強くなりたいと言ったら、元魔王に開発調教されていました~宝石姫と元魔王の恋物語~

花虎

文字の大きさ
22 / 33

9.宴

しおりを挟む




 次に目覚めた時、そこはやわらかな寝台の上だった。

「おぉ!目を覚ましたぞ!」

周りの状況を認識するよりも早く、頭に響いてきた人の声。驚いてそちらを見ると、寝台のまわりに柵があり、それをぐるりと取り囲むように椅子に座った人々がこちらを見下ろしていた。

「ひ……っ」

無数の不躾な視線にさらされて、フィンリーは思わず喉を引きつらせた。値踏みするような視線、舐めるような下品な視線、見下すような高圧的な目線……自分を見る目はどれも、自分を「生命ある個体」ではなく「物」として見ていた。

「ほぅ、さすがに美しい……この世のものとは思えんですな」

先ほど声をあげた男とは別の男が、楽しそうにそう評する。

「我が家にも一体いれば、自慢できますわねぇ」

甲高い女の声も後ろから聞こえてくる。前からも後ろからも下卑た視線を受けるのが気持ち悪くて両手で身体を抱きしめたら、がちゃり、と無機質な金属音が鳴った。視線を足首に向けると、太い鎖の足枷がついていた。
 柵に入れるだけでは飽き足らず、逃亡しないように鎖でつないであるのだ。よく見れば、服装もひと目でわかるほど高級な生地で仕立てられた純白のドレスに着せ替えられている。

「ははは。お戯れを、レディ。この宝石は二つとない代物だからこそ、価値がある」

でっぷりと脂ののった、恰幅のいい男が、赤ワインのグラスをまわしながらそう評した。

「まぁ、申し訳ありません。公爵。素敵なコレクションだったから、つい……」

公爵、と呼ばれた恰幅のいい男は、まんざらでもなさそうにお腹を揺らして笑った。

「さて、ここからがメインのショーですよ、皆様」

言いながら、手に持った赤ワインを高く掲げた。

「奇跡の両性具有の身体を、とくとご覧あれ」

声高に男が言い放つと同時に、部屋の中の観衆がおぉおお、と歓声をあげた。フィンリーの身体が、恐怖にがたがたと震える。何を、言っているのだ、この目の前の人間たちは。

「いやぁ、両性具有が、どんな風に啼くか!見ものですな!」
「ねぇ、目の前で犯すのでしょう?相手はどなた?うんと痛くしてくださらないと面白くないわ」
「後で腕を一本いただけないですかねぇ。研究したくて。もちろんお礼は弾ませていただきます」
「いやいや、それなら私は目玉が欲しいですな。食らえばなんでも長寿が得られるとか……」

興奮した声が、わんわんとフィンリーの頭を揺らす。何を、言っているのだ、こいつらは。正気じゃない。悪意という名の欲望を直にぶつけられて、フィンリーは恐怖で身体が震えるのを止めることが出来ない。
 恐怖で唇が青くなったフィンリーを、満足そうに見下ろして、公爵はにちゃりと笑った。

「タッタリア、やれ」

命令と共に、公爵の後ろの影から、翼のないタッタリアが現れる。

「まぁ!美しい!後で私もお相手願いたいわ」

タッタリアの美貌に、女が喜ぶ。

「啼く声を皆様に聴かせたいから、口は塞ぐなよ」
「御意に。快感と、絶望と、痛みの鳴き声をさえずらせましょう」

慇懃に頭を下げたタッタリアの瞳は、血のような黒くも見える赤色をしていた。ゆっくりと柵の中へ入ってくる。
 フィンリーはぱさぱさと頭を振って、ガチガチなる歯で、嫌だ、とそれだけを繰り返す。
 絶望に叩き落されるとは、こういうことを言うのだろう。本来なら人間など敵ではないはずなのに、捕らえられて籠の中へ繋がれれば何も出来ない。たとえできたとしても、目の前には圧倒的な力の差を見せつける上級魔族がいる。

 これから自分は……抵抗も出来ぬまま、ただ一方的に嬲られるのだ。

フィンリーは自分の身体を抱きしめて溢れる涙を止めることが出来なかった。それすらも、人間たちは嬉しそうに歓喜の声をあげている。

「おぉ、泣いている!涙も美しい!」
「ねぇ、誰か小瓶に詰められないの?美容によさそうだわ」
「あとで私にも舐めさせてくれ」

耳を覆いたくなるような下卑た言葉たちがフィンリーの心をずたずたに引き裂いていく。ぎし、と寝台の端にタッタリアが乗り上げた。
 フィンリーを侮蔑の濃い瞳で睥睨し、歪んだ口を開く。

「ぷちっと潰してあげますね」

わんわんと響くような声に、フィンリーは耐えられなくなった。

「……せ……んせ……」

消え入りそうな声で、カチカチと歯を鳴らしながら、フィンリーは声にならない声を紡いだ。

―――助けて―――……


 一瞬後、
 轟音をたてて、部屋の屋根が壁ごと吹き飛んだ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...