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2.それじゃないと、寝れない
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薄い金の光が、重厚なカーテンの隙間から差し込んだ。
ゼファールの寝台の上――柔らかな毛布の真ん中で、リュカは小さく身を丸めていた。
胸元に顔を押しつけるように眠っていたリュカが、ぴくりと耳を動かした。
「……起きたか、リュカ」
低くて安心する声。
金眼同士の視線が合うと、リュカはびくっと震えたが、夜中にミルクを飲ませてもらい、そのまま抱かれて眠った記憶が体に残っていた。
ゼファールの匂いがする。
魔獣の匂いがしない。
ここは安全だ――
それが分かると、リュカはふにゃりと小さな体の力を抜いた。
ゼファールはゆっくり背を撫でた。
「昨日はよく眠れたな。今日は…休みにした。
お前が落ち着くまで、側にいよう」
昨日の討伐の後片付けや山のルートの整理とか、魔王の仕事は残っていたが、カリオンは文句を言わなかった。
ゼファールからミルクをもらうと、
「少し、城の中を案内してやる」
リュカを抱いて、ゼファールは部屋の外を歩き出した。
ゼファールの腕の中から降ろされると、リュカはふら、と足元を確かめた。
まだ怯えていてゼファールのローブをくわえてついてくる。
廊下を一歩踏み出すと
「……っ」
リュカの瞳がまん丸になった。
石造りの城壁。巨大なタペストリー。
磨かれた床の光。天井まで届きそうな柱。
全部、森にはなかったものばかりだ。
ゼファールは歩幅をゆっくりにした。
「怖くない。ここは俺の城だ。
お前の敵になるものは一つもいない」
そう言われると、リュカはゼファールの足にすり寄りながらも、興味には負けて、何度も鼻をひくひくさせて周囲を見回していた。
魔族のメイドたちがひそひそ声で、
「魔王さまの腕の中で寝てた子よね」
「小さくて、ふわふわ……かわいい」
と言うたび、リュカはびくっ、と跳ねてゼファールの足の間に隠れる。
ゼファールは軽く笑い、頭をぽんと触れた。
「大丈夫だ、誰もお前を傷つけない」
それから城を一通り歩いて、リュカが一番強く反応したのは、図書室だった。
扉を開けた瞬間――
「…………?」
息を止めたように固まる。
天井まで積まれた本の山。
ずらりと並ぶ文字の本の背表紙。
見たこともない、これは、“知識の匂い”。
森しか知らないリュカには、それは魔法の倉庫のように見えた。
ゼファールが言う。
「ここは知の部屋だ。本で学べる世界は広いぞ」
するとリュカはぽそっと、尻尾を揺らして言う。
「……ぼくも、しりたい。
この“ほん”…よんでみたい」
はじめての“自分からの願い”だった。
ゼファールは少し驚いて、微笑した。
「読めるようになりたいなら、カリオンに頼むといい。
あいつは教えるのがうまい」
リュカの金の瞳がきらっと光った。
城内を見て回って疲れたリュカは、
眠気でふらふらして、ついにゼファールのローブの裾を引っ張る。
「……ねむい……」
ゼファールは苦笑しながら、客間の休憩用ソファに連れて行く。
客人用の毛布を掛けようとすると――
「や、やだ……! それじゃ…ねれない……!」
リュカは必死にゼファールの胸元にしがみついた。
「俺の匂いじゃないと駄目か」
「……うん……」
ゼファールは仕方ないと肩を落としながらも、
どこか嬉しそうに、自分の使っている膝掛けを持って来させた。
持ってきた膝掛けの匂いをくんくん確かめた瞬間、リュカの表情がゆるんで、
あっという間に眠りに落ちた。
ゼファールは頭を撫でながら呟いた。
「……安心したか、リュカ」
その顔は、魔王とは思えないほど優しかった。
ゼファールの寝台の上――柔らかな毛布の真ん中で、リュカは小さく身を丸めていた。
胸元に顔を押しつけるように眠っていたリュカが、ぴくりと耳を動かした。
「……起きたか、リュカ」
低くて安心する声。
金眼同士の視線が合うと、リュカはびくっと震えたが、夜中にミルクを飲ませてもらい、そのまま抱かれて眠った記憶が体に残っていた。
ゼファールの匂いがする。
魔獣の匂いがしない。
ここは安全だ――
それが分かると、リュカはふにゃりと小さな体の力を抜いた。
ゼファールはゆっくり背を撫でた。
「昨日はよく眠れたな。今日は…休みにした。
お前が落ち着くまで、側にいよう」
昨日の討伐の後片付けや山のルートの整理とか、魔王の仕事は残っていたが、カリオンは文句を言わなかった。
ゼファールからミルクをもらうと、
「少し、城の中を案内してやる」
リュカを抱いて、ゼファールは部屋の外を歩き出した。
ゼファールの腕の中から降ろされると、リュカはふら、と足元を確かめた。
まだ怯えていてゼファールのローブをくわえてついてくる。
廊下を一歩踏み出すと
「……っ」
リュカの瞳がまん丸になった。
石造りの城壁。巨大なタペストリー。
磨かれた床の光。天井まで届きそうな柱。
全部、森にはなかったものばかりだ。
ゼファールは歩幅をゆっくりにした。
「怖くない。ここは俺の城だ。
お前の敵になるものは一つもいない」
そう言われると、リュカはゼファールの足にすり寄りながらも、興味には負けて、何度も鼻をひくひくさせて周囲を見回していた。
魔族のメイドたちがひそひそ声で、
「魔王さまの腕の中で寝てた子よね」
「小さくて、ふわふわ……かわいい」
と言うたび、リュカはびくっ、と跳ねてゼファールの足の間に隠れる。
ゼファールは軽く笑い、頭をぽんと触れた。
「大丈夫だ、誰もお前を傷つけない」
それから城を一通り歩いて、リュカが一番強く反応したのは、図書室だった。
扉を開けた瞬間――
「…………?」
息を止めたように固まる。
天井まで積まれた本の山。
ずらりと並ぶ文字の本の背表紙。
見たこともない、これは、“知識の匂い”。
森しか知らないリュカには、それは魔法の倉庫のように見えた。
ゼファールが言う。
「ここは知の部屋だ。本で学べる世界は広いぞ」
するとリュカはぽそっと、尻尾を揺らして言う。
「……ぼくも、しりたい。
この“ほん”…よんでみたい」
はじめての“自分からの願い”だった。
ゼファールは少し驚いて、微笑した。
「読めるようになりたいなら、カリオンに頼むといい。
あいつは教えるのがうまい」
リュカの金の瞳がきらっと光った。
城内を見て回って疲れたリュカは、
眠気でふらふらして、ついにゼファールのローブの裾を引っ張る。
「……ねむい……」
ゼファールは苦笑しながら、客間の休憩用ソファに連れて行く。
客人用の毛布を掛けようとすると――
「や、やだ……! それじゃ…ねれない……!」
リュカは必死にゼファールの胸元にしがみついた。
「俺の匂いじゃないと駄目か」
「……うん……」
ゼファールは仕方ないと肩を落としながらも、
どこか嬉しそうに、自分の使っている膝掛けを持って来させた。
持ってきた膝掛けの匂いをくんくん確かめた瞬間、リュカの表情がゆるんで、
あっという間に眠りに落ちた。
ゼファールは頭を撫でながら呟いた。
「……安心したか、リュカ」
その顔は、魔王とは思えないほど優しかった。
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