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第三十九話 終わり
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「ちょちょっ、まるで戦闘狂じゃん!」
さっきまで使っていた紅蓮を纏わせる事なく、漆黒の刃のまま何度も振るうジョンス。
翼を出してからはお姉様が一方的に攻撃をしていたのに、今では立場がまるで逆だわ。彼の連撃をお姉様は躱し、翼によって防ぐ。全く反撃が出来ていなかった。
(……わかった! 翼を防御に使ってるから加速に使えないんだわっ)
翼を出したお姉様の一番厄介な点はあの翼を使った高速移動。ただのパンチやキックも凄まじい威力があるみたいだけど、ジョンスが着ているコートの防御性能を超える事は出来ていないみたい。
ジョンスが優勢だわ。きっと誰もがそう思うはずよ。負け筋があるとすれば……あの光線しかない。
「ああもうっ、鬱陶しいよ!」
思いっきりバックステップを繰り返し、距離を取ろうとするお姉様。
光線だ。お姉様もあたしと同じ結論に至ったんだわ。距離を取って光線を放つつもりなんだわ!
「させるかよ」
お姉様のバックステップにピッタリとついて行くジョンス。なんて集中力。反応速度が早過ぎるわ。
悔しいけど、とてもあたしには真似出来ないわね。
「キミ本当に同一人物!?」
だけどそれが出来なかったのはさっきまでジョンスも同じはずだったわ。それが急にこの戦いの中で、いいえ、もっとハッキリとしたきっかけによって急激に成長したんだわ。
目前に迫った死による覚醒。生物としての生存本能だわ。
まるで別人のような強さを手にしたジョンス。お姉様が動揺するのも当然だわ。
そんなグラお姉様に向けてジョンスは再び剣を振う。
「俺は俺だ【孤血凱導】」
ジョンスの斬撃をお姉様が体を逸らしスレスレで避けようとした瞬間、漆黒より紅蓮が溢れ出した。
「お姉様!」
あたしは気が付けば叫んでいた。
お姉様はジョンスの攻撃を見切ってスレスレで躱そうとしていた。その瞬間にジョンスの刃は倍の長さにまで紅蓮によって延長していた。つまり——
「あっぶなーっ! 天使の加護がなかったら確実に死んでたところだったよ」
ジョンスの横薙ぎは確かにお姉様に命中していた。紅蓮によって間合いが伸びていたし、完全に胴体を真っ二つにしているはずだった。
避けた? いや、そんなわけない。実際にお姉様が着ている服は胸元に横一線の切れ目がついていた。
だけど、切れた服の向こう。お姉様の白い肌には一切の傷が付いていなかった。
天使の加護。それがどういう形で現れているのかはわからないけど、お姉様の柔肌が無傷って事はジョンスのコートと同じレベルの防御力があるって事よね。
服の下に着る見えない鎧。我ながら矛盾した言葉だわ。
「ちっ【血越鮮宮】」
距離を取ったお姉様に向かって紅蓮を放出するジョンス。グラお姉様はその攻撃を上空に飛ぶ事で回避していた。
「またそれか、芸がないな」
剣の切先を地面に突き刺し、飛び上がろうとするジョンスに向かって、お姉様は空から声を掛けた。
「うん、アタシは負けを認めるよ。でもユニちゃんたちの事を諦めたわけじゃないからね」
「……どういうつもりだ」
一瞬固まった後、飛ぶのを中断して刀の切先を地面から抜きながら問い掛けるジョンス。
「そのままの意味だよぉー。今ので加護も弱まっちゃったし、正直今のアタシじゃ今のキミに負ける気はしないけど、同じくらい勝てる気もしないからねぇー」
確かにお姉様の言う通りなのかもしれない。
どうやってジョンスの攻撃を防いだのかはわからないけど、互いに決定打がない状況だわ。
「終わらない戦いなんて互いに嫌でしょ? 結末としてはしっくり来ないだろうけど、今回はアタシが妥協してあげる」
「逃げ帰るって事か?」
「あー、生意気ぃムカつくなぁー。だけどまあそういう事になるのかなぁ」
翼をはためかせて滞空しながら、空中でぐったりとするお姉様。
「一ヶ月後に[アベル]は今回以上の戦力で攻め込んで来るよ。その時にまた来るね」
「一ヶ月後……」
「そっ、一ヶ月後。その時に証明してよ。キミがこの国の希望になるってところをね。もしもそれが出来たらその時はー、うん、ユニちゃんたちを連れて行くのは保留してあげるよ」
「保留? 諦めるの間違いじゃないのか?」
「それは無理。大切な妹たちだもん」
「お姉様! それならお姉様が戻って来るって選択肢はないんですかっ!?」
あたしの心からの叫びにグラお姉様は目を見開いた後、寂しそうに微笑んだ。
「ごめんねユニちゃん、アタシはもう戻れない」
「どうしてよ!」
「天使になるって事は人間をやめるって事なんだよ。だからもう人間の生活には戻れないんだよ」
「人間をやめる? そんな風には見えないわよ。わけわからない事言わないで戻って来てよお姉様!」
「……本当にごめんね。アタシはこの国にとっては裏切り者だから。天使として[アベル]に潜入して色々したんだ。だからアタシの事、報告しないでね。この戦いは謎の敵って事にして欲しいな。それが、互いにとって良い選択だから」
裏切り者? アベル? 良い選択?
わからない。わからない。わからない。わからない!
「んー、ジョンスだっけ? ムカつくけど、オマエはわかるよね? だから任せる」
「……」
お姉様の言葉にジョンスは何も言わない。
肯定も、否定もしない。どうして? あたしには何もわからないわ。
さっきまで使っていた紅蓮を纏わせる事なく、漆黒の刃のまま何度も振るうジョンス。
翼を出してからはお姉様が一方的に攻撃をしていたのに、今では立場がまるで逆だわ。彼の連撃をお姉様は躱し、翼によって防ぐ。全く反撃が出来ていなかった。
(……わかった! 翼を防御に使ってるから加速に使えないんだわっ)
翼を出したお姉様の一番厄介な点はあの翼を使った高速移動。ただのパンチやキックも凄まじい威力があるみたいだけど、ジョンスが着ているコートの防御性能を超える事は出来ていないみたい。
ジョンスが優勢だわ。きっと誰もがそう思うはずよ。負け筋があるとすれば……あの光線しかない。
「ああもうっ、鬱陶しいよ!」
思いっきりバックステップを繰り返し、距離を取ろうとするお姉様。
光線だ。お姉様もあたしと同じ結論に至ったんだわ。距離を取って光線を放つつもりなんだわ!
「させるかよ」
お姉様のバックステップにピッタリとついて行くジョンス。なんて集中力。反応速度が早過ぎるわ。
悔しいけど、とてもあたしには真似出来ないわね。
「キミ本当に同一人物!?」
だけどそれが出来なかったのはさっきまでジョンスも同じはずだったわ。それが急にこの戦いの中で、いいえ、もっとハッキリとしたきっかけによって急激に成長したんだわ。
目前に迫った死による覚醒。生物としての生存本能だわ。
まるで別人のような強さを手にしたジョンス。お姉様が動揺するのも当然だわ。
そんなグラお姉様に向けてジョンスは再び剣を振う。
「俺は俺だ【孤血凱導】」
ジョンスの斬撃をお姉様が体を逸らしスレスレで避けようとした瞬間、漆黒より紅蓮が溢れ出した。
「お姉様!」
あたしは気が付けば叫んでいた。
お姉様はジョンスの攻撃を見切ってスレスレで躱そうとしていた。その瞬間にジョンスの刃は倍の長さにまで紅蓮によって延長していた。つまり——
「あっぶなーっ! 天使の加護がなかったら確実に死んでたところだったよ」
ジョンスの横薙ぎは確かにお姉様に命中していた。紅蓮によって間合いが伸びていたし、完全に胴体を真っ二つにしているはずだった。
避けた? いや、そんなわけない。実際にお姉様が着ている服は胸元に横一線の切れ目がついていた。
だけど、切れた服の向こう。お姉様の白い肌には一切の傷が付いていなかった。
天使の加護。それがどういう形で現れているのかはわからないけど、お姉様の柔肌が無傷って事はジョンスのコートと同じレベルの防御力があるって事よね。
服の下に着る見えない鎧。我ながら矛盾した言葉だわ。
「ちっ【血越鮮宮】」
距離を取ったお姉様に向かって紅蓮を放出するジョンス。グラお姉様はその攻撃を上空に飛ぶ事で回避していた。
「またそれか、芸がないな」
剣の切先を地面に突き刺し、飛び上がろうとするジョンスに向かって、お姉様は空から声を掛けた。
「うん、アタシは負けを認めるよ。でもユニちゃんたちの事を諦めたわけじゃないからね」
「……どういうつもりだ」
一瞬固まった後、飛ぶのを中断して刀の切先を地面から抜きながら問い掛けるジョンス。
「そのままの意味だよぉー。今ので加護も弱まっちゃったし、正直今のアタシじゃ今のキミに負ける気はしないけど、同じくらい勝てる気もしないからねぇー」
確かにお姉様の言う通りなのかもしれない。
どうやってジョンスの攻撃を防いだのかはわからないけど、互いに決定打がない状況だわ。
「終わらない戦いなんて互いに嫌でしょ? 結末としてはしっくり来ないだろうけど、今回はアタシが妥協してあげる」
「逃げ帰るって事か?」
「あー、生意気ぃムカつくなぁー。だけどまあそういう事になるのかなぁ」
翼をはためかせて滞空しながら、空中でぐったりとするお姉様。
「一ヶ月後に[アベル]は今回以上の戦力で攻め込んで来るよ。その時にまた来るね」
「一ヶ月後……」
「そっ、一ヶ月後。その時に証明してよ。キミがこの国の希望になるってところをね。もしもそれが出来たらその時はー、うん、ユニちゃんたちを連れて行くのは保留してあげるよ」
「保留? 諦めるの間違いじゃないのか?」
「それは無理。大切な妹たちだもん」
「お姉様! それならお姉様が戻って来るって選択肢はないんですかっ!?」
あたしの心からの叫びにグラお姉様は目を見開いた後、寂しそうに微笑んだ。
「ごめんねユニちゃん、アタシはもう戻れない」
「どうしてよ!」
「天使になるって事は人間をやめるって事なんだよ。だからもう人間の生活には戻れないんだよ」
「人間をやめる? そんな風には見えないわよ。わけわからない事言わないで戻って来てよお姉様!」
「……本当にごめんね。アタシはこの国にとっては裏切り者だから。天使として[アベル]に潜入して色々したんだ。だからアタシの事、報告しないでね。この戦いは謎の敵って事にして欲しいな。それが、互いにとって良い選択だから」
裏切り者? アベル? 良い選択?
わからない。わからない。わからない。わからない!
「んー、ジョンスだっけ? ムカつくけど、オマエはわかるよね? だから任せる」
「……」
お姉様の言葉にジョンスは何も言わない。
肯定も、否定もしない。どうして? あたしには何もわからないわ。
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