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しおりを挟む学園は寮生活になっている。両性具有であり、今は性別がないとされるフィンリーとクインは、その資質からフィンリーが男子寮、クインが女子寮に住んでいた。クインからは一緒に女子寮に住もうと誘われたが、女子寮に住まうことで周囲に舐められたくなかったフィンリーは断った。
性別がないから、女性の身体に興奮することも興味もないと言えばない。それでも見た目や身分から、女生徒に誘われることはそれなりにある。
うーん……これも、大人になって性別が固定されれば、嬉しいと思えるんだろうか。
何せフィンリーの女性の基準が絶世の美少女であるクインだ。どんな女が寄ってこようとさほど感情は動かされない。
「フィンリーくん、これ……読んでください」
なんて震える手で手紙を渡されても、困るといえば困る。それでも当たり障りなく笑顔で受け取ると、兎耳の獣人の女の子は顔を赤らめて去っていく。
そういえば、王族の伴侶はほとんどが獣人だっけ……。でも、生まれてくる子供は王族の特性を受け継いでいるんだよなぁ……。
太古の昔、王族は大精霊と契りを交わした。そのことによる加護だと言われているけれど。実際のところはよくわかっていない。
「モテますねぇ」
のほほん、と頭上から落ちてきた声に、はっと顔を上げると、ちょうど自分が立っている場所はレストの研究室の窓の横だった。
あぁ、そうかここ、研究室の裏手の庭だ。
今更ながら気づいて、フィンリーはもらった手紙をポケットへとしまった。そんなフィンリーを頬杖ついて見下ろしながら、レストが口を開く。
「ちょうどいいところに。今少しお付き合いいただけますか」
あれから、二日に一度ほどの頻度でフィンリーはレストの研究室へ訪れている。魔力コントロールにも体力は大事とかいう怪しい理由で研究室の片づけを命じられたり、何を目的としたものかよくわからない研究の手伝いをさせられていた。
フィンリーが頑張って片づけても数日でまたいつもの散らかった状態に戻ってしまうことに嘆息しながら、研究室に足を踏み入れた。
「いつになったら魔力コントロール、教えてくれるんですか?」
いい加減雑用ばかり、と呆れた視線を送ると、レストはにこにことしまりのない笑みを浮かべて。
「あ~……まぁそうですね。では今日は少しだけレッスンしましょう」
まさか本当にまた雑用を押し付けようとしていたのか。本当に食えない男だ。少し苛つきながら研究室に備えられた二人掛けのソファに座っていると、レストが自分の椅子から立ち上がった。
「上を脱いで、私の前に立ってください」
男子生徒の服は、淡いブルーのシャツに、こげ茶色のベスト。それにひも状の赤いリボンタイが首元についている。自分が男性であるという意識の強いフィンリーは、上半身裸に抵抗感は特にない。素直にリボンタイを緩めるとシャツとベストを脱いで、白い上半身を晒す。
余計な贅肉はついていないが、筋肉とわかるような筋肉はあまり多くない。というか、つかないのだ。どんなに鍛えても。だから未だに身長も体格もクインとそう大差がない。
これも両性具有の特質なのか、とフィンリーは歯噛みする。
「まず、ここ」
そう言いながら、レストの指先がフィンリーの臍の少し下の方にとん、と触れた。
くすぐったさに、少し肩を揺らす。
レストの指先がゆっくりと円を描くように動く。
「基本的に魔力の根源はここにあります」
意識したこともなかった。不思議そうに自分のお腹を見下ろす。
「ここから、全身へ巡らせ、魔力をコントロールする」
「全身……」
つぅ、と触れた指先が上にあがって、心臓の部分で止まる。
「と、いってもそもそもこの魔力を感じることが出来なければ魔力コントロールは出来ません」
「……どうやって感じれば?」
素朴な疑問に、触れていた手を引き戻して顎にあてると、レストは首を傾げた。
「さぁ?」
「……さぁって……レスト先生……」
じとっと胡乱げな目線をくれると、レストは少しだけ困ったような顔をして。
「魔族は生まれた時から己の魔力を感知できますからね。フィンリー様が感じられるかどうかは私にはわかりません」
「魔力とは、どんな感覚がするもの?」
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