若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

文字の大きさ
4 / 45

第二話 東根カユ

しおりを挟む
 フェイとたわいもない話をしながら奢ってもらったジュースを飲みつつ、追加注文したフライドポテトをつまんでいると、近付いてくる人影があった。

「小柄で長い銀髪。少女のような酒豪の少年。貴方が天園《あまぞの》フェイ殿か?」

 そんな台詞と共に現れたのは——美少女だった。

 長く綺麗な黒髪を後頭部の高い部分で一つにまとめた所謂ポニーテールにしている少女。気の強そうな目元をしていて、その表情からは強い自信のようなものを感じた。

 身長は俺よりは低いけど、女性平均よりは確実に高いだろう。
 それに個人的に印象値の大きなポイントとしては……胸がデカい。

 えっ何あれ? 前開きのブラウスをボタンで留めているんだけど、いつボタンが弾け飛んでも不思議じゃないくらい張ってますよ? それサイズ合ってるのか?

 角度によっては隙間から下着が見えそうだけど、俺って布には興味があまりないんだよな。
 求めているのは隠しているものではなく、隠されている柔らかな本体そのものなんだ。

 しかし残念。この美少女の眼中にあるのは俺じゃなくてフェイらしい。ちえっ。

「んー? ボクに用事ー、初対面だよね? という事はもしかしなくてもお仕事の話って事かなー。それならボクより彼に頼んだ方が良いと思うぞよー」

 そう言ってテーブルに突っ伏しながら俺を指差すフェイ。こら人に指を向けるんじゃありません。理由? そんなの知らぬが? どうせよくある諸説あるパターンだと思うね。

「……ほう?」

 視線をフェイから俺へと向ける少女。
 なんとっ、これはまさか俺の好みを察してのナイスパスってやつか!?

 ……いや、単純に働きたくないってだけだろうなー。なんせフェイだし。

「そもそもー、ボクってば二つ名すらない一般通過ハンターだよー。指名される覚えなんてないもーん。だから二つ名持ちのフレンズに任せるのが最適解オーケーの助?」
「なるほど、ならばやはり貴方が[紅蓮の金色]殿だったか」

 ん、やはり? 完全に少女の関心はフェイから俺に移ってるみたいだな。その台詞からして、もしかすると最初から用があったのは俺の方だったのかもしれないな。ただ顔を知らなかっただけで。

 この町のハンターなら俺の顔を知ってるだろうけど、よそ者とかノットハンターなら知らないだろうからな。

「私は東根《あずまね》家が長女、名をカユ。本日は実力者と名高いハンターである[紅蓮の金色]殿の力を借りたく思い来た」
「へぇ、そりゃ指名依頼って事か? 俺も随分と有名になったもんだ」

 基本的に依頼をギルドに出したとしてもそれを受けるハンターが誰になるかはわからない。なんせどの依頼を受けるかはハンター各自の判断になるからな。
 内容次第ではずっと誰も受けてくれなくて放置され続けている依頼もあるくらいだ。

 依頼しても誰も受けてくれない。そうなると依頼者も仲介料を受け取るギルドも困る事になるため、追加報酬を支払う事でギルドが特定のハンターに好条件で受ける事を勧める事があるんだ。

 ちなみにそういう依頼はギルドがお願いしているって事もあり、ギルドが受け取る仲介料の一部もハンターに支払われるため報酬が美味しい事になっている。
 俺としては興味がないわけではないが、ギルドとの信頼関係が重要だからな。受付嬢からの評判が残念な事に悪い俺の元にその手の話が来た事はない。

 ちなみにそういった依頼を受けているのがフェイだ。
 一回の報酬が良いため毎日のように働かずに、昼間から酒浸りになれているって事だな。

 話がズレたけど、今の話はあくまで誰も受けずに残り続ける依頼を消化するためにギルド側が特定のハンターに好条件で頼むという話であって、指名依頼とは別物だ。

 指名依頼とは何か……これ、説明いるのか? そのままなんだけど。
 一応説明するなら依頼者が追加報酬を払う事で受けるハンターを指名するってシステムだな。
 この場合はギルドがハンターに仲介料の一部を支払う必要がなくなるため、ギルド側としても推奨している方法だ。そのため特定のハンターの知名度が上がり易くなるように二つ名ってシステムがあるらしい。

 フェイがそんな仮説を口にしていた気がする。酔っ払いの戯言だとスルーするには結構合理的なんだよな。
 まあ、そんな話はどうでも良いとして。今重要なのは俺の元に報酬マシマシの指名依頼というハンターとしては割と名誉な状況だって事だ。

「依頼内容と報酬次第だけど、お前みたいな美人の依頼なら忖度するぞ」
「……美人?」

 何やら怪訝そうに眉をピクリとさせるカユ。

「どうした?」
「……いや、まさかとは思うが、今、私の事を美人だと、そう言ったのか?」

 えっ、何を言ってるんだ?
 明らかに動揺したように見えた。……まさかこんなにも綺麗な顔をしていて、女性陣が羨むであろう体型をしているというのに。
 そんな事がありえるのか? 自身のポテンシャルを理解していない、だと?

「私が美女……フヒヒッ」

 ……おや?
 気のせいか? なんか今、汚ねえ笑みが見えたような……そんなわけないよなあ!

 これはあれだ。いろんな意味を含めて……話を進めよう。

「えーと、それで? 依頼内容について教えてもらえるか? 依頼書があると早いけど」
「あ、ああ。その前に一つ確認したい事があるのだが良いだろうか?」

 状態異常から復活したカユは、一変して真面目な表情を浮かべて言った。

「ああ、いいぞ」
「貴方は人を斬れるか?」

 腰に差さった刀を一瞥した後、彼女はそう言った。真っ直ぐと俺の目を見つめるカユに、俺はニヤリと笑い掛けた。

「余裕だね」
「……本当か?」
「ああ、勿論。まあ疑う気持ちもわかるけどな」

 ハンターは主に戦う事を生業にしている。中には戦闘を行わずに納品クエストばかりを選ぶやつもいるけど、大抵のハンターは武器を持って戦うもんだ。
 そして大多数のハンターが武器を振るうのは人間にではなく、モンスターにだ。

 俺が知る限りこの世界にある街はその全てが頑丈な壁に囲まれている。
 中央にはその街を象徴する建造物があるのが一般的で、それが城であるパターンも多い。つまりこの世界の街は城壁に守られた城塞都市がほとんどなんだ。

 どうしてそんなにも守りを固めているのか。その理由がモンスターの存在だ。
 モンスターと一括りにしたけど正確にはいろんな種類がいるらしい。根本的に違う種って意味でな。だけど共通して人間を襲う天敵だって事でまとめてモンスターと呼ばれている。
 そんなモンスター共から街の住人を守るための城壁って事だ。

 モンスターが城壁を突破する事は早々ない。だから街の中にさえいれば安全と言えるけど、ずっと引きこもっているわけにはいかない。他の街との交流だったり貿易もあるからな。
 だからモンスターと戦うって事は需要があるんだ。その結果、大抵のハンターはモンスターと戦う事で生活している。

 どうして凶暴なモンスターを狙うのか。
 街の皆が少しでも安全に暮らせるように?
 守りたいという正義感?
 確かにそういう感情理由で動くやつらもある程度いるだろうけど、その本質的な理由は別のところにあるんだ。

 答えは単純。本当にシンプルな理由だ。
 人間と戦いたくない。
 同族である人間を殺したくないという拒否反応なんだ。

 俺から言わせると……本当に——
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~

和田真尚
ファンタジー
 戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。 「これは神隠しか?」  戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎  ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。  家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。  領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。  唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。  敵対勢力は圧倒的な戦力。  果たして苦境を脱する術はあるのか?  かつて、日本から様々なものが異世界転移した。  侍 = 刀一本で無双した。  自衛隊 = 現代兵器で無双した。  日本国 = 国力をあげて無双した。  では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――? 【新九郎の解答】  国を盗って生き残るしかない!(必死) 【ちなみに異世界の人々の感想】  何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!  戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?  これは、その疑問に答える物語。  異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。 ※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...