ナイショの妖精さん

くまの広珠

文字の大きさ
346 / 646
4 何度、桜の季節が来ても

37

しおりを挟む

「『巻きもどしの法』だね。わたしもリズからきいたことがあるよ」


 鵤さんが、部屋の中を歩いていって、お母さんの座るイスの後ろに立った。


「フェアリー・ドクターは、自分のかけた魔術をリセットしたいとき、巻きもどしの法をつかうらしい。そうすると、物事が巻きもどって、ゼロになるのだとか」

「はい。いつものように、フェアリー・ドクターの薬をつかっただけでは『巻きもどしの法』はつかえないのですが。今回のよみがえりは、いちおう儀式めいたものだったので。儀式には有効な手段だと、とうさんの本に書いてありました」

「つまり、こういうことよね。ハグの入ったリズの体を、墓地までつれて行って、『巻きもどしの法』を行う。そうすれば、あの人の体から、ハグの魂が出ていく。でも、それからは? ハグの魂はどこに行くのかしら?」

「たぶん……うちの鏡に入ると思う。ハグはもともと、うちのカフェの鏡の中に、モヤになって入り込んでいた。たとえば、ハグを鏡にもどして、鏡を割ったら……ハグの魂も消えるのか?」


 ヨウちゃん、あごにこぶしを置いて、考え込んでる。


「それでもダメなら……たとえば、土にうめたらどうかしら?」


 わぁ……お母さんてば、過激!


「まぁ、こればっかりは、やってみるしかないね」


 鵤さんが丸い体をゆらして、ため息をついた。


「儀式をして、リズからハグの魂を切りはなす。そして、ハグが出てこられなくなる対処をする。それで終わってくれるのが一番なんだが。先のことは……また、そのつど考えていくしかないね……」

「そうね……不安はのこるけど、今はできることをするしかないわね」


「ありがとうございます。鵤さんやかあさんがいっしょに考えてくれるから、オレも心強いです」


 ヨウちゃんは、組んでいた足と腕をおろして、ふたりに深々と頭をさげた。


 なによ……。あたしは数に入ってないんだ……。



 あたしはひとりで、管理棟の入り口のドアに背中でもたれて、ぼんやり。


 みんなのむずかしい話は、わかったような……。わかんないような……。


「問題は、どうやって、ハグを墓地につれて行くかだな」

「それなら、アグリモニーの葉をつかえないかしら? たしか、乾燥させた葉や茎は、食べ物にまぜると、眠り薬になるんだったわよね。それで、二、三時間は寝かせられるはずよ」


 お母さんが、ピンと人さし指をたてた。


「でも、かあさん……アグリモニーの葉なんて、庭にはもう……」

「それがね。庭にはなくても、カフェの店内にあるの。ほら、昔、葉児がつかったアグリモニーの葉があまってたでしょ。それを今、カフェの壁に、ドライハーブにしてつるしてあるのよ」


「それだっ!」


 ヨウちゃん、身をのりだす。


「清子さん、フェアリー・ドクターの薬のことに、いつの間にそんなにくわしくなったんだい?」


 鵤さんにきかれて、お母さんははずかしそうにほっぺたを赤らめた。


「葉児にいつか読んでもらうために、あの人の書いた日記を翻訳してた時期があるんです」


 そっか……だから……。


 フェアリー・ドクターの洗礼を受けただけで、なんにもしてないあたしなんかより、お母さん、ずっとくわしい。


「リズの食事に、わたしがアグリモニーの葉をまぜます。そうすれば、不自然なくあの人を眠らせることができるでしょう。そして……車に乗せて、墓地まで運べば……」



しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

トウシューズにはキャラメルひとつぶ

白妙スイ@1/9新刊発売
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。 小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。 あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。 隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。 莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。 バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

宇宙人は恋をする!

山碕田鶴
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞/奨励賞を受賞しました。ありがとうございました。】 私が呼んでいると勘違いして現れて、部屋でアイスを食べている宇宙人・銀太郎(仮名)。 全身銀色でツルツルなのがキモチワルイ。どうせなら、大大大好きなアイドルの滝川蓮君そっくりだったら良かったのに。……え? 変身できるの? 中学一年生・川上葵とナゾの宇宙人との、家族ぐるみのおつきあい。これは、国家機密です⁉ (表紙絵:山碕田鶴/人物色塗りして下さった「ごんざぶろ」様に感謝)

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

君との恋はシークレット

碧月あめり
児童書・童話
山田美音は、マンガとイラストを描くのが好きな中学二年生。学校では黒縁メガネをかけて地味に過ごしているが、その裏で人気ファッションモデル・星崎ミオンとして芸能活動をしている。 母の勧めでモデルをしている美音だが、本当は目立つことが好きではない。プライベートでは平穏に過ごしたい思っている美音は、学校ではモデルであることを隠していた。 ある日の放課後、美音は生徒会長も務めるクラスのクールイケメン・黒沢天馬とぶつかってメガネをはずした顔を見られてしまう。さらには、教室で好きなマンガの推しキャラに仕事の愚痴を言っているところを動画に撮られてしまう。 そのうえ、「星崎ミオンの本性をバラされたくなかったら、オレの雑用係やれ」と黒沢に脅されてしまい…。

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

処理中です...