魔王さまに抱かれるもふもふツンデレオオカミの僕

蒼井梨音

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40.ゼファの違和感

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晩餐会が終わり、リュカはゼファールと部屋に戻ろうとした。

「兄上、リュカ殿、お疲れさまでした。
……イグナーツ兄上には気をつけてください」
ルーシアが近寄ってきた。
「リュカ殿を見てました。あれは何か、魔術を構築してたのかもしれません」

ルーシアの言葉にゼファールは短く「ああ」と返した。
ゼファールはリュカと部屋へと歩き出した。
――早くリュカを部屋に連れて帰りたかった。

リュカは疲れたのか、喋らずにゼファールの後ろをただついて歩いていた。

部屋の手前に来て、ゼファが呼び止められた。
国王の従者だった。
ゼファールが「国王の遣いだ」とリュカに説明する。
リュカもゼファールも国王ならと少しだけ気を許した。
部屋も目と鼻の先、リュカは「先に部屋に戻る」と言い、部屋の方を向いた。
そして、ゼファールは遣いについていく。


リュカが1人になった瞬間だった。

部屋のドアノブに手をかけたときに、イグナーツに声をかけられた。
満面の笑み。
「そんな怖い顔しないでよ、何もしないよ」
そう言ってイグナーツは手を差しだす。
「僕はゼファールの兄だよ、仲良くしようよ」
イグナーツの手を握った瞬間、リュカにはピリッとした電流みたいのが走った。

リュカはびっくりして、自分の手を見ていると、
「おやすみ」
イグナーツは去っていった。



部屋に戻ってきたゼファールはベッドの上で寝ているリュカを見つけた。
疲れて寝ているのか、リュカは服もそのままだった。それより、ヒト型のままで寝ていた。
リラックスするとオオカミの姿に戻るのに。

ゼファールは、そんなリュカに違和感を感じた。
静かに扉を閉め、足音を殺してベッドに近づいた。
リュカに、優しく触れる。

「……リュカ?」

小さく呼んでも、返事はない。
胸は規則正しく上下している。
深く眠っているようだった。
それでも――。

指先で額に触れる。
体温はいつも通り。額から頬、首筋へ。
ゼファールの防御の術は、確かにリュカに張られている。
自分が施したものだ。乱れも破れもない。

それなのに。

(……何だ、この感じ)

リュカから立ち上る魔力が、ほんのわずか、刺のように尖っている。
普段の柔らかさがない。眠っているのに、張り詰めている。

ゼファールは眉をひそめた。

「疲れただけ……じゃないな」

リュカは緊張が解けると、無意識にオオカミの姿に戻る。
けれど今は、ヒト型のまま。小さな手はシーツをきゅっと掴んでいる。

ゼファールはそっと腰掛け、リュカの手を包んだ。

その瞬間、微かに――
ピリ、とした違和感が、ゼファの指にも走った。

「……誰かに触られたな」

声は低く、怒りを孕んでいた。
王城の廊下。部屋の手前。自分が離れた、ほんのわずかな隙。

ゼファールはリュカを引き寄せ、抱きしめるようにして、防御の術を重ねがけする。
いつもより強く、深く。

「大丈夫だ。もう俺がいる」

眠るリュカは何も答えない。
ただ、胸元で小さく息を吐いた。

ゼファールの視線は、扉の向こう――
王城の奥へと、鋭く向けられていた。


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