんなに気を使わせるなんて、俺の方が大変だな……”
でも、その瞬間、心の奥の温かさが広がる。
(……いや、でも悪くない。むしろ幸せだ)
直樹はきっと、自分でも気づかないまま、周りをふわっと惹きつける。
無自覚で、あざとくなくて、なのに可愛い。
仕事でミスしそうになっても、一生懸命で、人たらしで。
俺が守らなきゃ、と思う理由は山ほどあって、それを心底楽しんでいる自分がいた。
スマホに返信が来る。
「桐島は距離を置いてるから大丈夫」
俺は軽く頷き、再び机に向かう。
だけど、心のどこかでチクチクと感じる不安も消えない。
(あいつ、無自覚だから……余計なことに巻き込まれたりしないだろうな)
苦労は多い。
でも、直樹が笑うたびに、心はふわっとほどける。
この子のためなら、俺は何だってできる。
いや、できるどころか……やりたい、と思ってしまう自分がいる。
(……ほんと、俺の直樹は手がかかる。でも、最高に可愛い)
そう思いながら、俺はスマホをしまった。
目の前の書類の山に向き合いつつ、頭の中は直樹でいっぱいだった。
寝室のカーテンを少し開け、朝の光が差し込む。
まだ眠そうな顔の直樹が、見える。
今日もちゃんと起きれるのか……?
朝食の準備をしていると、ふらふらとベッドから出てきて、目を半分閉じたままこちらに向かってくる。
「……おはようございます…」
そのまま、ちょこんと唇を差し出す。
「ん、キス……?」
直樹は無邪気に頷く。
(……ほんと、朝から無自覚すぎる)
軽く笑いながら、俺は顔を近づけて唇を合わせる。
温かく、柔らかく、眠気が残る直樹の香りが混ざった甘い感触。
「……お前、反則だろ……」
つい小声で呟くと、直樹は満足げに目を細める。
しかし、仕事の時間は待ってくれない。
「はいはい、朝の挨拶は終わり。さっさと支度しなさい」
思わず母親のような口調になりながら、俺は手を引いて直樹に着替えを促す。
二人で朝食のテーブルに向かう。
直樹の食べる様子をちらちら観察する。
直樹はまだ眠そうで、時々頬杖をつきながら、うとうとしそうになっている。
(……朝からこんなに甘えられると、心臓が持たない)
心の中で思いながらも、俺はにやりと笑う。
「今日も一日、頑張ろうな」
直樹はむくっと顔を上げ、眠そうに笑う。
「はい、迅さん……」
そして二人で一緒に朝ごはんを食べ、俺は作ったお弁当を直樹に渡して、今日も手をつないで出勤する。
直樹の無自覚な甘えっぷりに、俺の心は終始ドキドキしっぱなしだ。
休日の午後、カーテンの隙間から秋の日差しが差し込む。
ソファで資料をまとめていた俺の隣に、直樹がマグカップを二つ持ってやってきた。
「迅さん、コーヒーいれました」
「お、ありがとう」
湯気の上がるマグを受け取ったその瞬間、ふっと何かが香った。
シャンプーとも洗剤とも違う、でもどこか懐かしいような、やさしい匂い。
迅は思わず手を止める。
「……なんか、いい匂いするな」
「え、そうですか? 柔軟剤、変えたんですよ」
直樹はそう言って笑う。けれど、その笑顔がどこかぎこちない。
(柔軟剤、か……?)
俺は目を細めたけど、問い詰めるようなことはしなかった。
ただ、何かが変わっていることだけは、確かに感じていた。
その夜、夕食を済まして、入浴後の直樹の顔は赤くて、体もつらそうにしてる。
昼間、感じたいい匂いも幾分、強くなっている気もする。
「……直樹、そろそろ来るのか?」
直樹は黙って下を向いている。
肩を抱きよせると、直樹は息があがっている。
「……迅さん、ごめんなさい、つらくなってきちゃいました」
直樹は、俺がオメガ嫌いなのを気にしてる。
体は求めているのに、それを我慢していて、自分からは誘ってこれない。
必死に堪えている直樹を見ていると、本当に放っておけない。
仕方ないな……。
直樹を横抱きして、寝室へ連れていく。
静かに俺に身を委ねている直樹をベッドにおろして、口付ける。
「……迅さん、好きです。俺を抱いてください……」
上目使いで、俺を見る直樹は、無自覚に俺を煽っている。
こんなかわいい直樹が嫌いなわけがない。
……俺は、直樹以外の、オメガが嫌いなんだ、と言い訳をする。
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