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四章 藍色 ── インディゴ・ブルー ──
一 ──
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クラボラ部に入部して、ずっと部活の依頼をこなしたり地域のイベントに参加したりしてきた。そこに現れる個人依頼。引きこもり救出の依頼がくることなど誰が予想しただろうか。
その時の様子を思い出してクスッと笑った。
ビジョンの見えないボランティアに対して多大な不安がある。大きく立ちはだかる壁。それに向かって一丸となるメンバー。その時はそんなに深く考えたことはなかったが、その立ち向かう姿は、後になっていい思い出だったと思える。
目の前に広がる七羽の折鶴。
何年か経っていてもその鶴はどこか凛としている。
「この鶴、開いてもいいですか?」
無邪気に話しかける生徒。浮かべた笑顔を見て、昔の時を思い出していく。今は見守る時期だ。それに不安はない。ただ、無性に物思いにふけてしまうだけ。
「ああ。いいぞ。心残りはあるが仕方ないことだからな。ずっと飾っておく訳にもいかない。人も物もいつか終わりがくる。いつかは見納めする時がくる。俺はもう高を括った」
赤い鶴を手に取った。
きっとこの鶴がなくても心の中で存在している。実体のない折鶴だ。
隣の両手が藍色の鶴を分解していた。
器用な手つきで一枚の紙に変えていく。
「折り紙の折り目を見るのって面白いと思いませんか」
自身の世界に浸っている。全くついていけなかった。「すまんな。俺にはさっぱり分からない」
そんな言葉に返答されることはなかった。
黙々と一枚にする作業。ようやくペラペラな一枚の折り紙になった。
「やっぱり、ほら。わざと折りやすく工夫がされてる。作った人、相当折り紙好きなんだろうなー。それにしても、何この暗号──」
ふと発した言葉に反応した。「暗号?」と聞き返す。そうすると、「ほら、ここに書いてある文字です」と白に書かれた文字を見せてきた。
その暗号は他の誰かには分からない。クラボラ部にのみ分かる暗号だった。
まさか、今までの心残り。それがここで払拭されるとは思いもしなかった。
ずっと大切にしてきた。大切にしすぎたせいで折り紙を開けるなんて発想に至らなかった。まさかクラボラ部の最後の日に、マニアが奇跡を起こしてくれるなんて思いもしなかった。こんな奇跡、夢にも思わなかった。
「すまん。その折り紙を渡してくれないか」
藍色の折り紙を手に取る。見つからなかった秘宝がようやく見つかった。
思わず体が動いていた。クラボラ部の顧問の前で体が止まる。
「クラボラ部の撤収作業を月曜日にまで遅らせることはできませんでしょうか」
頭を下げていた。あの暗号が気持ちを高揚させていく。
そう行動するしか他ならない。きっと仲間が同じ状況にいたら今の自分と同じことをするだろう。
「え、ええと私はどうこう言える立場じゃないので。とりあえず、作業は止めて起きますね」
「ありがとうございます」
急いで廊下へと飛び出した。
廊下は走ってはいけない。それでも走らずにはいられなかった。
上にも許可を取った。
クラボラ部の廃部は月曜に持ち越されることとなった。
ここまでは順調に進んでいる。次は、土日のどこかで昔の仲間全員と集まることができるか、だ。
職員室に戻り、急いでスマホを手に取った。懐かしい仲間への連絡先を開く。大田透。そこへの電話を開いた。
「大田。久しぶりだな。それよりも、十年程前に解けなかったヒガナの問題が、ついに分かった。その答えは折り紙を開いた所に書かれてあったんだ」
専用の机に置かれた一枚の折り紙。
その事実が勝呂を、スマホ越しの大田も興奮させた。
大田の協力もあって日曜の夕方に集まれることになった。それがどれほど嬉しいことか。一枚の折り紙が生んだ奇跡だ。
その折り紙には「東 縦3 横3 B」という暗号が書かれていた。
その時の様子を思い出してクスッと笑った。
ビジョンの見えないボランティアに対して多大な不安がある。大きく立ちはだかる壁。それに向かって一丸となるメンバー。その時はそんなに深く考えたことはなかったが、その立ち向かう姿は、後になっていい思い出だったと思える。
目の前に広がる七羽の折鶴。
何年か経っていてもその鶴はどこか凛としている。
「この鶴、開いてもいいですか?」
無邪気に話しかける生徒。浮かべた笑顔を見て、昔の時を思い出していく。今は見守る時期だ。それに不安はない。ただ、無性に物思いにふけてしまうだけ。
「ああ。いいぞ。心残りはあるが仕方ないことだからな。ずっと飾っておく訳にもいかない。人も物もいつか終わりがくる。いつかは見納めする時がくる。俺はもう高を括った」
赤い鶴を手に取った。
きっとこの鶴がなくても心の中で存在している。実体のない折鶴だ。
隣の両手が藍色の鶴を分解していた。
器用な手つきで一枚の紙に変えていく。
「折り紙の折り目を見るのって面白いと思いませんか」
自身の世界に浸っている。全くついていけなかった。「すまんな。俺にはさっぱり分からない」
そんな言葉に返答されることはなかった。
黙々と一枚にする作業。ようやくペラペラな一枚の折り紙になった。
「やっぱり、ほら。わざと折りやすく工夫がされてる。作った人、相当折り紙好きなんだろうなー。それにしても、何この暗号──」
ふと発した言葉に反応した。「暗号?」と聞き返す。そうすると、「ほら、ここに書いてある文字です」と白に書かれた文字を見せてきた。
その暗号は他の誰かには分からない。クラボラ部にのみ分かる暗号だった。
まさか、今までの心残り。それがここで払拭されるとは思いもしなかった。
ずっと大切にしてきた。大切にしすぎたせいで折り紙を開けるなんて発想に至らなかった。まさかクラボラ部の最後の日に、マニアが奇跡を起こしてくれるなんて思いもしなかった。こんな奇跡、夢にも思わなかった。
「すまん。その折り紙を渡してくれないか」
藍色の折り紙を手に取る。見つからなかった秘宝がようやく見つかった。
思わず体が動いていた。クラボラ部の顧問の前で体が止まる。
「クラボラ部の撤収作業を月曜日にまで遅らせることはできませんでしょうか」
頭を下げていた。あの暗号が気持ちを高揚させていく。
そう行動するしか他ならない。きっと仲間が同じ状況にいたら今の自分と同じことをするだろう。
「え、ええと私はどうこう言える立場じゃないので。とりあえず、作業は止めて起きますね」
「ありがとうございます」
急いで廊下へと飛び出した。
廊下は走ってはいけない。それでも走らずにはいられなかった。
上にも許可を取った。
クラボラ部の廃部は月曜に持ち越されることとなった。
ここまでは順調に進んでいる。次は、土日のどこかで昔の仲間全員と集まることができるか、だ。
職員室に戻り、急いでスマホを手に取った。懐かしい仲間への連絡先を開く。大田透。そこへの電話を開いた。
「大田。久しぶりだな。それよりも、十年程前に解けなかったヒガナの問題が、ついに分かった。その答えは折り紙を開いた所に書かれてあったんだ」
専用の机に置かれた一枚の折り紙。
その事実が勝呂を、スマホ越しの大田も興奮させた。
大田の協力もあって日曜の夕方に集まれることになった。それがどれほど嬉しいことか。一枚の折り紙が生んだ奇跡だ。
その折り紙には「東 縦3 横3 B」という暗号が書かれていた。
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