ナイショの妖精さん

くまの広珠

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1 作戦会議

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「ヨウちゃん、儀式はまた夜にするの?」


「……いや。今回は人質がいるうえに、綾がおとりになる。あぶない橋をわたるぶん、できれば昼間に行いたい。

けど、それが難しいんだよな。昼間だと浅山に人がいるだろ。キャンプ場もあるし、植物園もあるし。誠と鵤さんは鏡の中だとしても、外に人がいると、浅山を人間の世界から切りはなすことができない……」


 ヨウちゃんは立ちあがって、つくえの引き出しから紙を取ってもどってきた。ゆかに広げたのは、浅山の登山マップ。

 浅山の中を蛇行する登山道のポイントに、「植物園」とか「キャンプ場」とか「外人墓地」とか「芝生広場」とか、活字が入っている。


「……なぁ。こうして見ると、キャンプ場って、だいぶふもとのほうにあるんだな~」


 誠が、地図を指さした。


「これさ~、キャンプ場をその結界の範囲の外にできないわけ? キャンプ場を入れないで、その上に結界を張るんだよ」

「なるほど。できるな。けど、『登山道』と『芝生広場』と『植物園』はどうする?」

「植物園って、毎週月曜がお休みじゃなかった?」


 あたしは、身をのりだした。


「ってことはさ。月曜なら、お客さんが来ないし、職員さんもお休みだよね」

「和泉ぃ、ナイスっ!」

「決行は月曜だな。のこりの問題は、登山道と、てっぺんの芝生広場……」


 冷房の効いた書斎は、暑い外とは別世界みたい。三人、頭を抱えてう~ん。


「あ。今、オレ、わっるいこと、思いついちゃった!」


 誠が、にひひと笑った。


「はぁ? 悪いこと?」


「そ。登山道の入り口にさ、ロープを張って、ふさいでおくんだよっ! 『工事中だから立ち入り禁止』みたいにさ。そうすれば、行く道が登山道しかない、芝生広場にも、人が入れなくなるじゃん」

「うわっ!?  誠、わっるい! そういうこと勝手にして、バレたら、先生にめちゃくちゃ怒られるよ~?」

「でも、しょうがないじゃん。ほかに方法ないし~」


「ロープか……。通用するのは、何時間だろな? だれかが苦情言って、キャンプ場の職員にでもバレたら、終わりだ。でもまぁ……見つかる前に、結界さえ張ってしまえば、あとで人が入ろうとしても、入れなくなるのか……」


 ヨウちゃんは、赤いマーカーのキャップを取ると、地図にぐるっと丸い輪を書いた。


「なら、こうだな。結界を張るのは、登山口より上の、この円のライン。登山口は、オレが明け方、先に浅山に行って、ロープでふさいでおく。

――それで、浅山を祭壇にかえる方法だけど、円のラインの四方に、守護のハーブを置かないとならない。東はラベンダー、西はヒース、南はペパーミント、北はバーベイン。オレがひとりで山をまわって、ぜんぶ置くには時間がかかるから、当日、ふたりにも手伝ってほしい」


「オッケ~っ!」


 あたしは、誠といっしょににっこり笑った。


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