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第二章 光の子と闇の子
サイキ・ハイレン
しおりを挟む光の力を操るサイキ・ハイレンと言う女性。
光、灰、闇の三つの奇跡の力。光と灰は、全ての人に自然に身に付く力だとも言われる。育った環境や性格などで子供の時に光か灰の二つの内どちらかに絞られる。
奇跡の力は、子供の時に力が確定してから、訓練などで力を強めて行く事ができる。だが、奇跡の力を訓練で磨くのは成果も分かりづらく、非常に難しいため、鍛える者はとても少ない。
六つの神々の力は、才が最も重要で、あるレベルまで行くと大きな差が開くものではあるが、ほとんどの人は訓練するのに選ぶのは神々の力の方である。奇跡の力よりも、六つの神々の力の方が、訓練での成果が分かりやすいからだ。つまりは、灰や光と言った奇跡の力を鍛える者は非常に珍しいと言う事だ。
だがその中でも、灰の力と光の力の、人間の基礎となる奇跡の力を極めるため、日々鍛錬を重ねている人たちがいる。
光の力を極め、人々から”光”と呼ばれる人物が、一人だけいた。その女性がサイキ・ハイレンと呼ばれる女性である。彼女は奇跡の力の一つである光の力の強化に成功した。ギンフォン国で光の力を持つ者の中では、彼女の光の力が一番に強いと言われている。
サイキ・ハイレンは周囲から神のように崇められている存在だが、随時の変わり者としても有名だった。
「わぁお! 何とかわいらしいんでしょう?」
カイムたちがサイキの下へ辿り着くと、彼女は声を大きく上げ、シエルの頭を撫でようと手を伸ばした。
シエルは怯えたように肩を竦める。子供ながらに、彼女は変わっていると勘付いたようだ。
「かわいい子ですね~。大きくなりましたね~」
サイキは笑顔を浮かべ、シエルを見る。
カイムとラムは、苦笑いをしていた。
サイキはシエルの上を見上げ、目を見開く。
「うわぁ! これが雷の竜ですか! 初めて見ましたよ。大きいですね~」
甲高い声を響かせた彼女は、目を輝かせてカミナリを見上げた。
カミナリは戸惑う様子もなく、サイキを無言で見つめており、カイムは不思議そうな顔をして竜を見ていた。いつもなら文句の一つでも浴びせるはずの竜が、サイキを見ながら一言も話さないのだ。
「…………」
カイムは知っていた。カミナリが言葉を失い、小言を言わない状況が、五年前にもあった事を。
カミナリは、ゆっくりと首を傾け、カイムとアイコンタクトを取る。
「サイキさん。なぜカントリーへ?」
口を開いたラムは、やわらかい口調で言う。
サイキ・ハイレンと言う女性は、カントリーから一番遠くに位置するタヤクロー町に住んでいる。カントリーまで来るのには馬を使っても10日以上かかる場所だ。
灰の子のお祭りだとは言え、彼女がわざわざカントリーまで訪れるのには、祝福の言葉を言う事だけが目的ではないはず。
周囲にそう思わせるのは、彼女が、ギンフォン国の”光の代表”とまで言われている特別な人物であるからこそだ。
「灰の子が産まれた時、来れなかったのがとても心残りでしてねぇ。タヤクローは情報が届くのが遅いもんで」
頭に手を当てて苦笑するサイキ。
「遠くからありがとうございます」
頭を下げながら口にするラムに続き、カイムも頭を下げた。
「いいえ~。まさかお祭りの時に来られるとは思わなかったですよ」
サイキは、頭に手を当てたまま、目を丸くして言った。どうやら、灰の子の、宴の事は知らなかったようだ。
「神々の子たちにも会って来ましたよ~。皆、かわいかったですねぇ。長いしすぎましてねぇ、カントリーまで来るのに27日もかかってしまいました」
あまりにも満面の笑みで話すサイキに、カイムとラムも釣られて笑顔になる。
「しっかしまぁ」
サイキは頭からようやく手を下ろし、カイムに顔を埋めるシエルを見て再び目を丸くする。
「こんなに警戒されるとは。灰の子はやはり、頭がいいですねぇ」
サイキの言葉にはっとしたように、カイムはシエルに目を向けると「後カミナリの竜も」と彼女は付け足した。
「どういう事でしょうか」
カイムが静かに尋ねると
「……皆に会いに来たのはねぇ、”ある情報”を得たからなんですよね~」
サイキは涼しい顔をして言った。
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