若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第二十六話 亀裂

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 響き渡る鐘の音。
 この町の中央と四方の防壁に大鐘が設置されているが、今回鳴り響いたのは東壁の大鐘だ。
 中央大鐘ならば時刻を報せるために定期的に鳴り響くが、壁に設置された大鐘にそんな定期はない。それが鳴っているという事は、鐘の側にいる人物が何かしらの理由によって意図的に鳴らしているという事だ。
 東壁。考えられる理由として初めに浮かんだのは……。

「敵襲かっ!?」

 僅かな動揺を孕みつつも、冷静になろうとしているカユの叫びが短く響いた。

「アベルが動いたって事か?」

 東壁からの知らせと聞き、初めに浮かんだのは東にある隣国[アベル]の事だった。
 詳しくは知らないが長らく戦争をしていた敵国。あの日から休戦しているらしいけれど、ついに動き始めたって事か。

「そうとは限らない。隣国との間にはモンスターの巣が複数ある。そこから溢れたモンスターが群れとなって襲撃して来る事は珍しくはない」
「へえ、そうなのか?」

 今まで住んでいた[四方町]ではそんな事なかったけど……あっ、そういえば周辺モンスターを狩りまくるクエストが頻繁にあったな。
 モンスターが防壁に接近するよりも先に、ハンターが対処していたのか。

「ここでは良くある事だ」
「随分と物騒だな。けど、それなら心配する必要はない感じか?」
「無論だ。既に防壁に待機している兵士が討伐に向かっているはずだ」
「生徒会としてはその防衛に参加するのか?」
「いいや、私たちは正規の兵士ではない。そのような義務はないのだが、戦力は多い方が良いだろう。私とカユは防衛戦に参加する」

 そう言って腰に差した剣を一瞥するカユ。

「どうする? 俺も行くか?」
「ふふっ、それは依頼外だろう? ジョンス殿はここに居てくれ」
「追加料金があれば喜んで行くぞ?」
「大丈夫だ。むしろジョンス殿はここに居て欲しい。万が一にも防壁が突破された時に皆を守る力が必要だ」
「その場合にはまずお前を探しに行くと思うぞ?」
「私を? 何故だ?」
「防壁が突破されたとなればその援軍としてこれから向かおうとしているお前が死んでいる可能性が高いからな。依頼者が死んだら誰が俺に金を支払うんだ? タダ働きはごめんだ」
「……なるほど。もしも私が死んでいるとわかったらどうするつもりだ?」
「そりゃ勿論[四方町]に帰る」
「「——っ!?」」

 迷いの欠片もない即答に目を丸くするカユとソラ。

「ジョ、ジョンスさん? そ、それは本当ですか? 冗談ですよね?」
「なんでそんなに動揺してるんだ?」

 どうしてそんな反応をしているのか心底わからない。俺がどんな奴なのかを改めて理解してもらうためにも、そうわかりやすく返したところ、動揺を深くするソラ。

「ソラ。お前がどう思っているかは知らないけど、俺とお前らの縁はただ一つ、金だ」
「——っ……そう、ですか。わかりました」

 目を閉じて俯くソラ。ゆっくりと顔を上げた彼女の瞳に宿るのは冷たい感情。明確な嫌悪だった。

「ジョンス殿、何故貴方はそんなにも——」
「事実だろ? お前に依頼されたからここにいる。依頼されなかったらここにはいない。依頼が取り消しとなれば残る必要はない。[四方町]に戻って前の生活に戻るさ」

 ずっと使っていた宿の部屋はお得意様サービスでそのままにしてくれているらしいし、いつでも元の生活に戻れるからな。
 ……それにカユが死んだ場合、防衛戦について行くソラも死んでいる可能性が高い。
 カユとソラ。二人が生還出来ないほどの戦力が敵側にあるとした場合、俺に何が出来る?
 確かに敵の数を減らす事は出来るだろう。しかし、これは戦闘じゃない、戦争だ。戦争において個の強さなんて所詮と言ってしまえるほどの影響力でしかない。
 無駄死になんてタダ働き以上に最悪だ。

「カユちゃん、もう行きましょう。そんな人に構っている場合ではありません」
「ソラ……仕方がないか」

 先に部屋から出ようとしているソラが振り返りながら声を掛けた。カユは少し困っているように見えた。
 完全に俺のせいだろうな。友情に亀裂が入る瞬間を目の前にすれば困るよな。

「カユ、俺の事なら気にしなくて良いぞ。なんとも思ってない」
「——っ!」

 俺の言葉に目を開き何かを口にしようとするソラ。しかしそれが音になる事はなかった。
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