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4 黒い妖精の黒いワナ
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しおりを挟む黒々とそびえ立つ、石造りの塔がある。
外は闇。時おり稲妻が、上空に網目状に広がっていく。
あたしは白いドレスのすそをひるがえしながら、塔のてっぺんへと続く螺旋階段をのぼっていた。
明り取りの窓しかない塔の内部。カンカンと反響する足音。
もうひとつの足音が、どんどん、あたしの背中にせまってくる。
「待てぇ~! 綾ぁ~っ!」
窓の外で、ピカッと稲妻が走った。
光に照らされて、あたしを追う人の姿が見えた。
琥珀色の髪、琥珀色の瞳。
片方だけあがったヨウちゃんのくちびるが、冷たくゆがんでいる。
その両手首から先は、巨大なハサミ。カニみたい。弧を描いた銀色の刃がギラっと光る。
「綾ぁ~! おまえの羽を切ってやる~っ!! 」
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