若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第三十八話 黒き紅蓮

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 これがあたしの人生の終わり。
 実の姉によって殺される。
 グラお姉様はあたしの事が嫌いだから殺すってわけじゃない。むしろお姉様は逃げろと泣いていた。
 あたしが自ら、死にに行ったようなものだから。
 どうしてお姉様が変わってしまったのかあたしにはわからない。わからないまま終わるのは嫌だけど仕方がないわ。ソラお姉様の事も悲しませちゃうわね。カユさんも泣いてくれるかしら。

 ——後ろにいるあいつも泣くのかしらね。一緒に死ぬわけだから泣かないかな。

 最初は嫌いだった。
 変な奴で、スケベの変態。
 今だって好きってわけじゃない。でも、見殺しになんて出来なかった。死んで欲しくないって心の底から思った。
 今までどれだけ努力しても応えてくれなかった炎があたしの背中を押してくれた。
 あいつが死に掛けているのはあたしのせい。あたしたちを天使の元に連れて行こうとするグラお姉様から守るため。

 あたしのせいで、あいつは死ぬ。
 本当ならついに応えてくれた炎で助けたかったけど、流石はグラお姉様だ。あたしなんかの力なんて全然通じなかった。
 それならせめて、一緒に。
 どこか暗い瞳をしているあいつと一緒に。
 好きじゃないけど……嫌いじゃないわ。
 ジョンス、ありがとう。一緒に逝こう。

 そのはずだった。



「酔い狂え【秘刻血界】」

 目を丸くして固まっていた彼の口が動いた。
 心ここに在らず、そんな様子で呟いた瞬間、それは起きた。
 ジョンスから、いいえ、違う。彼の持っている刀から膨大な量の魔力が放出されていた。

 武器が魔力を放つなんて聞いた事……違う。そういえば昔カユさんから聞いた事がある。名の知れたハンターたちが持つとされる特別な武具。そのものに術式が刻まれていて、使用者の力を増幅させる効力もある特別なもの[宝具《ほうぐ》]。
 ジョンスはハンター。それもカユさんがわざわざ依頼して連れて来た実力者。それなら[宝具]を持っていても不思議じゃないわね。
 ……だけど、それならどうして今まで使わなかったのかしら。
 そんな疑問が脳裏を過ぎたけれど、状況はそれどころではなかった。

(刃の色が変わった?)

 グラお姉様が翼を顕現させた時と同じくらいの魔力を吹き荒らしながら、その中心にある刀に変化があった。
 ジョンスが纏っているロングコートと同じ紅蓮に染まった刀身が、一瞬のうちに漆黒へと変貌していた。

(何、あの剣……怖い)

 見ているだけで心が震えるような、そんな力を宿しているようだった。

「邪魔だ【孤血凱導《こけつがいどう》】」

 上空から降り注ぐ浄化の光線を睨み付け、刀を振るうジョンス。
 瞬間、紅蓮が迸った。

「なっ! 斬った!?」

 グラお姉様の驚く声が聞こえたけど、あたしは言葉を失っていた。
 たったの一振り。それだけであたしたちを死へと導く光線が掻き消されていた。

(あたしの炎とは出力が違い過ぎる。紅蓮に染まった斬撃)

 剣が振るわれるのと同時に漆黒の刃から紅蓮が溢れ出し、まるで刃を延長するように伸びていた。
 既に紅蓮の刃は消え去り漆黒の刃に戻っている中、ジョンスは切先を地面に突き刺した。

「【血越鮮宮《ちえつせんぐう》】」

 切先から紅蓮が溢れ出し、ジョンスはその勢いに乗って高く跳んだ。
 一気にグラお姉様の元まで飛び上がった彼は、再び口にした。

「【孤血凱導】」
「——っ!?」

 再び紅蓮を纏った刃を振るうジョンス。その一撃は動揺して反応が遅れたグラお姉様に届く事はなく、憎むべき翼によって受け止められていた。

「【血越鮮宮】」
「ちょっ!」

 刃が受け止められるのとほぼ同時に彼は次の手を取った。刃に纏わせていた紅蓮を放出する事によってグラお姉様を地面へと叩き付けていた。

「何々いきなりなんなのさ! あの刀[宝具]だったの!? 今まで温存してたって事は何かしらのリスクがあるのかな? ……いや、それよりもあの目。ほとんど別人じゃん」

 別人? 確かにグラお姉様が言う通り今のジョンスは何かが、根本的な何かが違うように感じた。
 あの剣の姿が変わったから? それとも、何かが変わったから剣も変わった?
 わからない。何もわからないけど、嫌な予感がした。
 このままじゃ、あたしの知っている彼が消えてしまう。そんな、根拠のない焦燥感があたきの心を満たしつつあった。

「刀を抜け、お前の力。その全てを叩き潰してやる」

 重力に従って着地した彼は、冷たい目をグラお姉様に向けながら言った。

「それは無ー理。別に舐めプしてるわけじゃないんだよ? あたしってまだまだ天使になったばかりだからさ、ぜーんぜん力のコントロールが出来てないんだよねぇー。ミスって折角頂いた刀を折っちゃったりしたら最悪だからさぁー。ところキミ、その刀はどこで手に入れたのかなぁー? 明らかに普通じゃないよね。[宝具]だとしても明らかに異質だもん」
「こいつは友人から貰ったもんだよ。異質ってのはまあ同感だな。感覚がどんどん研ぎ澄まされていく。こいつでどんな事が出来るのか不思議とわかるんだ。帰ったらあいつに確認した方が良さそうだな」

 普通にグラお姉様と話してる? 別人になったような気がしたけど、あたしの勘違い?

「まあでもそれより先に、お前を殺さないとだな」
「「——っ!?」」

 グラお姉様へと真っ直ぐ走るジョンス。躊躇いも駆け引きも何もない。一切の迷いなく彼は走り出していた。
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