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エピローグ1
しおりを挟む突然のユーリス兄上の即位にも関わらず、国に動揺は走らなかった。
むしろ、今まで父王に押さえ込まれていた地方の貴族たちが、「次はどんな王か」と挨拶に来て、ユーリス兄上の聡明さと、あの冷ややかな美しさにひっくり返っていた。
我れ先にと、娘や妹を嫁候補として提案したが、意外にも兄上には「語り友」として最近、意気投合した令嬢がいるらしい。
彼女をできれば王妃にしたいと、昨夜の食事の席でクラウスと私に相談されたのだが……その令嬢が、
「……まさか、フラン令嬢だとは」
寝室のベッドに腰掛け、私は呆れたように溜息を吐いた。
「彼女、昔はクラウスに惚れていたのにな」
「昔の話だろ」
クラウスが涼しい顔で私の隣に座り、慣れた手つきで私の寝着の紐を解いていく。
「彼女とはほとんど話したことがない。ただの憧れみたいなもんだ」
「……自信家だな」
「俺、顔は整ってるからな」
真顔でさらりと言ってのける夫に、私は苦笑するしかない。
確かに、この顔に狂わされた人間(私を含む)は数知れない。
「たしかに……ん、ぁ……」
じっと見つめていると、そのままするすると寝着を剥ぎ取られ、肌が露わになる。
大きな手が、背筋をなぞるように這い上がってくる。
「……おい、お前のこの手は何だ?」
「何って、日課の確認だ」
「明日も公務があるんだぞ」
「立てなかったら、俺が支えるよ。横抱きで運びましょうか?」
「ん……っ、馬鹿を言うな……っ」
クラウスの手が、ゆっくりと背中を撫で下ろし、腰のくぼみを愛撫しながら、そのままお尻へと伸びていく。
大きな掌で包み込まれるように揉まれるだけで、腰の力が抜けていく。
「うぅん……」
「……エル」
耳元に落ちる、熱っぽい吐息。
クラウスが私を抱き込むようにしてベッドに押し倒し、私の両足を割り開く。
「お前が生きてることを……その声で、体温で、俺に教えて」
「……っ、んぁ……!」
羞恥なんて、とっくに彼に奪われてしまった。
ぱかっと無防備に開かれた足の間で、クラウスの指が這う。
(……待て、今、部屋に誰か入ってきたら……)
「は、恥ずかし……っ」
「こんな格好で、恥ずかしいな。扉が今開いたら」
「嫌だクラウス、やめて、ああんっ」
「……大丈夫、エルのそんな姿、誰にも見せるわけないだろ」
クラウスは低く囁くと、そのまま容赦なく侵入してくる。
ぬるり、と指が沈み込む音。
「ぁ、あぁあ……ッ!」
(何で私……クラウスは指を入れてるだけなのに、こんなに熱くてたまらないんだ)
「ここか? 震えてるぞ」
意地悪く、けれど的確に。
彼だけが知っている私の弱点、奥のしこりを、固い指先がコリコリと抉るように擦り上げる。
「待っ、て……クラウス」
「待てない。全部見せろ」
んうううう……ッ。
耳元で、ぐちゅ、じゅるり……と、粘ついた蜜が練り上げられる音が耳元で弾ける。
私の愛液で濡れた指が、内壁のヒダを一本ずつ数えるように執拗に這いまわる。
快楽が脳髄を直撃して、公務も、国のことも、何も考えられなくなる。
「おっ、お、おっ……あ、あぁ……!」
波のように押し寄せる快感に、私は為す術もなく翻弄され、情けなく腰持ち上げ、天井へと突き上げた足の先まで痙攣させる。
「……ハァ、ハァ……」
一度目の絶頂を迎え、荒い息をつく私に、クラウスは慈しむような口付けを落とす。
けれど、その瞳はまだだと訴えていた。ギラギラとした欲が、私を逃がそうとしない。
彼は私の体を反転させ、正面から覆いかぶさる。
彼の熱く猛ったものが、濡れそぼった入り口に押し当てられる。
至近距離で見るそれは、凶器そのものだった。
その張り詰めた剛直は、極限の興奮で赤黒く充血し、無骨な血管を浮き上がらせて、クラウスの硬く割れた腹筋に反りかえっている。
(……嘘だろう)
恐怖すら覚えるサイズなのに、今からこれを『もらえる』と思っただけで、私の奥は勝手にヒクヒクと収縮し、欲しがっている。
涎を垂らして、早くそれを飲み込みたいとねだっているのだ。
「エル……」
「ん、ぁ……」
「俺のこれと、指……どっちがいい?」
入り口を浅く小突きながら、楽しそうに聞いてくる。
そんなこと、はしたなくて口にできるわけない。
「わか、らない……っ」
そう答えながらも、私の体は裏腹だ。
早く入れてほしいと、クラウスの熱い部分に自身の秘所を擦り付ける。
ヌプ、ヌプ……と、濡れそぼったいやらしい水音が部屋に響いた。
「……ふふ、嘘つきな体だな」
「あああ……っ!」
私の正直な反応に満足したのか、クラウスは一気に腰を沈めた。
指とは比べ物にならない圧倒的な質量が、私の中を埋め尽くす。
「あ……ッ、ぁ……!」
入口が限界まで押し広げられ、裂けるような痛みを感じたが、それは本当に一瞬のことだった。
すぐに、隙間なく満たされるとろけるような充足感が、痛みを上書きしていく。
責められるたびに、「あ」と短い声を漏らすことしかできない。
気持ちいい。苦しいくらいに、愛されている。
じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……。
卑猥な音が部屋に響く。
彼は執拗に、さっき指で解された甘い場所ばかりを打ち据えてくる。
「あぁっ! 同じところばっかり……ッ!」
私の足の間から、クラウスが瞬きもせずに私を凝視している。
欲望に濡れた瞳。
乱れている私の顔も、だらしなく開いた足も、繋がっている部分も、すべてを見られている。
愛されている実感と、暴かれている恥ずかしさで、快感が底上げされる。
視線ですら犯されているようだ。
そして突然、私の乳首をねっとりと口に含んできた。
「こっちも可愛がるのを忘れてたな」
クラウスは音を立てて、唾液をたっぷりと塗りつけるように舌を這わせる。
その刺激に私のものは、芯まで硬く立たせていく。
触られていない方の胸も、ツンっと次は自分の番だと期待して勝手に尖り始めているのに、彼は焦らすように片方しか触ってくれない。
「あ……っ、もう一つも……さわっ、てぇ……っ」
もう自分が何を口にしているのかわからない。恥もプライドも捨てて、ただ快楽を乞う。
「可哀想に……期待して震えてる」
クラウスは片方を強く吸い上げながら、何もしてもらえず放置されている方の突起を、うっとりとした目で見つめている。
「……意地悪、するな……っ」
私が涙目で訴えると、クラウスは降参したように目を細めた。
「……っ、エル、可愛い……愛してる」
甘い囁きと共に、彼は放置されていたもう片方にも、吸い付いてくれた。
「ああ……あ……嬉しい、よぉ……ッ」
焦らされていた分、与えられる刺激が脳を溶かすほど気持ちいい。
嬉しくて、愛おしくて、私の腰は勝手に動き出し、クラウスの激しい律動に合わせて、自らもっと奥へとねだり始めた。
「いい、クラウス……ああああッ」
「エル……もっと、深く入れていいか」
切羽詰まった声で聞かれる。
もう十分深いのに、これ以上なんて。
「む、無理だ……これ以上は……っ」
「頼む……俺も、もっとエルと深く繋がりたいんだ」
私の拒絶なんて聞く気がないくせに。
彼は私の腰を掴むと、ぐっと体重をかけて、根元まで沈み込ませてきた。
「ん、あああんッ!!」
入っちゃいけない、一番深いところ。
そこに、彼の最愛が到達した。
びく、びく、びくッ!
入れられたと同時に、身体中が大きく痙攣する。
目の奥がチカチカして、自分でも制御できないほどの蜜が、噴水のように溢れ出し、止まらなくなる。
「あ、が……っ、とまら、ない……ッ!」
シーツを汚し、彼を汚し、それでも収まらない快感の波。
なのにクラウスは、それを見ながら嬉しそうに笑って、腰を止めない。
ぐったりして、指一本動かせない私になど構わず、彼は執拗に抜き差しを続ける。
意識が飛び、もう何を話しているのか、自分がどんな声を出しているのかもわからない。
ただ、絶え間なく打ち込まれるリズムに合わせて、喘ぐことしかできなかった。
「……ハァ……っ」
ようやく彼が動きを止め、引き抜かれた瞬間。
白い濁りが、私の内側からだらだらと垂れ落ちた。
「……見ろ、エル」
クラウスが私の尻を指でなぞりながら、意地悪く囁く。
「尻から漏らしてるみたいだ。……ダメだろ、俺の種、そんなに零しちゃ」
「うぅ……っ」
(こいつ、昔よりもセックスがねちっこい……)
弱いところを責められすぎた、私は朦朧とする頭で考えていた。
かつての彼は、もっと余裕があって、スマートだったはずだ。
今の彼は、まるで飢えた獣のように、私の全てを貪り尽くそうとしてくる。
「……本当の俺はどうだ? 嫌いになるか?」
私の思考を読んだのか、クラウスが耳元で低く囁く。
その声には、微かな不安と、それを上回る嗜虐心が滲んでいた。
「……っ、嫌いになるわけ、ないだろ……ッ」
「なら、いい」
彼は満足げに喉を鳴らすと、休む間もなく腰の動きを再開しようとする。
「でも、久しぶりだから……っ、ちょっと加減を……」
「……努力する」
パン、パン、パンッ!!
口先だけの返事と共に、肉と肉がぶつかり合う激しい音が部屋に響く。
「あ、あぁッ! 待っ、だから加減を……ッ!」
「……ッ、無理だ、お前の中が、俺を離さないから……ッ! もっと、もっと締めろ、俺の種を全部飲み込め!」
私の抗議など聞こえないかのように、彼は一心不乱に打ち付け続ける。
結合部が、ぐちゅ、ぶちゅっ、と泡立つような聞いてられないほど卑猥な音を出す。
何度も何度も最奥を叩かれる。
やがて、彼が低く唸り、私の中の奥底に叩きつけられる。
ドクドクと注ぎ込まれる熱量に、私も再びつられて達してしまう。
(はぁ、はぁ……やっと、終わっ……た……?)
力が抜け、ベッドに沈み込む。
さすがにこれだけ吐き出せば、彼も満足したはずだ。そろそろ休ませてほしい。
そう思った、矢先だった。
「……ん?」
クラウスが私の体を抱え上げ、自身の太腿の上に座らせる。
彼は膝立ちになり、私は宙に浮いた状態で、彼を見下ろす形になる。
「……え?」
嘘だろう。さっきあれだけ出したのに。
「まだだ。……まだ、足りない」
彼は私の腰をガシリと掴むと、下から突き上げるようにして、再び硬くなったそれを容赦なくねじ込んできた。
「ひっ、あ……ッ!?」
ズプンッ、と重たい音がして、最奥を叩かれる。
また、やるのか。こんな状態で。
「あぁァ、ア」
奥の壁を突き上げられ、キュウッと彼に吸い付いてしまう。
(怖い……ッ!)
あまりの快感の強さに、私は本能的な恐怖を覚えた。
これ以上与えられたら、本当に頭がおかしくなってしまう。
私は生理的な涙を滲ませ、ガタガタと震えながら首を振った。
「うぁ、あぁ……ッ!!」
重力がかかった分、さっきよりもさらに深い。
内臓が押し上げられるような感覚に、私は目を見開いた。
「……お腹が……ッ」
あまりの深さに、私の薄い腹が、内側からクラウスの形にボッコリと押し上げられるのがわかる。
ひどい光景だ。自分が自分じゃないみたいだ。
「苦しいか? ……すまない」
外側から膨らんだそこを撫でられる、脳が快感と恐怖で痺れた。
クラウスが私の汗ばんだ額に口付ける。謝罪の言葉とは裏腹に、その腰は容赦なく最奥を抉り続ける。
「でも、エルのここが……咥え込んで離さないんだ。俺を離してくれない」
「あ、ぐぅ……ッ、ちが……っ」
「違くないだろ。……ほら、どうだ? 気持ちいいか? 口に出して、もっと俺に教えて」
逃げ場のない体勢で、執拗に敏感な場所を擦り上げられる。
ガクガクと太ももが勝手に痙攣する。
私は白目を剥いて恥も外聞もなく、彼に言われるがまま、泣きながら許しを乞うしかなかった。
「ご、ごめんなさ……い……っ、きもち、いいよぉ……ッ」
私の嬌声と降伏宣言を聞いたクラウスは、理性のタガが外れたように、尻を掴み、激しく私を下から貫き始めた。
愛の言葉と、快楽の悲鳴と魂が溶け合い、私たちは何度も何度も確かめ合うように体を重ね――気づけば、窓の外は白々と明け始めていた。
♢
翌朝。 爽やかな日差しが差し込む王宮のテラスで、ユーリス兄上が優雅に紅茶を飲んでいた。
「おはよう、エル」
「……おはようございます、兄上」
私は重い体を引きずって席に着く。
腰は、立ってるだけでガタガタ震えるが、意地で歩いてきた。喉も枯れている。全身がキスマークだらけで、首まで詰まった服を着ないと外に出られない。
全部、隣で涼しい顔をして座っている男のせいだ。
私は、給仕にコーヒーを頼んでいるクラウスを、これ以上ないほど恨めしそうな目つきで睨みつけた。すると、兄上が不思議そうな顔をして首を傾げた。
「あれ? クラウス、その頬どうしたんだい? 真っ赤に腫れているけれど」
そこには、私が今朝方、あまりのしつこさにブチ切れて見舞った渾身の平手打ちの跡が、くっきりと残っていた。
指の形まで分かるほどの、見事な赤みだ。
しかしクラウスは悪びれもせず、薄く笑ってその頬を指先で愛おしそうに撫でた。
「……私のパートナーの愛の証です」
「お、お前……っ!」
何が愛の証だ!何が!
私がテーブルの下で思い切り足を踏んづけてやると、クラウスは痛がるどころか、嬉しそうに目を細めた。
顔を真っ赤にして怒る私と、叩かれても幸せそうなクラウス。
そんな二人を見て、ユーリス兄上はすべてを察したように優雅に微笑み、お代わりしたばかりの熱いコーヒーを、静かに飲み干した。
(終)
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