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二章 二つの物語
三 ──
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階段を勢いよく上がっていく。
小さい足──そう思ってはいないが──で大きく踏みしめて強い音を出して駆け上がる。猪の突進のような勢いで進む。
寝室へと入るとすぐにクローゼットを開けた。隅々まで見渡すが、そこには服が沢山置かれたり掛けられたりしているだけだった。
カーテンを捲るが何も起きない。
布団を捲っても何もない。
その部屋には何も見つからなかった。
諦めて違う部屋を探しにいく。自分の部屋。きっとそこにいるに違いない。見つけた、と鷹を括って笑みがこぼれていった。
クローゼットの中にめぼしい者は見つからない。カーテンの裏にはいない。布団を捲ってもあるのはぬいぐるみだけ。ここにはいない。
ふとベッドの下を覗く。けども、そこには誰もいない。
「あー、もしかしたら」道を戻って寝室に入る。幼い声が寝室の中に響いていった。「ここかも」と言って、地面に体を引っつけた。
鉢合わせる顔と顔。
まさか見つかるとは思っていない、そんな驚いた表情をしていた。その顔にニヤニヤした顔をぶつけた。
「かんちゃん、みーつけ」
「見つかっちゃったー」
少し埃が舞ったベッドから這いずり出ていく。
「次はヨッシー達の隠れる番ね」
二人は階段を下ってリビングへと降りた。
一人の女の子を閉じ込めるように扉が閉められる。
できるだけ音を立てないようにゆっくりと階段を歩んでいく。
階段を登り終えると、次はどこに隠れるかを考えた。当たりを見渡していく。
ここに隠れよう。
そう思って、寝室のベッドの下へと隠れていった。
同じ所に隠れてるなんて思いはしないだろう。絶対に見つからないぞ、とニヤリと笑った。
「もういいかーい」
大きな声で家中に放たれる。
その声を聞いて大きな声で思いのままに返す。「もういいよー」と。
あれから約十年。小学生から中学生へ。そして、高校生へ。その間に、二人の間に亀裂が大きく広がっていき。いつの間にか崖のようなものとなっていた。
大人びたその姿。色んな隠し事を抱え、誰も踏み込めない領域を作り出す。
手を伸ばしてももう届かないと感じてしまう。
同じ高校に通う。でも、近くにいても、心の手はきっと届かない。
「今度こそは話せるかな。かんちゃんと」
「きっと話せるよ。僕が話してた時は冷たかったけど。それでも、奥底から優しさが滲み出てるような気がしたし」
信号機が赤く染まった。
ポケットからスマホを取り出した。
画面にはフォルダから懐かしの写真が移された。かんちゃんこと神崎双葉とヨッシーこと金治 好美。小学生の二人がカメラに向かって、笑顔でピースサインを浮かべている。
そのアルバムを見ていると、懐かしさのあまり頬が柔らかくなった。
青色に変わる信号機。
スマホをしまって歩き始めた。
秘密の抜け道。子ども心を刺激するような道へと入っていく。小さな抜け道にはゴミが落ちていなかった。
「ここ、結構ゴミがあったからこの道沿いのゴミを取りに行くことにしたんだ」
進めば進むほど薄暗くなっていく。
人目につかない秘密の場所。そこにトングとゴミ袋が落ちていた。すぐ近くにはゴミが落ちている。それらを見逃して忘れ物を手に取った。
「帰ろっか」
秘密の道をこれ以上進まず、来た道を帰していく。
閑静な抜け道。そこから見える景色も終わりに近づく。車の騒音が鳴り響く道が見えてきた。
「このブザー使わなかったね」
手に持ったブザーを手から無重力の空へと小さく上げて遊ぶ。何回か上げた。その内、調子に乗ってより高く上げた時、思わぬ方向へと跳んでいってしまった。
それはどこか見知らぬ場所へと落ちていった。
屋根に引き金が引っかかったのだろうか、ブザーの爆音が響いていた。思わず爆音のする方を振り向いた。
やってしまった。
すぐに取り戻そうと、再び秘密の抜け道を冒険しようとしたが手で止められる。
ブザーの騒音の他に聞こえる狼狽えた男達の声。
その声は、
「これ朝いた三人組の声な気がする。ちょっと独特だから覚えてる。やっぱこれあの三人組で間違いない」
神崎を追い詰めた三人の男の声だった。彼らは突然鳴り響くブザーに驚いたのか大きな声でリアクションしていた。
滑稽な音楽。
それを後ろにして車の通る道へと出た。
「そうなんだ。じゃあさ、気のせいにして学校に帰ろっか」
騒がしい背景にして横断歩道を渡っていく。
その騒がしさがミラクルな勝利を示していた。
小さい足──そう思ってはいないが──で大きく踏みしめて強い音を出して駆け上がる。猪の突進のような勢いで進む。
寝室へと入るとすぐにクローゼットを開けた。隅々まで見渡すが、そこには服が沢山置かれたり掛けられたりしているだけだった。
カーテンを捲るが何も起きない。
布団を捲っても何もない。
その部屋には何も見つからなかった。
諦めて違う部屋を探しにいく。自分の部屋。きっとそこにいるに違いない。見つけた、と鷹を括って笑みがこぼれていった。
クローゼットの中にめぼしい者は見つからない。カーテンの裏にはいない。布団を捲ってもあるのはぬいぐるみだけ。ここにはいない。
ふとベッドの下を覗く。けども、そこには誰もいない。
「あー、もしかしたら」道を戻って寝室に入る。幼い声が寝室の中に響いていった。「ここかも」と言って、地面に体を引っつけた。
鉢合わせる顔と顔。
まさか見つかるとは思っていない、そんな驚いた表情をしていた。その顔にニヤニヤした顔をぶつけた。
「かんちゃん、みーつけ」
「見つかっちゃったー」
少し埃が舞ったベッドから這いずり出ていく。
「次はヨッシー達の隠れる番ね」
二人は階段を下ってリビングへと降りた。
一人の女の子を閉じ込めるように扉が閉められる。
できるだけ音を立てないようにゆっくりと階段を歩んでいく。
階段を登り終えると、次はどこに隠れるかを考えた。当たりを見渡していく。
ここに隠れよう。
そう思って、寝室のベッドの下へと隠れていった。
同じ所に隠れてるなんて思いはしないだろう。絶対に見つからないぞ、とニヤリと笑った。
「もういいかーい」
大きな声で家中に放たれる。
その声を聞いて大きな声で思いのままに返す。「もういいよー」と。
あれから約十年。小学生から中学生へ。そして、高校生へ。その間に、二人の間に亀裂が大きく広がっていき。いつの間にか崖のようなものとなっていた。
大人びたその姿。色んな隠し事を抱え、誰も踏み込めない領域を作り出す。
手を伸ばしてももう届かないと感じてしまう。
同じ高校に通う。でも、近くにいても、心の手はきっと届かない。
「今度こそは話せるかな。かんちゃんと」
「きっと話せるよ。僕が話してた時は冷たかったけど。それでも、奥底から優しさが滲み出てるような気がしたし」
信号機が赤く染まった。
ポケットからスマホを取り出した。
画面にはフォルダから懐かしの写真が移された。かんちゃんこと神崎双葉とヨッシーこと金治 好美。小学生の二人がカメラに向かって、笑顔でピースサインを浮かべている。
そのアルバムを見ていると、懐かしさのあまり頬が柔らかくなった。
青色に変わる信号機。
スマホをしまって歩き始めた。
秘密の抜け道。子ども心を刺激するような道へと入っていく。小さな抜け道にはゴミが落ちていなかった。
「ここ、結構ゴミがあったからこの道沿いのゴミを取りに行くことにしたんだ」
進めば進むほど薄暗くなっていく。
人目につかない秘密の場所。そこにトングとゴミ袋が落ちていた。すぐ近くにはゴミが落ちている。それらを見逃して忘れ物を手に取った。
「帰ろっか」
秘密の道をこれ以上進まず、来た道を帰していく。
閑静な抜け道。そこから見える景色も終わりに近づく。車の騒音が鳴り響く道が見えてきた。
「このブザー使わなかったね」
手に持ったブザーを手から無重力の空へと小さく上げて遊ぶ。何回か上げた。その内、調子に乗ってより高く上げた時、思わぬ方向へと跳んでいってしまった。
それはどこか見知らぬ場所へと落ちていった。
屋根に引き金が引っかかったのだろうか、ブザーの爆音が響いていた。思わず爆音のする方を振り向いた。
やってしまった。
すぐに取り戻そうと、再び秘密の抜け道を冒険しようとしたが手で止められる。
ブザーの騒音の他に聞こえる狼狽えた男達の声。
その声は、
「これ朝いた三人組の声な気がする。ちょっと独特だから覚えてる。やっぱこれあの三人組で間違いない」
神崎を追い詰めた三人の男の声だった。彼らは突然鳴り響くブザーに驚いたのか大きな声でリアクションしていた。
滑稽な音楽。
それを後ろにして車の通る道へと出た。
「そうなんだ。じゃあさ、気のせいにして学校に帰ろっか」
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その騒がしさがミラクルな勝利を示していた。
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