若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第十話 西塔ソラ

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「ソラはカユと同じ生徒会の仲間なんだろ? あいつがどんな意図で俺をここに連れて来たのか知らないか? 予測でもいいけど」
「さあ? わたしからはわからないとしか言えないですね」

 そう言って手を口元に当て、クスクスと笑うソラ。

「何が面白いんだ?」
「ああ、ごめんなさい。つい」

 ついってなんだよ、ついって。
 声にはしなかったけど、そんな俺の不満が伝わったのか、片目を閉じながら小さく謝罪の仕草をした。

「こういう事はあまり言いたくないんですけど、ジョンスさんのこれからの学校生活のためにわかっておいて欲しい事があるんです」
「校則なら確認したぞ」
「えーとですね、校則外と言いますか、環境と言いますか」

 そう言いながら困ったように立てた指を顎に添えた。

「そのですね、私たち生徒会はこの学院に通う生徒たちの代表なんです」
「そうだろうな。選ばれし者ってこった」
「それはちょっと大袈裟過ぎる気もするんですけど、つまり生徒会は皆から注目されているんです。さらに生徒会長となると注目度は本当に凄いんです」

 それはこの身で体験したな。カユと一緒に歩いている時、めっちゃ視線を感じたし、ザワザワしているのが丸分かりだったからな。
 ……うん、話の流れでソラの言いたい事がわかった。

「つまりカユに近付くなって事だな」
「ちちち、違いますよ! そういう意味じゃありません!」

 両手を振ってあからさまに動揺するソラ。
 なんだ、違うのか。てっきりハンター如きがうちの生徒会長に馴れ馴れしく近付くんじゃねえよボケカスって事だと思ったのに。

「わかりました! 素直にわかりやすく言いますね! 生徒会は人気者なんです! カユちゃんはそんな生徒会のトップであり、尚且つあの容姿ですよ!? 誰もが認める美少女なのでとてつもない人気があるんです!」
「そ、そうか」

 両手を胸の前でギュッと握り締め、何やら熱弁するソラ。
 えーと、キャラ崩壊大丈夫か? 落ち着いたお姉さんなのかと思ったら……えーと、なんていうんだったっけ……厄介オタク君?

「カユちゃんは本当に大大大の人気者で、非公式ですけどこの通りファンクラブまであるほどなんですよ!」

 そう言って一枚のカードを取り出して来た。
 えっ、会員ナンバーが一桁なんだけど、説得力……いや、こいつがガチのファンって事じゃん。

 えーと、どちらにせよ会長のファンクラブが実在し、副会長がそのメンバーとか……なんかこう、色々とアレだな。やばいな。軽く恐怖を感じた。

「わかったわかった、とりあえず落ち着け」
「いいえまだ足りません! あの美しさを持ちながらも、剣を振るうその姿のカッコ良さはまさに王子様! 本当にカユちゃんは完璧美少女なんです!」

 凄く……早口です。
 カユは女だし、王子というより姫だよな。剣を振るう姫、姫騎士って事か。確かに人気がありそうだ。

「……えーと、それで俺にどうしろって言うんだ?」
「あっ、ごめんなさい。わたしが言いたいのはつまり、あまりカユちゃんと親そうにしない方が良いって事ですよ」
「ファンクラブからの牽制って事か?」
「そ、そうですけど違います! 牽制とかではなく、恥ずかしい話ですけどファンクラブには過激派がいるんです!」

 過激派、ね、あー、なんとなく理解。
 つまり厄介オタクを極めし者たちの派閥って事だな。アイドルは男と遊ぶな処女アピールせよってやつだな。

 ……うん。わかる!
 別に本当にそうかどうかはどうでも……よくはないけど良いとして、そういうアピールというか希望が欲しいんだ。

「カユちゃんは中等部の頃から人気でしたけど、血に染まる争いが起きないように不可侵条約が結ばれるほどなんですよ! つまり均衡を崩すと危ないですよ!」

 色欲に染まった男たちが互いに牽制する事によって安定していたけど、俺の存在はバランスを崩壊しかねないって事か。

 ——ハッ。

「それなら無問題だな。別にカユと親しいわけじゃないし、所詮はクライアントとハンターの関係だぞ。こっちから接触する気なんて欠片もねえし、大丈夫だろ」

 個人的にはカユって可愛いし、将来の夢、いや夢だなんて触れらない幻想で終わらせる気なんて更々ないけど、お近付きしたいと思っているけど……今はないな。

 カユは現在依頼人だからな。そんなカユとそういう関係になるってのは流石にダメだろ。プロのハンターとして、超えちゃいけない一線があるんだ。
 と、いう事で。
 今俺が狙っているのはカユよりも、ソラだな。

 えっ、確実に歳上だぞって? ハッ! 年齢なんざどうでも良いな! 重要なのは好みか、そうじゃないかだ!

「あ、あれ? カユちゃんに依頼されて来たんですよね?」
「ああ、そうだぞ。けど、依頼達成に必要な事は伝えられてるからな」

 一年間ここに通う。それが依頼達成条件だからな。わざわざカユと接触する必要なんてないもんな。……まあ、第二項目が気になると言えば気になるけど、最悪キャンセルすれば良いだけの話だ。

「そう、なんですか……」
「だから問題はないぞ。——という事でカユの事は置いといてソラの事が知りたいな」
「わたしの事ですか?」

 キョトンとした顔をして傾げるソラ。

「ハンターは脳筋上等な環境だからな。女受けは良いけど、こっちとしては出会いが少ないんだよ。だからソラみたいな美人と仲良くしたいなって」
「——っ!? お、お断りします!」

 顔を真っ赤にして叫ぶソラ。
 ふむ、俺は童貞だけど、それでもハンターという一種の社会人経験が長いから察したぞ。
 ソラは生娘だ、と。じゃなきゃこのピュアさはありえないよな!

「えー、仲良くしようよ、せっかく知り合ったわけだしさ」
「それとこれは関係ありません!」
「一つ質問良いか?」
「へ? ど、どうぞ?」

 突然の切り返しに困惑しているご様子のソラちゃん様。
 うっへーい、高都合ぅー。

「男女の友情はありえないと思うか?」

 人類が過去から現在、もはや未來まで永劫の疑問だろうと思われる議題を両手で丁寧にギュッと握り締め、天高く足を上げて振りかぶってみた。

「えーと、どうなんでしょうか……」
「おっ、否定しないんだな」
「そう、ですね。否定するつもりはありませんね」
「なあこれからは友達だな。よろしく」
「へ? よ、よろしくお願いします?」

 さりげなく手を差し出すと、困惑顔のまま握り返してくれるソラ。ふふっ、作戦通り。これでさっきの仲良くしない発言はキャンセルされたな。

 だが、ちょっとチョロ過ぎて今後が心配になるレベルじゃないか? 責任を持って保護せねば!
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