DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

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破魔の護法士

拡張

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 真夜中。
 ムンゾ皇国の軍事研究所を歩く二人の警備員。

 片手に持つランプを敷地の周辺に向け、物陰ものかげをくまなく確かめる。

「付近の沿道を通る住民から数件の通報が届いた。
 現在、この研究所は閉鎖しているにも関わらず、夜になると何かの音が聞こえるらしい・・・」 

「素行の悪い少年が忍び込んで、遊び場にしてるんじゃないか?」 

「あぁ、それも考えられるが、門はしっかりと施錠されていたし、ここは敷地全体の壁が高いから登れやしないだろう」

「となると・・・魔物が棲みついたとか?」

「おいおいっ!魔物が現れたら俺達だけじゃ、どうしようもないぞ・・・」

 ガサガサッ・・・ザザザッ!
 壁際に根付く木々の間から不気味な足音が鳴った。

「!!?」
 草叢くさむらの茂みがざわめき、得体の知れぬ影が近づいてくる。

 二人は腰に携帯した小型の銃を掴み、音が聞こえた場所にランプの灯と銃口をかざす。
 引き金に指を掛けた瞬間、

『ニャー・・・』
 姿を見せたのは一匹の黒い野良猫。

「なっ、なんだ。猫か・・・」
 気が抜けて構えた銃を下げる。

 猫は人間の様子を観察したあと、自由気ままに走り去った。

 夜警達は再び歩き出し、巡回を続行する。
 その足取りは先ほどよりも遅く、警戒心が増しているようだ。

 夜は深まり、薄弱な月光の下で敷地を一回した。

 門まで戻った時、研究所の三階に光が見え、窓を覆うカーテンの枠に沿って白く点灯している。

「明かりが点いた。誰かいるようだぞ・・・」

「どこから侵入したんだ?・・・もしかして、また猫の仕業だとか?」

 入口の鍵を開けて建物に入る。
 静まり返った暗い廊下。
 口をつぐんで三階へ行く。

 光が見えた部屋の前に着いた。

 ゴロゴロゴロ・・・。
 車輪が床で転がっているような振動が伝わってくる。

 扉を少し開けて中をうかがうと蛍光灯の照明が戸口の隙間から漏れた。

 突然、目の前を横切った銀色の二輪車。
 直立して前進する縦長の車体は通路の奥で停止した。

「あれは何だ?・・・自動で動いている・・・」

 室内の中央に立つ黄土色の楕円体だえんたい

 その周りで四台の二輪車が金属の両腕を器用に使い、数種類の機器を操作している。

 楕円体には天井と繋がった配線が接続され、流れ込む電波により、黄土色の歪な表面が輝いた。

 警備員は意を決して突入する。

 背後の足音に二輪車が反応した。
 侵入者へ走りだし、一列に並ぶ。  
 これ以上は近付くな!という勧告だろう。

「何かの実験か?誰がこんな事を・・・」

 楕円体の表面で、二つの切れ目が瞳のように青く点灯した。

『私だ・・・。自身の能力を拡張させている・・・』

「拡張?」
 夜警が怪しげな物体を注視する。

『魔術師に造られた私は、意思を持たぬ兵器であった・・・。
 しかし突然、自我に目覚め、外界と己の境を認識し、他者に支配されぬ独自の思考を獲得した・・・。
 つまり生まれ変わったのだ。
 カムオブという名は捨て、新たに命名しよう・・・。
 私は更なる進化と力の増強を求め、秘密裏に自らの改造を行っていたのだが、露呈するとは・・・。
 仕方あるまい、邪魔者は排除だ』

 四台の二輪車が金属の腕を回す。
 先端に付属された指が内部に引き、溝から火器の砲口が出てきた。

 攻撃を受ける前に警備員が銃を撃つ。

 被弾した二輪車は傷口の中で火花を散らし、うつ伏せに傾いて倒れた。

 楕円体と繋がる配線が抜け落ち、緩やかに進む。
 体表の排気孔で蒸気が噴出した。

 青い切れ目から雷撃が放たれ、標的を襲う。

 驚いた二人は転んでしまったが、その拍子に運良く光線は傍を通る。

 後ろの扉と壁を破壊した。

 反撃する。数十発の弾丸は物体が装う魔力の膜に触れた途端、粉塵に変わって消えた。

 青い目の光が揺れ動く。
「!!・・・」

 敵は自分達の手で行動を制圧できる相手ではないようだ。

 夜警は壊れた壁の空洞へ走り、廊下から階段を必死に駆け降りた。

 黄土色の楕円体が雷撃を放つ。

 退避する二人は研究所から外に脱出して、振り返らず一目散いちもくさんに敷地の門をくぐる。

 敵は追ってこない。
 歩道の隅に腰掛け、荒い呼吸を整えた。

「あっ、危なかった・・・。何だ、あれは」

「どうやら兵器のようだ・・・。詳しくことは分からない。すぐ本部に戻って報告しなければ・・・」



 騒ぎが収まった研究所の三階。
 室内の奥に設置された台座。
 その四隅で立つ四本の長い金属筒シャトルが宙に上昇して、楕円体の前後左右に着地する。

 つつの側面から伸びた曲線状の支柱がぎ合う。
 まるい輪が形成された。

 水平に自転しながら楕円体を中心に舞い上がり、崩れた壁の跡地を通過する。

 建物から出ると闇で満たされた空へ高く浮かび、行方も告げずひそかに暗躍していった・・・。
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