DEAD HEAT ~破魔の護法士~

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破魔の護法士

パレード

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 街灯の天辺で風になびくロハリネの国旗。

 港から宮殿まで伸びる道路は普段よりも賑わい、大勢の市民や写真機を持った記者などが集まっている。
 みんな、笑顔で楽しげな表情だ。

 魔塊との戦いが終わり、およそ一ヶ月。
 人々はいまだ心に残る恐ろしい記憶を払拭し、陽気に生きようと努めていた。

 広場の時計が午後の二時を回った時、管楽器の重奏が流れた。

 市民の大きな歓声。

 宮殿の門が開き、馬車に乗った演奏隊がファンファーレを奏でる。

 美しい旋律に連なり、天蓋てんがい付きの四輪馬車が走行してきた。
 外装と内装は純白で、草花をかたどった細かい模様が金銀に輝く。

 革張りの高級な座席にロハリネ共和国の王女ミラトリアが座っていた。

 透き通るほどの白い肌。茶色の長髪は肩に流がし、淡い緑色のドレスを着ている。

 顔の輪郭は人形のようにで、べにを差した口元が優しく微笑み、 大きな青い瞳は吸い込まれそうなほど魅力的だ。

 一度会ったら老若男女わず、うるわしさに心が虜になると云われ、その噂が国境を越えて世界の国々へ伝わっている。

 今日はミラトリアの生誕二十年を記念するパレードだ。

 ムンゾとロハリネの戦争や魔塊が及ぼした被害で、人々の気持ちは暗く沈んでいた。

 国王はパレードを自粛するべきか悩んだが、識者や市民を宮殿に招いて意見を聞いた際、街を盛り上げてほしいという要望が多く、以前から予定されていた日時で開催することを決めたのだった。

 隙間なく並んだ見物人は、厚い祝福と鳴り止まない拍手を続ける。

 華麗な王女は道の両側に手を振り、深い感謝を伝えた。
 彼女の仕草に応えて歓声の量が増す。

 高揚した声は港から吹き込む微風そよかぜと混ざり、王女の肌を撫でた。
 つややかな髪と耳に付けたアクセサリーが揺れる。

 ミラトリアを乗せた絢爛けんらんな馬車は直線道路の先で方向を変え、市街地へ進んで行った・・・。


 宮殿の四階。
 各国の大使や客人がバルコニーからパレードを見ている。
 そこには護法士のセロナとクレイグもいた。

「アーツ賢正けんせい!!」
 客人が喜びに満ちた感情で呼ぶ。

 バルコニーを訪れたアーツの傍に大使が集い、世界を救った英雄をねぎらう。

 周辺に生じた人垣が無くなってから、二人が話しかけた。

「魔塊との戦闘で負傷したと聞き、身を案じていたのだ。見たところ、充分に完治したようだな 」
 クレイグが尋ねる。

「ああ。医師の手厚い看護で今はこの通り、どんなに動いても支障はない」

「それは良かった。無事に回復なされて安心しました」
 そう言うとセロナは笑い、クレイグも珍しく笑顔を見せた。

「二人に話したい事がある。でもここでは・・・。屋上に移動したほうがいい、来てくれ」

 アーツが背後に振り向いて歩き出す。
 クレイグとセロナは後ろについてゆく。

 バルコニーと接した広間を出ると廊下の中央まで進む。
 長い階段を上がって屋上の扉を開けた。

 視界をさえぎるものはなく、パレードで熱狂する街が一望できる。

 アーツが盟友に右手の指輪をかざした。

「これを知っていると思う。歴代の賢正が受け継ぐロハリネの国宝だ」

「ええ、存じております。昨年に行われた継承式に、私もクレイグ氏も参列しましたから」

「ハーバで起きた魔塊との戦いに敗れ、命が尽きたと覚悟した・・・。だが目覚めると冥遠幻土エベレストへ転移していて、その幻の地で指環に秘められた真の力を知り得た」

冥遠幻土エベレスト?・・真の力?」
 二人は理解できない様子だ。

 アーツは右腕を高く掲げる。
深結合インスパイア

 指環が輝き、螺旋の炎が体を巡った。
 灼熱の渦は頭から爪先つまさきまで包み、衣装が赤と黄金に改まる。

 クレイグとセロナの近辺を強い風が這う。 

 炎と風は収まり、屋上に変身したアーツがいた。

 紅蓮の装具と鎧。
 頭髪が背中まで伸び、肩に純白のマントを纏う。
 鮮烈な光景に二人は唖然としている。

「・・・私がジュガラとの戦闘で危機に瀕した際、突然現れた人物は、やはりアーツ氏だったのですね。
 眼差しは仁王像におうぞうのように鋭く、見慣れぬ衣服を着ていました。
 その件についてクレイグ氏と話したのですが、何も分からないままでした・・・指環に秘められた力・・・。とても驚いています」

「ああ・・・私もだ」
 クレイグも戸惑っている。

『破魔の武力により、辛うじて魔塊を倒した。しかし油断はできない。
 過去をさかのぼれば災禍をいざなう邪気の鼓動は時を越え、姿を変え、再び地上の何処どこかに現れる』
 アーツが勇壮な声で訴えかけた。

「事件後の調査では、魔塊に転じた血染めの闇同盟レッド・ファミリアの幹部四人は全て亡くなり、同盟は消滅しました。ですが秘密結社は他にもあります・・・」
 セロナが懸念を示した。

「我々の目が届かない影に潜み、良からぬ企てを画策かくさくしているかもしれん」
 クレイグが危ぶむ。

『魔性の災が再び起ころうと我々の力で地上を護る。
 それこそが護法士の使命。たゆむことなく全うしよう』

 アーツの言葉にクレイグとセロナがうなずく。三人の心に迷いはない。

 ふと見上げる。
 澄み渡った青い空に浮かぶ太陽が、長閑のどかな光とつかの間の安らぎを与えてくれた・・・。

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