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第七話 隣国アベル
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「金色の鞘に紅蓮の刀身。なるほど、確かに[紅蓮の金色]に相応しい剣だ」
カユは首を横に振った後そんな感想を口にした。
彼女はわざわざ俺を指名して今回の依頼を出した。貴族の娘だってのに使いを出すのではなく、己の足で迎えに来た。それに、俺の事を噂通りだとか、そんな事を言っていた覚えが確かにある。
だから知らないわけがないんだ。
俺の二つ名の由来を、カユが知らないわけがない。それに、そんな勘違いをするわけがないんだ。なんせ、こいつの事はついさっき話したばかりだからな。
カユの意図は話を逸らす事。今目の前で起きた光景を御者の脳裏から遠ざける事だ。
ならそれに——乗っかるわけがない。
「カユ、そんな気遣いはいらないぞ」
「——っ」
「周りからどう思われようと俺には関係ない。その男が俺を恐れようとどうでも良い事だ」
「……ジョンス殿」
「俺はハンターだ。ハンターの仕事は敵を殺す事、そうだろ? 俺には俺のやり方がある、それをお前らにどうこう言われる筋合いはない」
確かに俺のやり方は残酷なのかもしれない。だけど見栄えのためにリスクを背負うなんて馬鹿らしい。
俺はおとぎ話に出て来るような王子様でも、勇者でも、英雄でもない。ただのハンターなんだ。
生きる為に敵を殺し、糧とする。それがハンターなんだから。
「別にお前を殺すつもりなんてない。俺が殺すのは敵《・》だけだ」
それを明確な言葉にするのと同時に手加減した殺気を放つと、ガクガクと震えを激しくする御者の男。
これは忠告、いや脅しだ。
仕事の邪魔をするなら敵だ。そして敵になるなら人間であるお前でも殺すという。そんな意味を正しく理解したんだろうな。青い顔をして壊れた玩具のように何度も頷く男。
「ジョンス殿……」
「俺からすればお前らの価値観こそ理解出来ないけどな」
「……どういう意味だ?」
「俺たち人間もモンスターも同じ命だ。同種でも殺し合うのが生物だ。なんで躊躇する? 命は全て平等だろ?」
今回の敵が獣人型ではなく、ただの獣型ならきっと御者はそこまでの反応をしていない。
二足歩行している獣人型、そう、獣人型と呼び人に似ているとされているからこそ、そういう反応をしているんだ。
勝手に脳内で獣人型を人間に置き換えてイメージしたとか、そんなところだろう。
同じ命。どこに差異があるって言うんだ。
人間とモンスター。どこに違うっていうんだ。
道中でちょっとした問題はあったものの、無事に[東方町]に到着した。
「で、では失礼します!」
まるで逃げるように立ち去る御者。なんだ? そんなに俺が怖いのか? あの男にとって俺はモンスターと同じなんだろうな。
まあ、必要なら人間だろうと容赦しないし、ある意味化け物なのか? 俺としてはあくまでも一般的な価値観ってやつだけどな。
目的地に向かいながら町の様子を見ていると、ふと気が付いた事があった。
「四方町と比べると随分と鎧姿が多いな」
向こうじゃ町中で鎧を着ているのなんてハンターくらいで、それも軽鎧がほとんどだ。
「ふふっ、それは当然だ。重鎧などモンスターの前には無力に等しい。しかし、対人となれば話は別だからな」
ここ[東方町]は五つの町からなるこの壁国の領土内で、最東にある町だって事は既にわかってくれていると思うが、それはつまりこの町から東にある壁町は別の国に所属しているって事になる。
「隣国とは現在膠着状態が続いているが、いつ戦争が再開してもおかしくはない」
「戦争?」
「知らなかったのか? この町から更に東にある壁国[アベル]とは長い間戦争をしていたのだ。先も言った通り今は静かなものだがな」
「へえ、そりゃ知らなかった」
この町だって所属国は四方町と同じだ。それなのにその情報が四方町までこないなんて妙というか、同国としておかしくないか?
中央に余計な心配をかけて混乱が起きないようにしているとか、そういう事か? だめだ。そういう話はパスだな。
「あの日から戦争なんてしている場合ではないからな」
「ん? ……ああ、噂になってるあれか」
あの日、それは変革の日、運命の日だとか、様々な呼ばれ方がしている特別な日。
世界の在り方が大きく変わった日とされているけど、正直何が変わったのか俺は知らない。
何やら騒ぐ奴らもいたけど、興味なんてさらさらなかったからな。
それに俺のハンターとしての日常が変わる事はなかった。
「なんだっけか? 確か、天使が降りて来たんだっけか?」
「……そうだ。浮遊帝国と名乗る者たちが各地に現れ、数多の壁国を支配していると聞く。とはいえ[四方]と[アベル]には現れなかったがな」
「えっ、そうなのか?」
「ああ、でなければ私も貴方もこうして今まで通りの生活は出来ていないだろう」
「へえー」
「ふふっ、興味ないか?」
「ないな」
浮遊帝国? 天使? 興味ないね。
「男たちは皆天使に夢中だというのに珍しい」
「ん? そりゃどういう意味だ?」
天使に夢中ってどういう事だ? わざわざ男って言ってるあたり……超強い戦士とか? いや、それなら男って限定する必要ないか。
……まさか、そういう事?
天使って、女なのか? それもドスケベな女って事? それなら男が夢中ってのも納得だ。
エロい女に弱い。それが男って生き物だからな。
「天使にはどこに行けば会える? って、この国には来てないんだっけか」
「……気になるならば[天使教]に入ると良い」
「[天使教]? 名前からして天使のファンクラブか何かか?」
「ふぁんくらぶ? というのは知らないが、天使たちを救済の女神として信仰する集団だ」
今、言ったね? 女神か……やはり天使は女なのか。
それにしても、救済の女神っては随分と壮大だな。それだけの存在感があるって事か。
全く気にならないと言えば嘘になるが……うん、面倒事の匂いが凄い。
「俺、無信仰なんでそういうのは遠慮しとくわ」
「……ふふっ、そうか」
ん? なんか嬉しそう? 気のせいか?
「さて、着いたぞ。ここが一年間貴方が通う事になる場所——」
「——[法威学院《ほういがくいん》]だ」
カユは首を横に振った後そんな感想を口にした。
彼女はわざわざ俺を指名して今回の依頼を出した。貴族の娘だってのに使いを出すのではなく、己の足で迎えに来た。それに、俺の事を噂通りだとか、そんな事を言っていた覚えが確かにある。
だから知らないわけがないんだ。
俺の二つ名の由来を、カユが知らないわけがない。それに、そんな勘違いをするわけがないんだ。なんせ、こいつの事はついさっき話したばかりだからな。
カユの意図は話を逸らす事。今目の前で起きた光景を御者の脳裏から遠ざける事だ。
ならそれに——乗っかるわけがない。
「カユ、そんな気遣いはいらないぞ」
「——っ」
「周りからどう思われようと俺には関係ない。その男が俺を恐れようとどうでも良い事だ」
「……ジョンス殿」
「俺はハンターだ。ハンターの仕事は敵を殺す事、そうだろ? 俺には俺のやり方がある、それをお前らにどうこう言われる筋合いはない」
確かに俺のやり方は残酷なのかもしれない。だけど見栄えのためにリスクを背負うなんて馬鹿らしい。
俺はおとぎ話に出て来るような王子様でも、勇者でも、英雄でもない。ただのハンターなんだ。
生きる為に敵を殺し、糧とする。それがハンターなんだから。
「別にお前を殺すつもりなんてない。俺が殺すのは敵《・》だけだ」
それを明確な言葉にするのと同時に手加減した殺気を放つと、ガクガクと震えを激しくする御者の男。
これは忠告、いや脅しだ。
仕事の邪魔をするなら敵だ。そして敵になるなら人間であるお前でも殺すという。そんな意味を正しく理解したんだろうな。青い顔をして壊れた玩具のように何度も頷く男。
「ジョンス殿……」
「俺からすればお前らの価値観こそ理解出来ないけどな」
「……どういう意味だ?」
「俺たち人間もモンスターも同じ命だ。同種でも殺し合うのが生物だ。なんで躊躇する? 命は全て平等だろ?」
今回の敵が獣人型ではなく、ただの獣型ならきっと御者はそこまでの反応をしていない。
二足歩行している獣人型、そう、獣人型と呼び人に似ているとされているからこそ、そういう反応をしているんだ。
勝手に脳内で獣人型を人間に置き換えてイメージしたとか、そんなところだろう。
同じ命。どこに差異があるって言うんだ。
人間とモンスター。どこに違うっていうんだ。
道中でちょっとした問題はあったものの、無事に[東方町]に到着した。
「で、では失礼します!」
まるで逃げるように立ち去る御者。なんだ? そんなに俺が怖いのか? あの男にとって俺はモンスターと同じなんだろうな。
まあ、必要なら人間だろうと容赦しないし、ある意味化け物なのか? 俺としてはあくまでも一般的な価値観ってやつだけどな。
目的地に向かいながら町の様子を見ていると、ふと気が付いた事があった。
「四方町と比べると随分と鎧姿が多いな」
向こうじゃ町中で鎧を着ているのなんてハンターくらいで、それも軽鎧がほとんどだ。
「ふふっ、それは当然だ。重鎧などモンスターの前には無力に等しい。しかし、対人となれば話は別だからな」
ここ[東方町]は五つの町からなるこの壁国の領土内で、最東にある町だって事は既にわかってくれていると思うが、それはつまりこの町から東にある壁町は別の国に所属しているって事になる。
「隣国とは現在膠着状態が続いているが、いつ戦争が再開してもおかしくはない」
「戦争?」
「知らなかったのか? この町から更に東にある壁国[アベル]とは長い間戦争をしていたのだ。先も言った通り今は静かなものだがな」
「へえ、そりゃ知らなかった」
この町だって所属国は四方町と同じだ。それなのにその情報が四方町までこないなんて妙というか、同国としておかしくないか?
中央に余計な心配をかけて混乱が起きないようにしているとか、そういう事か? だめだ。そういう話はパスだな。
「あの日から戦争なんてしている場合ではないからな」
「ん? ……ああ、噂になってるあれか」
あの日、それは変革の日、運命の日だとか、様々な呼ばれ方がしている特別な日。
世界の在り方が大きく変わった日とされているけど、正直何が変わったのか俺は知らない。
何やら騒ぐ奴らもいたけど、興味なんてさらさらなかったからな。
それに俺のハンターとしての日常が変わる事はなかった。
「なんだっけか? 確か、天使が降りて来たんだっけか?」
「……そうだ。浮遊帝国と名乗る者たちが各地に現れ、数多の壁国を支配していると聞く。とはいえ[四方]と[アベル]には現れなかったがな」
「えっ、そうなのか?」
「ああ、でなければ私も貴方もこうして今まで通りの生活は出来ていないだろう」
「へえー」
「ふふっ、興味ないか?」
「ないな」
浮遊帝国? 天使? 興味ないね。
「男たちは皆天使に夢中だというのに珍しい」
「ん? そりゃどういう意味だ?」
天使に夢中ってどういう事だ? わざわざ男って言ってるあたり……超強い戦士とか? いや、それなら男って限定する必要ないか。
……まさか、そういう事?
天使って、女なのか? それもドスケベな女って事? それなら男が夢中ってのも納得だ。
エロい女に弱い。それが男って生き物だからな。
「天使にはどこに行けば会える? って、この国には来てないんだっけか」
「……気になるならば[天使教]に入ると良い」
「[天使教]? 名前からして天使のファンクラブか何かか?」
「ふぁんくらぶ? というのは知らないが、天使たちを救済の女神として信仰する集団だ」
今、言ったね? 女神か……やはり天使は女なのか。
それにしても、救済の女神っては随分と壮大だな。それだけの存在感があるって事か。
全く気にならないと言えば嘘になるが……うん、面倒事の匂いが凄い。
「俺、無信仰なんでそういうのは遠慮しとくわ」
「……ふふっ、そうか」
ん? なんか嬉しそう? 気のせいか?
「さて、着いたぞ。ここが一年間貴方が通う事になる場所——」
「——[法威学院《ほういがくいん》]だ」
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