若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第二十話 ヒント

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「だから西塔先輩と仲良くても、ユニの前では気をつけた方がいいぜ。なんせ斬られるからな!」

 爽やかなニカっとスマイルと共に放たれる言葉としては、随分と物騒だな。しかも脅しじゃなくてマジな所が更に物騒だ。

「それにしてもユニの暴走振りはヤバいだろ。スイッチが入ってない時は割と素直なだけに余計厄介に感じる」
「……まあ、仕方がないと思うぜ?」
「仕方がない?」
「これについては俺からは言えないぜ。だからといって本人に聞くのはやめた方が良い」
「……なんだよそれ、余計に気になるじゃん」

 ユニが暴走機関車になった理由か。ロウタの口振りからして何かしら明確な原因があるみたいだ。
 少しだけ考え込んでいると、ニヤニヤとした顔が映った。

「へえー、他人に興味がないって感じだと思ってたけど、結構気にするんだな」
「そんな風に見えるか?」

 口ではそう恍けてみるものの、実際そうだな。他人になんざ興味はない。だが、将来のハーレムメンバー筆頭候補たるソラを攻略する上で、ユニの存在は切り離す事が出来ない。

 それに正直なところユニの事も気に入りつつあるんだよな。だがそのためには暴走機関車要素をどうにかしないと難しいだろう。

「見えるというか、思いっきり名乗ったのに存在ごと忘れられてたぜ?」
「男には興味ない。でもユニは可愛い、興味マシマシ」
「お前色々と正直過ぎないか!?」
「正直……良い事じゃん」

 正直者は正義。……俺が正義? そりゃないわ。
 金! 女! ハーレム! ……そんな正義の味方とかやだなーっと思ったけど、あれ? 意外と正義の味方というか、勇者や英雄って事実上ハーレムのパターン多くない?
 ……正義か悪か。そんな事は誰かが勝手に言ってりゃ良いか。実害があるなら敵になるだけだからな。

 それにしてもさっきから困ったように頭を掻き毟るロウタ。毛根へのダメージが中々高そうだなーっと、そんな事を思いましたマル。

「いやー、強いハンターは個性の塊だって聞いた事あるけどよ、ここまで自由人とは想定外過ぎるぜ」

 疲れ切った老人のようなため息を漏らすロウタ。若くから苦労すると老化が早く進むらしい。そんな事を誰かが言っていた気がする。あくまで気がするのであって確定してはいない情報だ。故にこれが間違いだったとしても俺は悪くない。

 ただ、ふと気になった事がある。
 ロウタの言葉の端々から感じられる想い。ハンターに対する憧れか?
 温室育ちが実戦育ちに憧れる。中にはそういうバグみたいな奴の一人や二人現れるんだろう。こいつがその一人って事か。

 本当にロウタがハンターに憧れているのか、その実際のところはわからないけど、先輩として助言の一つでもくれてやるかな。

「ロウタ。自我が強くないと強さなんて得られない。心の底から、いや、底以上に深くから求め、手を伸ばす。欲しい物を欲しいと素直になれる事、それが強くなるための必須条件だと、少なくとも俺はそう思ってる」

 欲しいのに我慢する。やらずに諦める。それじゃあ得られる事はない。
 欲しいなら欲しいと、手を伸ばす。伸ばし続ける。それがどんな無謀であれ、歪であれ、本能のままに夢を見る。
 決して他人に奪われないように。進み続けるんだ。

「へえ、それならちょっと助言するぜ。心構えを教えてくれた先輩《・・》にな」

 先輩か。クラスメイトだし同い年のはずだ。考えられるとすればやっぱりロウタは……。

「現在の生徒会長、まあ正確には代理だけど、ともかくカユ先輩なら教えてくれるかもしれないぞ。本当に顔見知りってだけならやめた方が良いけどさ」
「……お前、案外ちゃっかりしてるな」

 確かにカユとソラは同じ生徒会で仲良しだしユニとも親しげだった。それ以前にロウタが知っているという段階で、大抵の奴は知っているような事なんじゃないか?

 となれば聞き込みをすればわかるかもしれない。ただ、そんな事をすれば確実にユニにバレるだろう。それは避けたい。ならば俺が西塔姉妹以外で交流している唯一の人物、顔見知りのカユに聞くのが最も低リスクだ。
 しかし、ロウタが話したがらないって事はカユにとっても同じ事だと予測出来る。それでも話してもらえたとなれば、俺の顔見知り発言はただの誤魔化しで、別の何かがあるとバレるって事だ。

 ……ぶっちゃけ誤魔化す必要ないんだよなー。許可は貰ってるし、別にいっか。

「まっいいや。顔見知りのカユに聞くとするよ」
「おっおっ? そんなに気になるのか? ままっ、俺としてはジョンスがあいつの救いになる事を期待してるぜ」
「……」

 意図的なのか、それとも偶然か。
 さっきから端々にヒントらしき情報を残すロウタ。こいつがどんなやつなのかまだまだ不明瞭だけど、それはきっと時間が解決してくれる。
 どうせ一年間、いや、約半年はクラスメイトだからな。

「あっ、そういえばカユって何年生《・・・》だ?」

 カユは生徒会長だ。だからそうなんだと思って気にしていなかった。
 女性の年齢を探るのはマナー違反だと聞くし、そもそも俺が年齢なんてどうでも良いだろってタイプだから興味すらなかった。
 でも、少しだけ気になった。ロウタの言葉から、気になった。

「カユ先輩とソラ先輩は二年生《・・・》だぜ」
「……わかった」

 もしかすると、そういう事なのかもしれない。少しだけ、わかった気がした。
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