烈火の大東亜

シャルリアちゃんねる

文字の大きさ
上 下
19 / 44

19話:交渉 その2

しおりを挟む
ハーバード・フーヴァー「近年私は国内で孤立主義者というレッテルを貼られ
            共産主義者を含む国際主義者たちに攻撃を受けている」

岡本晃司「あなたは第一次世界大戦のとき物資や食糧の欠乏に苦しむヨーロッパの
     人々の救済活動を精力的に展開して、数百万人の命を救っておられます。
     少なくとも決して利己的なお考えではないと存じます」

フーヴァー「うむ。第一次世界大戦中私はヨーロッパで過ごしていたからな。
      で私はラジオで孤立政策をとることが出来ると考えることは幻想
      であると訴えているのだが」

晃司「つまり、あなたは不干渉主義だと表現するのが適切だと思います」

フーヴァー「そうだその通りだ。私はアメリカが戦争をするときはその安全保障が
      脅かされるこうげきを受けたときだけであり、そうでない限りは
      外国の揉め事に関与しない。そういう態度を保つべきだと訴え続けて
      きた。君もわかっているか?なぜ日本は開戦したか」

    晃司はこの世界大戦で自分が理解していることを
    フーヴァーに述べた。

フーヴァー「やはりわかっていたか。こうやってルーズベルトはヨーロッパにも
      軍事介入したわけだ。
      私は以前から勝者も敗者と同様に苦しむことになる、その苦しみは
      経済にも心にも及ぶものだと訴えてきた」

晃司「はい。私と同じ様な境遇の女性に聞いた話も含めてお話ししますが、
   あなたは、もし次なる戦いにアメリカが関与すれば、国家の抱える
   負債は膨れ上がり、預金者の富をインフレーションによって奪って
   いくことになるだろうと警告しています」

フーヴァー「ほう、その女性は遠く離れた場所からでも先の事がわかるのか?」

晃司「その様です。あなたの回顧録の内容もほぼ全てその女性から聞きました」

フーヴァー「そうか、続けよう。もし我が国が再びヨーロッパの戦いに介入すれば、
      我が国の民主的政権はそのことがもたらす衝撃に耐えられず、
      民主主義国として生存することが危うくなるに違いない」

晃司「その理由はヨーロッパの全体主義と戦うためにはアメリカ自身が総力戦
   体制を整えるために全体主義化せざるを得ないからですね」

フーヴァー「うむ。先ほど君が言い当てた内容だ。干渉主義者たちは民主主義を
      救うために参戦すべきだと主張するが、その戦いのためには我々
      自身が先制的な国家にならざるを得ないことを考えてもみない」

晃司「ドイツなどヨーロッパのファシスト国家の攻撃性はイデオロギーだけに
   起因しているわけではなく、これらのリーダーたちには国民を食料や物資
   の不足から何とか救いたいという思いがありますから」

フーヴァー「私と同じ考えか。まあそれでドイツやイタリアはイギリスやフランスと
      戦うことではそれは達成できない。
      アメリカが軍事介入しなければドイツは東に向っただろうと考える。
      ドイツの目は東、つまりウクライナ方面を向いていた。
      ドイツの東方への野心はイギリスの脅威にはなりえない。
      紛争は、フランスとの間ではなくロシアの平原で起きていただろう。 
      これを今まで国民に訴えかけてきた」

晃司「つまりソ連スターリンの思惑はそうさせないためにアメリカを
   ヨーロッパに軍事介入させることだったわけですね。
   ルーズベルトやチャーチルはその工作にのったというわけですね」

フーヴァー「そういうことだ。それと和平を維持するためには、民主主義国家だけ
      ではなく、独裁国家ともうまくやらなくてはならない。
      他国の人々がどのような政体を選択しその運命を託そうが、我が国
      とは関係ないことである。
      世界の国々を、戦争すると脅かして、正しい方向に導くことなど
      できない」

晃司「あなたはアメリカの軍事力あるいは経済力を戦争に使うよりも、
   戦争をしないという国際世論の形成に向けるべきだと主張されて
   いますね」

フーヴァー「そうだ。確かに世界各国にファシスト的熱狂の空気が満ち、計画経済化
      がはやっている。
      そうした風潮の中で個人の自由は圧殺されている。
      我が国がなすべきことは、真のリベラリズムの光をともし続ける
      ことだ。
      決してヨーロッパ戦争には関与せず、我が国内の民主主義を再活性化
      させ、更に進化させること。
      これこそが人類の未来への貢献なのだ。
      知的誠実さを追求し続け、希望の灯を絶やさない。
      それが我が国のとる道だったのだ」

晃司「西ヨーロッパの民主主義国が、ドイツの進める戦争に引き込まれ、その
   結果が残虐で非道なソ連のスターリンの政治を救うことになってしまえば
   それこそが本当の悲劇だとお考えになられていると拝察します」

フーヴァー「そうだ。私はこうも国民に訴えてきた。自由主義者の経済政策が
      戦争経済を基礎にするようなことがあってなならない。
      ヨーロッパの戦争に介入すれば、我々の政府自身がファシスト化する。
      個人の自由を制限するだろうし、そうなってしまえばそれを元どおりに
      するには数世代もかかってしまうだろうと」

    晃司は、まさに自分がいたころのアメリカがまだ元に戻って
    いなかった世代のアメリカだと思い恐れいってしまった。

晃司「素晴らしいご見識です。このままいくと数世代先もアメリカは元通り
   にはなりません。
   アメリカはヨーロッパの争いに干渉することは可能ですが、ヨーロッパ
   に和平をもたらすことはできません。
   それに不干渉の政策をとったとしても、アメリカが脅かされることは
   無いでしょう。
   ドイツ、イタリア、日本がそれぞれ地域覇権を握る様な事があっても、
   アメリカに対しては何も出来ないと思います。
   アメリカは、太平洋と大西洋とでしっかりと守られているからです」

フーヴァー「同感だ。我が国は南北アメリカ大陸の中心国家であるし、これからも
      その地位が危うくなることはないからな」

晃司「このあたりでお分かりになられたでしょうか?私があなたに協力を
   求めた理由が」

フーヴァー「それはよく分かった、しかしそれだけで私が危険をおかしてまで
      ルーズベルトを失脚させ、日米を和平に持っていく理由になるかな」

晃司「所長、この戦争が連合国の勝利に終われば、アメリカは一気に
   ルーズベルトに支援する声が大きくなり、半永久的に彼の罪は
   問われず、先ほどの結果になります」

フーヴァー「確かに、だがな」

晃司「所長が協力していただけなかったとしても、日本には私の様な人間が
   いくらでもおり、日本陸海軍は負けない方法を知っているため、
   太平洋戦争が長引きます。
   そうなると、まず世界構図は枢軸国対アメリカ対ソ連になり、
   各国が原爆を完成をさせて、世界は核戦争状態に突入し、
   後に水爆まで完成させ、極端には世界各国は長距離弾道ミサイルをも
   完成させ、やがて人類は滅亡に向います。
   それどころかこの地上の動植物はほぼ全ては滅亡に向います」
 
フーヴァー「そんなに先が見えるのか?」

晃司「はい、私にも見えます」       
                 
    フーヴァーは深く考えた。
    これは人道についても示唆したものでもあり、
    フーヴァーも当面は現在、近未来の事実において、
    アメリカ合衆国もその例外ではなく、
    それ以上の問題であると認識した。

フーヴァー「分かった。世界及び、地上の生態系が、その最悪の事態に陥るのを
      避けることを選択する。君の提案を受け入れよう。
      出来るだけのことはやるつもりだ」

晃司「ありがとうございます、所長」

フーヴァー「うむ。でだ岡本君、この戦争の今後の進展と帰趨(きすう)
      あと未来のわかるところを、全て教えてほしいのだが」

晃司「それならば所長、あつかましいですが、アメリカの暗号理論と
   現在のアメリカ海軍の暗号について、教えてほしいのですが」

フーヴァー「悪いが、私にはその様なことは、知らされていないのだ。
      だからそれは無理だ」

晃司「わかりました。では最後の注文に関してだけは、差し控えさせて
   もらいたいと思います。
   これについては申し訳ございません」

フーヴァー「国民や軍上層部等に、先の主義主張の結末、更には日本には
      未来を見通せる人間が複数人いると喧伝(けんでん)し、核戦争の
      話をし、国民やマッカーサーを始めとする各軍上層部を、必ず
      説得してみせる」

晃司「ありがとうございます。恩に切ります、所長」

フーヴァー「いやいや、ただそれには、政治改革が失敗に終わったとき、
      自らのみならず、息のかかったものや、積み上げてきたものが
      すべて犠牲になる恐れがあるから、日本海軍が海戦決戦によって
      優位が決定的になり、各軍上層部の意見や世論が
      動くときに決行したいと思う」

晃司「わかりました。ただそれなら日本海軍の東シベリア攻略はしばらく
   後の事になるかとは思いますのでそのときまで力を蓄えておいて
   ください。
   それと、この交渉の結果等について、所長の直筆の文面を下さり
   ませんか。
   海軍司令長官山本五十六大将と、海軍軍令部総長永野修身大将に、
   お見せします」

フーヴァー「分かった、何通いるかな」

晃司「一通で結構です、所長。
   まあ万が一の時のために結論だけ書いた文面と
   二通もらっておきましょう。
   それと帰りの待ち合わせのため、小型の無線機を頂けませんか?」

フーヴァー「承知した、手配させる。文面のほうは今から書くから
      待っていてくれ」
 
    フーヴァーは二通書き終えると、晃司に手渡し3人に
    確認を要求した。
         
晃司「確かに確認しました。これで日米双方の利益と進展が望み高く
   なりました。
   フーヴァー所長、いや、フーヴァー前大統領、本当に今日は
   ありがとうございました」

フーヴァー「こちらこそ、有意義な時間だったよ。
      例を言いたいのはこちらのほうだ。
      今は及ばすながらアメリカ国民を代表して礼を言う、
      ありがとう岡本君、他の二人も」

晃司「両国の増々の発展を」

フーヴァー「うむ、帰りは部下たちに、君らの護衛と送迎をさせようと思う」

晃司「ありがとうございます。それでは所長、我々はこの辺で失礼致します」

フーヴァー「くれぐれも気をつけてな」
 
    3人が深く日本流のお辞儀をして、そとで手配された
    車にのって海岸まで送ってもらった。
    海岸の町につくと、随行員に町でボードを調達して
    もらった。

所員「まさかお前らが日本海軍だったとはな」

    最初に来た時に3人を引き留めた研究所の所員はそう言った。
   
長田「決して他言無用にお願いしますよ」

所員「わかった、気を付けてな」

加古川「それでは」

    3人は午後になってからボートに乗り込み沖合にでた。
 
晃司「この辺でええかな、電波を発信しよう」

高砂一基「堺艦長、沖合水上ここより北東8浬に無線電波を確認、
     岡本中尉たちと思われます」
             
    高砂の嬉しそうな声が堺にも聞こえた。
         
堺則友「よしすぐに移動、浮上するぞ」

    堺はじめ高砂たちは、晃司達3人を見つけ、回収した。
    回収した後、潜水艦はボートを破壊し潜水して帰路に
    ついたのである。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

壁の絵

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

幽霊祓い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,872pt お気に入り:2,480

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:12,077pt お気に入り:3,343

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,246pt お気に入り:3,765

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:80,529pt お気に入り:3,317

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:8,789pt お気に入り:2,189

処理中です...