DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

文字の大きさ
10 / 40
闇深き動乱

激闘

しおりを挟む
 乾いた土が広大な領域を満たすコルノス荒野。

 奥部に連なった山並みは天然の壁と例えられ、ロハリネとムンゾの国境を隔てている。

 四月に迎える雨季以外は一滴の雨も降らず晴天が続くのだが、この季節には珍しく、空を雨雲が覆った。

 普段は閑静な荒れ地に騒音が響く。

 ロハリネの防衛部隊とムンゾ皇国の軍勢が衝突しているのだ。
 
 防衛部隊は護法士が三十名と長銃ライフルを持つ兵士が千人。

 対する敵の兵団は凡そ二百体のエレファントゴブリン。
 鉄の胴衣を着け、片手には斧や鉄棒。
 その前方で二千人のよろい歩兵ほへいが槍と盾を構えて進む。

 ゴブリンは雄叫びを上げ、一心不乱に鎧歩兵の背後を追従する。

 魔術師の暗示によってロハリネの兵士達が憎らしい敵だと錯覚していた。
 
 空中には三体の翼竜ドラゴンが舞う。
 巨木のような太い首元にくらが付けられ、ムンゾの兵士が搭乗している。

 戦闘は続き、荒野を守る防衛部隊に侵略者が次々と攻め込む。

 鎧歩兵達が槍の手元にあるスイッチを押した。

 槍は魔術が発射できるように造られており、先端の赤いクリスタルから生じた雷の棘が敵を襲う。

 エレファントゴブリンは駆けながら武器を乱雑に振り回した。
 
 盾で猛攻を防ぐと部隊の兵士は長銃ライフルで応戦する。

 護法士が陣形の最前線に出て、術技を撃つ。
真火球射弾しんかきゅうしゃだん

 無数の炎が獣に直撃し、爆発が起きて数十体を吹き飛ばす。
 岩石や砂が霧のように戦場を覆った・・・。

 護法士は鎧歩兵の群集へ走る。
 槍と剣が入り乱れ、何度もぶつかり合う。

 象の怪物は鉄棒を大きく掲げ、渾身の力で叩き落とす。
 兵士は盾で防御するが後方に遠く弾かれた。

 尚も襲いかかって来る怪物の群れ。

 護法士が剣を突き、刀身から射す閃光が連続で獣を撃ち倒した。

 背後に迫るエレファントゴブリン。

 護法士は地面を蹴って跳ね、魔物の殴打を避けた。

 そして反撃に転じ、ゴブリンのふところで剣を強振する。

「バオオオォォォ!・・・」
 魔物は呻き、握った斧や鉄棒が手から離れ、巨大な肉体がその場に沈んだ。

 防御部隊は臆することなく勇敢に戦う。
 鎧歩兵とエレファントゴブリンの数は次第に減少していった・・・。


「敵部隊の抵抗が激しく、我が軍は劣勢であります」

 荒野の隅で戦況を見つめるムンゾの司令官に歩兵が伝えた。

「厄介な護法士め・・・。奴等がいなければ、容易く荒野を支配できるのだ」

 司令官は胸に付けた小さい笛を掴み、息を吹いて鳴らす。

 空に浮かぶ巨大な三つの影が笛に呼応した。

 咆哮が響き、ロハリネの兵士は上空を見る。

 翼竜ドラゴンが黄色い妖しげな眼で獲物に狙いを定め、急速に降下してきた。

 漆黒の翼を力強く羽ばたかせ、木が倒されるほどの嵐を起こす。
 兵士達は地面まで姿勢を屈めて踏ん張った。

 正面から来た二頭目の翼竜ドラゴン
 鋼鉄と同じほど強固な尾鰭おびれを鞭のようにしならせ、獲物を薙ぎ払う。

 空へ舞い戻ると緑色の球体を吐き出した。

 球体が落ちた地表に焼ける音が生じて溶け始め、異臭と白い煙をくゆらせる。
 それは触れたものを溶かす毒液だった。

 容赦なくしたたる毒の雨。
 兵士達は盾を頭に被せ、少しずつ後退してゆく。

 そこへ三頭目の翼竜ドラゴンが迫る。

 口を開いて鋭い牙を剥き出し、喉の奥から青い火炎を放射した。

 盾で防ぐが動きの止まった隙を狙い、魔物は尾鰭で獲物をしいたげる。

 破壊された防具と盾の残骸が宙に漂う・・・。

 深手を負って倒れた数十人の兵士。
 周辺で青い残り火が燃え、金属の焼けた匂いが広がる。

 三頭の翼竜ドラゴンは無造作に翼を羽ばたかせ、上空へ飛んだ。

 獰猛どうもうな視線を眼下に送り、追撃のタイミングを計る。

 途方もない攻撃性と強靭な外殻の魔物にロハリネの兵士達は狼狽うろたえていた・・・。

「気をつけろ!また襲ってくるぞ!」
 護法士が叫んだ。

『ギャオオオオォ!!・・・』 

「イサリヤ将閤しょうこう。我々ではあの三頭の翼竜ドラゴンを倒せません。
 全身の鱗が鋼のように固く、長銃ライフルではどうしようもありません・・・」
 兵士が伝えた。
 
 護法士のイサリヤはコルノス荒野で戦う防衛部隊を指揮している。
 長い髪を頭の後で束ね、丹念に磨かれた剣を持つ。

「私が先に行く、後方から追て来るんだ!一時いっときたりとも敵の攻撃に怯むな!」

 イサリヤが仲間を鼓舞し、翼竜ドラゴンへ向かって走る。
 間合いを縮めると両手が輝いた。

【 氷柱連破アイシクル 】
 伸ばした手の前で細かい泡に似た無数の物質が涌き、集積して質量を増す。

 先端は鋭く尖り、槍のような氷柱つららに形成された。

 氷が表層で光をあらゆる方向に放ちながら、空の怪物へ直行してゆく。

 強固な鱗を破り、胴体に突き刺さった。

 翼竜は気絶して道筋を彷徨さまよう。
 やがて真下にいる鎧歩兵とエレファントゴブリンの群集に堕ちた。

「護法士総員、荒野の中央に集合!私の号令で術技を発導せよ!」

 イサリヤの指示で翼竜との間に陣形が組まれた。

 護法士達は剣を構えて魔物と対峙する。

神託の光矢ハルバ・ミナリー・・・撃て!」
 幾つもの魔法の矢が飛び、標的に命中した。
 
 硬い皮膚に歪な亀裂が入り、翼竜の首や尾鰭はる。

【 黎明の流星群オーブ・コメット 】
 イサリヤの手から光球が垂直に昇った。目視できぬほど遥か遠い距離まで浮かぶ。

 弾ける音が聞こえ、大気圏の彼方から流星が降り注ぐ。

 空中を舞う怪物に星が触れた瞬間、熾烈な爆発を起こした。

 流れる星は絶え間なく続く。
 翼竜の喉で煮え立つ青い炎は消え、弱々しく地上に傾いていった。

 均整バランスを失った身柄は制御不能な飛行機のように荒野の隅へ不時着した。

 土砂が周辺に拡散する。
 空を支配していた凶暴な魔物は力尽き、大地の上で平伏す。

「・・・・・」

 再び翼を羽ばたかせ、防衛部隊に襲いかかる兆候はない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

豚公子の逆襲蘇生

ヤネコ
ファンタジー
肥満体の公爵令息ポルコは婚約者の裏切りを目撃し、憤死で生涯を終えるはずだった。だが、憤怒の中に燃え尽きたはずのポルコの魂は、社内政争に敗れ命を落とした男武藤の魂と混じり合う。 アニメ化も決定した超人気ロマンスファンタジー『婚約者の豚公子に虐げられていましたが隣国皇子様から溺愛されています』を舞台に、『舞台装置』と『負け犬』落伍者達の魂は、徹底した自己管理と泥塗れの知略で再点火する。 ※主人公の『原作知識』は断片的(広告バナーで見た一部分のみ)なものとなります。 己の努力と知略を武器に戦う、ハーレム・チート・聖人化無しの復讐ファンタジーです。 準備を重ねて牙を剥く、じっくり型主人公をお楽しみください。 【お知らせ】 第8話「復讐はロゴマークに寄せて」は2026/02/11 08:00公開予定です。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...