光と闇

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第四章 力との闘争

4人の天才たち ③

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 七年に一度の"世界模試"が開催された日、光の子も含めた天才たちは、試験会場へ足を運んだ。

 試験日は世界で統一はされているものの、時差の関係で一日ずれる国もある。

 オリンピックと被らないように七年に一度開催と言う形になっているが、参加人数はどの競技よりも多く、エフティヒア国では各町の施設で試験が行われ、それぞれ任意の参加となっていた。

 世界で見ると合計は数億人の参加がある中、エフティヒア国の平均順位は六千位であり、全体で見るととても優秀な方だ。

 極めて高難易度となる試験問題は、基本的な数学、英語は勿論もちろんだが、医学や薬学、心理学や学問など、受ける教科は二十にも及ぶため三日に分けて試験は行われる。

 出題問題は毎回異なり、一度出されたものは二度と出題される事はなく、試験対策は非常に難しいとされていた。

 前回の世界模試で史上最年少で五百位以内に入った野々村ののむらりゅうもまた、会場を訪れて試験を受けていた。

 高校生で試験を受けている者は居なく、周りは四十歳以上の人たちだけだ。

 順位で七千位以内に入れば、社会的に学力が高く評価されるため、知識に自信がある者は世界模試に参加する。だが、専門知識が主に必要とされる試験は、範囲が非常に広いため、学校で習う知識だけでは問題を解く事すらできない。

 エフティヒア国ではよく、学力が高いとされる有名大学の学生や卒業生が受けに来るが、億をこえる順位を取る者も、少なくはなかった。だからこそ、九歳にして五百位以内に入った野々村竜は、エフティヒア国が世界から注目されるきっかけとなるほど、驚きの結果を生み出したのだった。

 任意と言っても、子供や学生が受けに来る者は数えるほどしか居ない中、懸命に望む野々村竜は、夕方、試験が終わると真っすぐ学校へ向かった。

 今年の世界模試が行われる三日間は、平日で学校もある。世界模試を受ける場合は会社や学校は休みになるが、根っから真面目な竜は、試験が終わった後、毎日担任の先生に報告に来ていた。

 学校へ行き、職員室へ入った彼は、いつものように担任の腹米先生の机の前に立った。

「野々村!  三日間お疲れ様」

 腹米先生は、竜の顔を見てうれしそうに声を上げて体を捻って横を向くと、隣の机の椅子を片手でつかんで彼の元へ椅子をスライドさせた。

 椅子の底には小さな丸いタイヤが付いており、音なく動くことができる事務用椅子、オフィスチェアとも呼ばれている椅子だ。どうやら、先生の隣の机は誰も使っていないようだ。

「ありがとうございます」

 竜は真面目さを感じさせる固い口調で言い、先生が用意した椅子に腰掛けた。

「どうだ? 試験は」

 毎日先生の下に報告へ訪れる竜を親しく思っているのか、腹米先生は優しい声で聞いた。

「難しかったです。前と全く問題も違くて」

 眉間にしわを寄せて答えた竜。

「そうか。結果は二カ月後だな。前みたいな成績でなくても、高校生で世界模試を受けられる事態がすごい事だ」

 腹米先生は竜の頭に手を伸ばして荒くで、誇らしげに口にし「それとだ野々村」とさらに続けた。

 投げかけられた言葉に、頭をでられ下を向いていた竜は、顔を上げて先生の顔を真っすぐ見て続きを待つ。

「いい話が来てるぞ。驚くなよ」

 竜の頭から手を離した腹米先生は、誇らしげにほほ笑みながら言う。

「いい話し、ですか?」

 竜は首をかしげてつぶやいた。

「あぁ、"GF"から推薦が来てる」

 腹米先生の言葉を聞き、竜は目を見開いて声を大きくして言った。

「GF!? ってあのGFですか?」

 驚いたように声を響かせた竜は、膝の上に置いている手に力を込めたように、肩を上げて体を強張らせた。

「あぁ、そうだ。あのGFだ」

 目を丸くする竜を見て、笑いながら言う腹米先生は、とてもうれしそうに口を開いた。

「そんな…でもまさか」

 あまりにも突然の事で驚きが隠せずにいる竜はつぶやくように口にする。

「GFからの条件は、世界模試で良い成績を残す事と、"特例制度"に合格する事の二点って話だがな」

 戸惑う竜に、声を低くして言う腹米先生は、言い終わる頃には真剣な顔をしていた。

 そして腹米先生は「野々村ならできるだろう。問題は、やるかやらないかだ。将来の事だ。ゆっくり考えるんだぞ」と続けた。



ーーー・・・



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ここまでお読みいただき
ありがとうございましたm(_ _)m
来週の土曜日18時に更新予定です。
今後もお付き合いいただけたら
嬉しいです!宜しくお願いします。

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