若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第十八話 オス

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「誰だお前」
「ガクッ、いや自己紹介したじゃん。……いや、してないっけ?」

 なんだこいつ?
 前の席から椅子をそのままにこっちを向く人間。
 短い金髪に筋肉が随分と主張しているオス。制服のサイズ、一つ上げた方が良いと思うぞ。パツパツ過ぎるだろ。もはや猥褻物だな。

「まあいいや、俺の名前は中本ロウタだ!」
「ロウタ、ハウス」
「おけっ帰るぜ! ってなんでだよ!」

 おっ、こいつ意外とノリが良いな。
 ただのオスなら興味ないけど、娯楽物になりうるオスなら話は別だ。
 こういう奴は話していて楽しいもんな。

「自己紹介は必要か?」
「ははん、ジョンスだろ? 知ってるぜー」

 一切の違和感なく、そう口にする……なんだっけ?

「悪い、名前忘れた」
「て、おいっ! 速すぎるだろ!」

 芸人かな?

「俺はな——」
「苗字いらん、雑音だ」
「おまっ、凄え価値観だな!?」

 こちとら血縁者の顔を知らないからな。家名? 何それ。

「どうでも良いだろー、はよ言え」
「いやー、凄えな。んじゃ改めて。俺はロウタだ宜しくな!」
「あっそ。オスに興味ない」

 割と本気。というかガチ。ついてる奴は対象外だ。……えっフェイ? あいつはほら、本当についてるかわからないし、例外例外。
 まあ、こいつに関しては多少の興味はあるぞ。ノリの良い奴はそれだけで価値があると思っている。
 特に俺みたいな人格破綻者にとってはな。良い娯楽だ。

「お前ーっ!」

 おっ、邪険にされたから敵認定か?
 ……あれ? そもそもだけど、この教室にいる男子は二人だ。つまりクラスメイトの男共はこいつを除いて強襲してきたって事か。
 唯一の例外か。ふむ。なるほど?

「またいいや。俺の事はロウタって呼んでくれよな!」
「ロウタか、んー……牢獄」
「おいこらーっこらー! その連想ゲームはアウトだろ! というか文字数増えてるし!」
「ならロウタで良いか」
「最初に辿れ!」

 辿れ? 至れの間違いでは? 多分。

「そんでロタ、何か用?」
「結局略すのかよ!」

 とか言いつつ、なんとなく嬉しそうな……金髪君。何を言っても反応してくれるのは実に面白い。

「髪,地毛か?」
「えっ? いや、それはないだろ。茶色は時々いるけど、金髪はなくね?」
「つまり染めてるのか?」
「おうよ!」

 何故かドヤ顔の筋肉塊。
 そう、こいつ。ハキハキと軽いイメージを感じる口調だなーという個人的な偏見の極みキャラなのだが、実際のところは結構な筋肉だ。
 とても大柄ってわけではないけれど、筋肉質な身体が制服の上からでもわかるくらいにマッチョ。
 脳筋ボディでチャラいとか……こいつ、敵だな。

 ここで一度思い出してほしい。俺の望みはなんだ? そう、ハーレムだ。
 ハーレムを築く上で重要な事とはなんだ? それはズバリ、女性の心を射止める事だ。ならばこの道の進む上で邪魔なものはなんだ?
 イケメンだ。
 俺が求めるのは俺だけのハーレム。そういう友達を増やそうって感じではないのだ。俺だけを好いてくれる彼女が数多に欲しいんだ。

 このロウタって男。身長が高くて筋肉質。それも脱げば凄いだろうなって一目でわかるタイプの勝ち確ギャップ細マッチョ系統だ。
 性格も明るく、ノリ良い。そして顔も良い方だろう。こんな存在しているだけで絶対モテるだろう存在は邪魔だ!
 敵! 敵! 敵なのだあーっ!

「なあなあ! ところであの生徒会長とどんな関係なんだ?」

 あの? 随分と強調しているけどどういう事だ? 単純に美人で高嶺の花って事か?

「別に、ちょっとした顔見知りってだけだ」

 俺とカユの関係。つまりクライアントとハンターだって事は少し前のやり取りで話しても良いって事になっているはずだ。
 とはいえ、それを明言されたわけではないし不安が残る。依頼を受けている側としてはちょっと慎重になりたいよな。

「へえー、顔見知り、ねえ? ねえ?」

 何やら言いたそうな顔をするロウタ。
 明らかに深読みというか、勘違いしている顔だよな、これ。

 昨日の夜。このクラスで唯一襲撃して来なかった男。勿論それだけで信用するなんて事は勿論ない。
 むしろこいつが裏で手を回していて、失敗したから懐柔しにきていると考える事も出来る。
 親しく距離を縮め、間合いに入ればグサッて感じでさ。そういう可能性はゼロじゃない。だから警戒して距離を取る?
 それはつまらねえよなーっ!?

「まっ、気にすんなよ。それより聞いても良いか?」

 今ならいないし丁度良い。そう思い何やら深読みしたそうにしているロウタに質問する事にした。

「おっ、いいぜーいいぜー。けどけどよー、その前に俺から良いか?」
「んあ? まあ、いいぞ」

 名前を聞く時には自身から名乗る。名前じゃないけど質問権も同じって事で。

 ロウタが危険かもしれないから離れとく? それじゃあ刺激がノンノンノンだ。
 俺は何だ? 俺はハンターだ。己の生命を掛けて刃を振るうハンターなんだ。
 学院《ここ》じゃ足りない。足りないんだよ。
 昨晩の一件でここのレベルは大体わかった。
 何人かの[例外《・・》]はいるだろうが、基本的なレベルは把握した。
 正直言って弱い。弱過ぎる。
 ただまあ、昨日のが各々の実力の全てとは思っていないけど、少なくとも俺の印象は雑魚中の雑魚。クソ雑魚ワロリンだ。
 こんなところに一年もいたら俺という刃は確実に錆びる。それくらい物足りないというか、平和ボケした世界なんだ。
 己の意志だけで緊張を保つのは結構大変な事だ。だが何かしらの懸念要素があれば気は引き締まるものだ。

 だからあえて、ロウタとは仲良くするとしよう。敵かもしれないこいつの側にいよう。
 精神的には大いに利用するわけだが、敵ならそんな事気にする必要なんてない。

 ……もしも本当に、ただ良い奴だった場合には……そのうち考えるっと。

「こんな時期の入学なんて珍しいよな? なんか訳ありか?」

 高等部一年の二学期に編入。そりゃ気になる……よな?
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