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第二十七話 布石
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「ジョンス殿、私たちは行く」
「いってら。生きて戻って来いよ」
「ふっ、心配してくれるのか?」
「いやいや、死なれたらせっかくの美味しい任務がパーになるからな」
「ふふっ、そう言うと思ったよ」
何やら楽しそうな反応を返すカユ。彼女の後ろではソラが驚いているような視線をカユへと向けていた。
うん。その反応が正しいと思うぞ。
俺の発言は我ながらクズ野郎だからな。金の切れ目が縁の切れ目……とは少々意味合いが違うような気もするけれど、金の亡者的なところでは似たようなもんだ。
金に取り憑かれた屑男。そう思う事、つまりソラの反応こそが一般的だと思うのだが、カユのそれは明らかに正反対だ。
なんだろう。将来悪い男に騙される気がする。いや、既に俺に騙されているのか? 騙しているつもりなんて欠片もないし、嘘をついてもいないけど。
「ジョンス殿、これは依頼とは関係ないのだが、一つお願いしても良いかい?」
「聞くだけならタダだぞ」
勿論、叶えるかどうかは別の問題だけどな。
「ユニを頼む」
「カユちゃん!」
彼女の言葉に大きな声をあげるソラ。俺みたいな屑男に妹を任せるのは嫌だよな。
「ソラわかって欲しい。ユニならば確実に防衛戦に参加しようとする。普段ならば自主性を尊重するところだが、今の彼女は不安定だ」
「……あっ」
ハッとしたように声を漏らすソラ。
ユニが不安定。確かにそれはあるだろうな。
その理由はついさっきこの部屋であったやり取り。
結局何の目的でカユが戦力を集めているのかは明言《・・》されなかったものの、ユニの中ではグラの仇を取るための仲間を集めている、そういう解釈がされているはずだ。
どういう形で集めた戦力を利用するのかは不明だが、シンプルに考えるならチーム、小隊を編成する事。カユ、ソラ、メイラ、そして俺。個人的な戦闘を行うならば少数精鋭の方が合理的だからな。
ユニもその考えに至り、チームに参加したいと直談判していた。結果は拒否。カユ、そして何よりグラという姉を失った事によって妹を溺愛、過保護になったソラによる強く絶対的な拒絶だった。
ユニの様子を見ればわかる。あれはとても諦めているようには見えなかった。
ソラの強い拒絶を突破するためにユニが取る行動、それは己にも力があるのだと証明する事だ。そんな状態での敵襲だからな。あいつからすれば手柄を得て実力を証明する良い機会だ。
しかし、手柄のために突き進む精神は不安定だ。
普段ならば引くところで進む事を選びやすい、無理な判断を下しやすい、己の実力以上の事を成そうとしやすい。焦りから普段ならばしないようなミスをする可能性が一気に上がる。
戦闘におけるミスは一つだけでも致命傷に繋がりやすい。乱戦となる事の多い防衛戦、戦争ならば尚更だ。
今のユニは、あっさりと死んでしまうかもしれない。
まるで、数多のハンターのように。
「わかった。あいつがああなったのもある意味俺のせいだしな。止めるくらいはしてやんよ」
俺とメイラ。二人の存在によってユニの解釈は発生した。ならば原因の一つと言って十分良いだろう。
「ありがとう、礼を言う」
「いいって、それにお前はそう簡単に死なないだろ?」
カユが死なないならば金は問題ない。あくまで金は最優先事項というだけであって、唯一無二ってわけではない。
俺の夢を叶えるために必要なのは金。それは絶対的だ。金がなければ生活が出来ない、繋ぎ止める事だって出来ない。
次に必要なのはズバリ、女だ。なんせ俺の夢はハーレムを築く事だからな!
溢れんばかりの金があっても、養う相手がいなければ無意味だ。
「夢のためにもユニには生きていて欲しいからな。勿論お前も、それにソラだってな」
「「——っ!」」
目を丸くしている二人。
発言だけを切り取るならば、屑男の実は良い奴かもしれない発言だもんな。ソラの中では好感度が嵐の海くらい暴れていそうだ。
だーけど、その男の夢ってハーレムだぞ? 女性側からすれば複雑だろうな。だからこそそこまでは言わないけど。
ハーレム思考だとバレれば、ある意味今の発言はお前の事を狙ってるぞ宣言になるもんな。
それはまだ早い。もっとこう……深くなってからだな。
「ジョンス殿の夢……それは一体——」
「内緒に決まってるだろ? 夢は夢だから夢なんだ。言葉にして現実と触れさせてしまえば消えてしまう。そういう儚いものなんだ」
それっぽい事を言って誤魔化した後、固まっている二人の横を通り過ぎて部屋を出た。
カユに頼まれた通り、戦いに行こうとするであろうユニを止めに行かないとだな。そのためには彼女の現在位置をする必要があるのだが……知らん。
ただ立ち止まっていても見つける事は出来ない。とりあえず進む事が大切だな。
「いってら。生きて戻って来いよ」
「ふっ、心配してくれるのか?」
「いやいや、死なれたらせっかくの美味しい任務がパーになるからな」
「ふふっ、そう言うと思ったよ」
何やら楽しそうな反応を返すカユ。彼女の後ろではソラが驚いているような視線をカユへと向けていた。
うん。その反応が正しいと思うぞ。
俺の発言は我ながらクズ野郎だからな。金の切れ目が縁の切れ目……とは少々意味合いが違うような気もするけれど、金の亡者的なところでは似たようなもんだ。
金に取り憑かれた屑男。そう思う事、つまりソラの反応こそが一般的だと思うのだが、カユのそれは明らかに正反対だ。
なんだろう。将来悪い男に騙される気がする。いや、既に俺に騙されているのか? 騙しているつもりなんて欠片もないし、嘘をついてもいないけど。
「ジョンス殿、これは依頼とは関係ないのだが、一つお願いしても良いかい?」
「聞くだけならタダだぞ」
勿論、叶えるかどうかは別の問題だけどな。
「ユニを頼む」
「カユちゃん!」
彼女の言葉に大きな声をあげるソラ。俺みたいな屑男に妹を任せるのは嫌だよな。
「ソラわかって欲しい。ユニならば確実に防衛戦に参加しようとする。普段ならば自主性を尊重するところだが、今の彼女は不安定だ」
「……あっ」
ハッとしたように声を漏らすソラ。
ユニが不安定。確かにそれはあるだろうな。
その理由はついさっきこの部屋であったやり取り。
結局何の目的でカユが戦力を集めているのかは明言《・・》されなかったものの、ユニの中ではグラの仇を取るための仲間を集めている、そういう解釈がされているはずだ。
どういう形で集めた戦力を利用するのかは不明だが、シンプルに考えるならチーム、小隊を編成する事。カユ、ソラ、メイラ、そして俺。個人的な戦闘を行うならば少数精鋭の方が合理的だからな。
ユニもその考えに至り、チームに参加したいと直談判していた。結果は拒否。カユ、そして何よりグラという姉を失った事によって妹を溺愛、過保護になったソラによる強く絶対的な拒絶だった。
ユニの様子を見ればわかる。あれはとても諦めているようには見えなかった。
ソラの強い拒絶を突破するためにユニが取る行動、それは己にも力があるのだと証明する事だ。そんな状態での敵襲だからな。あいつからすれば手柄を得て実力を証明する良い機会だ。
しかし、手柄のために突き進む精神は不安定だ。
普段ならば引くところで進む事を選びやすい、無理な判断を下しやすい、己の実力以上の事を成そうとしやすい。焦りから普段ならばしないようなミスをする可能性が一気に上がる。
戦闘におけるミスは一つだけでも致命傷に繋がりやすい。乱戦となる事の多い防衛戦、戦争ならば尚更だ。
今のユニは、あっさりと死んでしまうかもしれない。
まるで、数多のハンターのように。
「わかった。あいつがああなったのもある意味俺のせいだしな。止めるくらいはしてやんよ」
俺とメイラ。二人の存在によってユニの解釈は発生した。ならば原因の一つと言って十分良いだろう。
「ありがとう、礼を言う」
「いいって、それにお前はそう簡単に死なないだろ?」
カユが死なないならば金は問題ない。あくまで金は最優先事項というだけであって、唯一無二ってわけではない。
俺の夢を叶えるために必要なのは金。それは絶対的だ。金がなければ生活が出来ない、繋ぎ止める事だって出来ない。
次に必要なのはズバリ、女だ。なんせ俺の夢はハーレムを築く事だからな!
溢れんばかりの金があっても、養う相手がいなければ無意味だ。
「夢のためにもユニには生きていて欲しいからな。勿論お前も、それにソラだってな」
「「——っ!」」
目を丸くしている二人。
発言だけを切り取るならば、屑男の実は良い奴かもしれない発言だもんな。ソラの中では好感度が嵐の海くらい暴れていそうだ。
だーけど、その男の夢ってハーレムだぞ? 女性側からすれば複雑だろうな。だからこそそこまでは言わないけど。
ハーレム思考だとバレれば、ある意味今の発言はお前の事を狙ってるぞ宣言になるもんな。
それはまだ早い。もっとこう……深くなってからだな。
「ジョンス殿の夢……それは一体——」
「内緒に決まってるだろ? 夢は夢だから夢なんだ。言葉にして現実と触れさせてしまえば消えてしまう。そういう儚いものなんだ」
それっぽい事を言って誤魔化した後、固まっている二人の横を通り過ぎて部屋を出た。
カユに頼まれた通り、戦いに行こうとするであろうユニを止めに行かないとだな。そのためには彼女の現在位置をする必要があるのだが……知らん。
ただ立ち止まっていても見つける事は出来ない。とりあえず進む事が大切だな。
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