烈火の大東亜

シャルリアちゃんねる

文字の大きさ
上 下
43 / 44

43話:平穏

しおりを挟む
防衛大学校男子寮

渋野忠和「あ、戻って来たな、どこいってたんだ?」

岡本晃司「ん、ちょっとな風にあたりに、今の日本って1945年に敗戦を
     迎えたんやんな?」

忠和「当たり前じゃないか、なんでそんな常識聞く」

晃司「そうやんな、日本負けてもてんな。やっぱ情報って大事やな、
   より正確で詳細な情報があれば、俺らでもアメリカ軍将官とかに
   対抗出来るんかもしれんな」

忠和「どうしたんだ一体?お前とは散々そういう事は語ったじゃないか」

晃司「うん、まあそうやったな、でも情報があればやっぱどんなプロ
   やっても、半分素人に負けたりするんやな」

忠和「ほんとお前とは色々議論してきたけど、でもなんか実感こもってる
   様なこと言うな」

晃司「そうかもしれんな、忠和、俺やっぱ任官しようと思ってるんや」

忠和「結構急に考えたな、けどそれが一番いいとおもうぞ」

晃司「条件付きやがちょっと自信もついたしな」

忠和「どういうことだ?たった一日で」

晃司「まあ機会があったら、そのうちお前にも話すわ」

忠和「どうしたんだろうな、まあ話す気になったら話してくれていいぞ」

晃司「それはそうとお前、高校のとき彼女おったって言ってたな、
   ほんまにそれ以来おらんのか?」

忠和「ほんとだぞ、出会いがないつうかそんな感じかな」

晃司「意外といい女、近くにおったりするもんちゃうか」

忠和「晃司、お前、ひょっとして、女できたとかか?近くって防大の子かよ」

晃司「かもしれん。誰にも言うなよ。今は名前まではお前にも教えられんが」

忠和「うらやましいぞ、この。俺も彼女ほしいなあ、学校内では環境からして
   厳しくて無理だろうしな、それに女子の割合一割も居ないもんな。
   あ、ひょっとして今もその子にあってきたな?」

晃司「ばれたか、もしその子とうまい事いったら誰か紹介するよう聞いてみて
   やってもええぞ、ただし学校とか他の連中には絶対に内緒ならな。
   言うたらこの話無しやからな」

忠和「おう、秘密は絶対に守る、約束するぞ、いい子紹介してくれ」

晃司「まだ出会って間もないから、うまくいったとしても、もうちょい
   先になるぞ」

忠和「期待させてもらっとくぞ。で正月連休その子と会うのか?」

晃司「いや、正月はその子、予定いっぱいあるらしいから無理や」

忠和「なんだ、そんな最近知り合ったってことか?」

晃司「まあな、まあうまく行けばの話やけどな。まあ、あてにせんと期待
   しててくれ」

忠和「お前らしいな」

防衛大学校女子寮

園田一花「ただいま、胡桃」

井上胡桃「もう、今頃どこいってたのよ、早かったけど」

一花「うん、ちょっとね、ふふ」

胡桃「なんかいつとなく嬉しそうね、あー、ひょっとして男でしょ」

一花「うーん、胡桃には言っておこうかな、ルームメイトだし、
   その方がやりやすいかもね。
   絶対に誰にも言わないでね、誰かに言ったら当分口きかないよ」

胡桃「わかったわかった、この学校男子多いからね、一花がいままで告白
   されなかったことの方が不思議よね、でも今朝も彼氏いない様なこと
   言って、あんた嘘ついてたでしょ。まあそれはいいか、で誰?」

一花「それは悪いけど、今は胡桃にも言えない、でも絶対誰にも言わないなら
   これだけ言ってもいいかな」

胡桃「何々?教えて?絶対誰にも言わないからさ」

一花「絶対に言わないでね、ここの4年生の人なの。もうすぐ卒業するから
   いっかな」

胡桃「どんな人?教えてお願い」

一花「そうね、知恵と勇気があっておもいやりもある人」

胡桃「えー、理想的じゃないのー、流石一花ね、そんな男防大でもそんなに
   いないよ。ねね、かっこいい人?」

一花「うん、それに既に軍人として有能であるような人かな」

胡桃「軍人かあ、なんか私からしても好戦的なイメージあるけどね」

一花「好戦的ではないと思うけど、実は攻撃的な人かもしれない」

胡桃「でもイケメンでしょ、一花とお似合いじゃないの」

一花「それはそれよ、でも私にとってはすっごくかっこいいよ」

胡桃「うらやましい、この、この。あーあー私もいい人いないかなあ」

一花「その人とは最近知り合ったから、これからどうなるかわからない
   けど、しばらくしたら誰かいい人いないか、相談してみてもいいよ」

胡桃「ほんとに?ありがとうー、一花様ー。感謝しますぅ」

一花「もう、調子に乗っちゃって」

胡桃「いいじゃない、でもうすぐ年末年始の連休でしょ、旧友との約束
   断ってどっか行ったらいいのに、チャンスでしょ」

一花「私にはそんなこと出来ません。その人もそちら優先して全然問題
   無いような感じで言ってくれたし。それに正月休みは、友達たちと
   それはそれで楽しみにしてるしね」

胡桃「そっかあ、私も正月関西旅行楽しんでくるよ」

    防衛大の今年のカリキュラムは終了し、
    年末年始の大型連休に入った。

鹿児島知覧特攻平和会館

一花「・・ここが知覧特攻平和会館かあ、色々資料もあるなあ、青年将校が
   お国のためと言って特攻したのは有名だけど、こうして写真なんか
   見て資料読むとなんか涙がでてきたなあ・・」

友人「一花は防衛大だし、ひと際思い入れがあるんじゃない?」

一花「そうだね、こういうのに触れると国防について改めて考えさせられる
   とことかあるかなあ」

友人「私も国防とかはわからないけど、なんか涙が出てきたよ。
   一花ももう目が赤いよ」

一花「ほんともう素直に泣こうかな」

友人「だめだ私もう耐えられない、一花ももう我慢出来なくなったのね。
   ハンカチ持ってるよね」

一花「うん、もちろん持ってるよ。広島の原爆資料館にも行ったこと
   あるけど、こっちの方は戦闘員なのよね、それでも涙が止まらないよ」

友人「戦闘員?ああそっかあの時代、戦闘員も非戦闘員も関係なく殺されたん
   だったのよね。一花の場合は色々普段から考えてそうだもんね」

一花「今の日本国憲法下は立憲民主制で国民主権で、この時代の大日本帝国
   憲法下は立憲君主制で天皇主権だけど、今の時代もまったく変わらず、
   事実上は立憲君主制で日本人は天皇陛下の臣民、つまり一人一人が
   陛下の大事な宝なのよね。
   天皇統治の軍であっても皆自分たちの家族や国家国民のために命を
   捨てて行ったわけで、今も昔もその求心力が天皇陛下なんだね。
   だから例え戦闘員であってもやっぱり彼らもまず天皇の宝である臣民
   なのよね。
   天皇陛下は今も昔も我々の痛みを分かち合って頂けるんだから、
   民間人への大量の殺傷はもちろん、軍人であっても特攻する人たちの
   思いをお考えになられるとどれだけお辛い思いだったか。 
   そう考えると、本当に今こっちまで辛くなっちゃうよね」

友人「思想の方向性とは関係なく日本人として当然の気持ちよね。
   一花は戦闘員という立場になるんだもんねえ。
   人事と思うのは愚かな事とはわかるけど本当にすごいよね
   でも特攻で肉親を送り出す人たちは当時も辛かっただろうなあ」

一花「そうね陛下は身内の人の痛みまでわかちあっていただくんだよね。
   こう言いながら法的な意味で自分で少し理屈っぽい人間のような
   感じもしてきたかなあ」   
   
友人「普通に生活で考えても、防衛大は学問をしながら実戦形式で、
   心身ともに鍛えられる印象あるし、給料までもらってて、
   もう半分社会人みたいなもんだから、私達一般の学生のほうが
   よっぽど理屈っぽいと思うよ」

一花「仮にそうだとしてもやっぱり学生は学生だと思うよ。
   例えば卒業して自衛隊に入らなかったら給料どころか、
   一般国立大学並みに学費を払わないといけないし」

友人「そっかあ、それだけ心身ともしんどい思いをして大学生活送って、
   普通に学費取られるのもねえ、私も一花ほどではないけど高校時代
   同じ部活で体力には自信はそこそこあったから、もし防衛大に
   行ってたと仮定しても、体力面では女子ではついて行けるかな。
   でも国防って難しそうだし、私理系はちょっとね」

一花「体力訓練は男子と一緒よ、私も最初はきつかったよ。男子でも
   防衛大に来る男子だしね。大学入ってほとんど皆みたいに
   遊ぶ余裕ないけど今はこれでいいかなって、充実してるよ」

友人「男子と一緒なんだ、それはきいてなかったよ。一花でもきつかった
   んだね。でもより現実的な夢があっていいよね、今は厳しい
   だろうけどね。それに、つい半世紀ちょっと前、こんな時代も
   あったんだから私もかまけてないで学問に力もいれないとね。
   にしても平和だね、私たちの場合大学まで行かせてもらえるけど、
   この人たちは学校は知らないけど実際、家族や国民の為に命を
   捨てたんだもん」

一花「特攻に行く人たちなんか軍隊の養成学校出のエリート青年よ」

友人「そうなの?それは今まで知らなかったよ。そんな人たちが
   死にに行くなんて今では考えられないよ」

一花「特攻というものがあったという事実、特攻で死んで行った人たちの
   せめてもの思いを、私たちは忘れてはいけないんだと思う。
   この会館もいつまでもあって欲しいものだよね。
   今日はここに来てよかったよ」

友人「私もそう思うよ」

一花「じゃ折角だしもう少し見て回ろ」

友人「うん」

    会館を見つくしてその次の日に、一花たちは横浜に帰った。
    それから少しして、一花は横須賀に戻った。

大阪岡本晃司の実家

晃司「爺ちゃん、年なんぼやったっけ?」

岡本哲司「とおに80超えとるど」

晃司「爺ちゃんちっちゃいころ、軍人になりたかったんやろ?」

哲司「かなり小さい頃な、晃司お前に言ったこっとあったっけな」

晃司「爺ちゃんのことやから海大に行きたいとか思ってたやろ」

哲司「ようわかるな、やけどわしの子供の頃終戦を迎えてな、
   軍隊は無くなったしな、当然その養成学校もなくなったわな。
   まあとにかく久しぶりやし、将棋盤もってくるから指すぞ」

晃司「山本五十六大将も将棋が趣味やったらしいけどなかなか強かった
   と思うで、それに執念深そうや」

哲司「そう思うか、まあ軍人なんか負けず嫌いやろうしな。盤この部屋
   においとったんや。さあ指すぞ、先手後手は振り駒や、お前とは
   ちょっと勝ち越すくらいやったけど最近、もう思考力落ちてきて
   しもうてな、そろそろ負け越しそうや。わしの先手やいくど」

晃司「弱なったって爺ちゃん最近も道場行きよん?」

哲司「やること他にないからな、今もよう行っとるぞ」

晃司「そっか元気で趣味出来たらええことやな。にしても爺ちゃん
   全然まだまだ強いやん、あー負けてもた。爺ちゃんまだまだ
   弱ってないで、まだ勝ち越せそうもないわ」

哲司「まあボケ防止にはちょうどええやろうな、
   もういっちょや。晃司、今度はお前が先手や」

晃司「そういえば爺ちゃん、ひい爺ちゃんて海軍兵学校の教官
   やったんやろ?爺ちゃんもっと偉くなりたかったんちゃう?」

哲司「思い出したな、そういえばそうやったかもしれん、よう
   当てよるなあ。わしの親父つまりお前のひい爺ちゃんは
   軍人やったけど教育者やったんや、軍隊がなくなって
   からも、教育者として生きてきたんや。
   まあわしもそれ見なろうて教育者になったけどな。
   わしでも戦前戦時中と戦後の教育の違いにとまどったぞ。
   晃司、お前このまま自衛隊入るんか?」

晃司「うん、なると思う爺ちゃん、最近まで迷っててんけどな。
   爺ちゃんの頃も警察予備隊とかあったやろ」

哲司「まあなあ、わしがちょっとおっきくなったころにはもう
   お国のためとかいう時代は無くなってたからな」

晃司「俺もこれから国のために奉仕せなあかんねんで」

哲司「まあお前の場合、国家公務員になるわけやからな。
   わしもそうやったけど、わしの場合地方公務員やった
   からな、その辺また違ってくるやろな。
   その辺はよう教育受けとるお前のほうがわかっとるやろ、
   自分なりに考えてみい、わしからは言えることはないな」

晃司「教育者か、爺ちゃんもひい爺ちゃんもそうやったんやもんな。
   防衛大の教官なんてのも興味あるかな」

哲司「お前もなんらかの教育者として関心をもつんか、まあわしは
   国防なんて分からんがな、よしわしの二勝一敗や
   勝ち逃げする」

晃司「爺ちゃんまだまだ頭も元気やな。負け越したんひっかかる
   けど、ちょっと安心したで」

哲司「しかし疲れたぞ、最近道場でもすぐ疲れるからな」

晃司「んーま、その辺はようわからんけど、棋力は落ちてない様やで
   病気せんかったら大丈夫やわ。で俺明日と明後日友達と
   外出して、その次の日、横須賀戻ると思うから、
   正月は爺ちゃんの勝ち越しでええわ。
   また春戻ってきたら今度は勝ち越すからな。
   ネットでやったら休みの日とか出来るのになあ」

哲司「あれはどうもちょっとな。調べものがあるときに借りる
   くらいでええかな」

晃司「まあ無理にとはいわれんからなあ、で爺ちゃん晩飯まだやろ
   一緒にラーメン食いに行かへんか?」

哲司「おお行こか、おごってくれ」

晃司「ええで、ほないこ」

    そして連休が終わり晃司は横須賀に戻った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

壁の絵

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

幽霊祓い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,880pt お気に入り:2,476

グラティールの公爵令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14,669pt お気に入り:3,342

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,799pt お気に入り:3,767

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:91,540pt お気に入り:3,199

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,674pt お気に入り:2,188

処理中です...