ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 ネバーランドへようこそ

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 ……なんだったんだろ……?


 ヨウちゃんは、有香ちゃんとつきあってるんだよね?

 じゃあ、教室でのアレは、あたしの空耳?


「……だよね~」


 ハァ~ってため息をついて、ひとりでなっとく。


「和泉ぃ、バイバ~イ」

「バイバイ、また、あした~」


 誠に手をふって、校門を出て。

 暮れはじめたうす曇りの道を、あたしは自分の家へ歩き出す。



「……おい、綾っ!」


 校門の裏で、琥珀色の髪の男子が腕を組んでいた。


「おまえはオレんち。特訓だって、言ったろっ!? 」

「えっ!?  あ、あれっ!?  空耳じゃ……なかったのっ!? 」

「んなわけねぇだろっ! ちょっとは危機感持てよ。あしたはもう、クリスマス会、当日なんだぞっ!!  おまえ、きょう、塾は?」

「ない日」

「じゃ、問題ないな。来い! うちにかんづめだっ!! 」


 ヨウちゃんにランドセルを押されて、反対側へ歩かされる。


 ええええ~っ!?




 海を左に数分行くと、懐かしいヨウちゃんちの高台が見えてくる。


「おかえりなさい。――あら、綾ちゃん、いらっしゃい」


 自宅カフェ「つむじ風」の店内に入ると、ヨウちゃんのお母さんが迎えてくれた。

 いつもとかわらないぽっくりエクボ。


「こ、こんにちは」


 だけどあたしは、ランドセルをゆらして、店内をキョロキョロ。


「……あの……有香ちゃんは……?」

「永井は、きょうは来ないだろ。きのう来たとき、きょうは塾で遅くなるって、言ってたし」


 ふ~ん。もう、相手の予定まで把握しちゃう仲なんだ……。


 店内を見わたして、少しかわっていることに気がついた。

 玄関の横に、山で切り出してきたみたいな切り株が何株か置かれていて、その上に布製の小物がならんでる。

 おサイフとか、ポーチとか。天井からつられているのは、トートバッグや、ハーブの写真がプリントされたTシャツ。

 お客さんが、お土産を買えるコーナーができたみたい。


「わ……カワイ~」


 パッチワーク柄のポーチに見とれてたら、後ろにヨウちゃんが立った。


「それ、永井からきいてるだろ?」


 きいてないよ。なんにも。


「あたし、最近、誠としか話してないもん」


 つんっと言ったら、ヨウちゃんは言葉を飲んだ。


「……そっか。……だな。悪かったな。特訓って、オレより誠に教わったほうがよかったな」


 顔をそむけて、ジーンズのポケットに両手をつっ込んで。もう、トントン書斎におりていく。



「綾ちゃん」


 カウンターの中からお母さんに呼ばれた。


「あれでも、あの子……ずっと綾ちゃんに家に来てほしくて、うずうずしてたのよ」


「……う、ウソぉ」


 だって……ヨウちゃんには、有香ちゃんが……。


「綾。早く来い。時間がなくなる」


 下で、ヨウちゃんが呼んでる。

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