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第十九話 姉妹
しおりを挟むあらかじめフェイとそういう質問をされた場合、どうするかはシミュレーションしているからな。一切の迷いなく言えるぞ。
「俺は現役のハンターでな、ずっとソロでやってたんだが、そろそろ仲間が欲しいと思ったんだよ」
「……へ?」
「だから現役ハンターなんだよ。ずっとソロだった奴が今更仲間を求めても厳しいからな。俺ってまだまだ若いし、学院に入ってこいつだーって仲間を探そうと思ってさ」
そう言ってニィッと笑みを浮かべるものの、当然嘘だ。
仲間? いらん。邪魔。
だって知ってるか? 受注者が増えても報酬は変わらないんだ。つまり、分け前が減るって事なんだぜ?
俺には金が必要だ。将来のハーレムのため、少しでも多くの金が必要なんだ。
なら仲間とか、邪魔……とまでは言わないけど、アレじゃん?
……いや、わかってる。わかってるぞ? 仲間がいれば戦力が上がる。戦力が上がればより良い依頼を受けて、より多くの報酬を得る事が出来る。となれば手取りが減る事はないどころか、むしろ増える可能性だってある。
が、それってつまり博打だろ?
自身以外の要因で失敗するかもしれない。一人なら俺がミスらなければ良いだけだ。リスクは一人分で済む。
そもそもの話、他人と呼吸を合わせて一緒に戦うとか……むーりと。
「まっ、伊達にソロでやってきたわけじゃない。俺について来られる奴がいるとは限らないけどな」
「おおーおおーっ! そりゃすげぇ自信だな!」
「そりゃハンターなんて自信がなきゃ出来ねえよ。常に己の生命を晒してるんだからな」
ハンターの仕事は訓練や模擬戦なんかと違って本当の戦いだ。
どちらが敵の生命を奪い取るかの戦い。勝者は生き、敗者は死ぬ。単純な未来の奪い合い。
勝てば官軍負ければ賊軍……とは違うか。
「けどハンターかー。あっ、て事はよ! モンスターと戦った事あるのか!?」
「あるぞー。既存生物の変異種である[魔獣]。過去の魔女たちが人工的に生み出し、野良化したとか言われてる[魔物]。結晶に覆われた異様に硬い[魔晶《ましょう》]とかな」
モンスターは特徴によって様々な呼ばれ方で種類分けされているけど、由来が伝えられている通りなのかは不明瞭だ。
ただもっとも身近なモンスターは断言出来る。それは最初に話した[魔獣]だ。
既存生物の変異種だって説も濃厚らしく、数も最多だ。
なんだろう。数が多くナチュラルにエンカウントする雑魚敵ポジションだな。種毎にも個体毎にも戦闘能力には差があるから、雑魚とは言えない雑魚ってパターンもあるけど、立場としてはそんな感じだ。
続いて[魔物]についてだが……中ボスかな。
決して弱くはない。一太刀で討滅するのは不可能と言って良い。だからといって苦戦するかと言われると、そこまでじゃないよなーって感じ。
既存生物の変異種である[魔獣]とは違いその姿はとても生物とは思えない個体も多い。イメージしやすい例を出すならゴーレムやワイバーンとかだな。
そして最後に[魔晶]だ。
この流れから予測出来るだろうけど、こいつらは正しくボスだ。
勿論全ての[魔晶]が凄まじい戦闘能力を秘めているわけではない。が、最低ランクでも相当の強さだ。
数は多くないどころかレアと断言出来る。なんせ俺も今まで一度しか遭遇した事がないからな。
ハンターになって間もない頃に遭遇した[魔晶]。当時の俺は今と比べればペーペーのぺーで、弱々の弱だった。だから余計に強く感じている? いや、今遭遇しても苦戦するのは必至だろう。それくらいに強かった。
あの時は間違いなく、死は隣人よりも近く、すぐ側から手を伸ばしていた。
「それじゃあそろそろ俺の番で良いか?」
「へ? あっ悪い悪い! 続けて質問しちまった!」
「いいって、聞きたい事についてだけど、ズバリこいつの事だ」
そう言いながら隣の席を親指で指した。
今はそこにいないユニについて問い掛けると彼は苦笑した。
「……ああー、どんまいとしか言えねえな」
励ますように俺の肩を軽く叩いた後、ロウタは続ける。
「まあ、アレアレだ。西塔姉妹は有名なんだよ」
そりゃそうだろうな。
美人で優秀そうな雰囲気を醸し出しながらも、ちょっと抜けているところもあって愛嬌まで兼ね備えている姉、ソラ。
一見我儘で人の話を聞かないように見えて、落ち着けば常識人っぽい可愛い妹、ユニ。
人気出るだろうし、話題も多そうだ。
「姉妹愛が強過ぎるって事で有名なんだ」
「強過ぎる姉妹愛? ……まさか義理の姉妹だったりするのか? それとも親戚とか?」
「いや違うぞ? 正真正銘実の姉妹だって話だぜ」
どうしてそんな事を気にするんだと言いたげなロウタ。
強過ぎる姉妹愛と聞いて、ついつい百合の花を幻視してしまったのだ。実の姉妹だとダメとは言わないけど……そうじゃない方が現実的かなと思いました、はい。
「特に末っ子のユニは姉愛が凄くてな。近付く男共みんなに牙を剥くんだぜ。まーまー、それはジョンスの方が身に染みてると思うけどよ」
「……だな」
ソラの話になった途端暴走機関車みたいなとんでも思考回路だったもんな。なんとなくそんな事だろうと思ってたけど、姉妹愛ねえ。
俺には家族がいないって話をしたと思うけど、確かにソラみたいな姉がいたら不安になったりするのかもしれないな。
なんというか……うん、ソラって悪い男に騙されやすそうだもん。しっかりしているように見えて、実はポンコツ面が強いからな。主に己に対しての認識がさ。
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