若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第十三話 西塔ユニ

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 学院生活一日目は予想外の事が起こり続け、ため息の多い日になったな。
 二日目となる今日はどうなるだろうか。
 ……正直不安しかない。

「よっこいしょっと」

 我ながら年寄りくさい台詞が出たけど、そんな細けえ事は気にする事なく、憂鬱な思いも丸めてどこぞに放り投げ、玄関前に積み重なった山を乗り越えると学校へと向かった。

 何も気にする事なく学校に向かったと言ったが、男子寮も学校の敷地内なわけで、既に学校内なのに学校に行くってのはおかしいのでは? とか、そんなくだらなくも思考遊び的には有意義なのかわからない、ただ一つわかるとすれば……俺、疲れてるなー。

 身体が疲れている時って無駄に頭の回転だけが早くなるというか、無駄に思考速度がぐるんぐるんと制御不能になるのだが……俺だけ?
 共感してくれる奴がいたら嬉しいなーとかは別に思わんけど、そんな事を考えているうちに学校に……そう、校舎に到着した。

 俺は今日も私服のまま登校だ。
 えっ、視線? そりゃー集まっていますとも、数多の女子生徒から誰あいつみたいな視線がグサグサと深く突き刺さっておりますとも。
 別に何も思わないけどな!

 己が配属された教室に到着し、引き戸タイプの入り口君を開けて一歩。
 クラスメイトたちの視線が突き刺さる。
 二日目。自己紹介を終わらせているはずなんだが……なんで?
 やや目元が険しくなっている自覚はあるけど、それ以外は平静を装って自身の席へと向かった。
 今日からは通常授業が始まると聞いている。……実のところ、ちょこっと楽しみだったりするんだ。

 なんせ目覚めてからずっと戦う日々が長かったからな。朧気な記憶に浸りたいと、そう思う事も遠い過去にしか感じないけど、確かにあったからな。

 ……とか、思っていたら今となった。
 これ、どういう状況?

「昨晩の件について確認したい事があるわ。同行してもらうわよ」

 やけに殺意を向けて来る女子生徒がそこにいた。

「誰だお前」

 そんな誰もが思うであろう常識人寄りの返しをしたところ、殺気を更に高めて己の左腕を、正確に言うなら二の腕を指差す女子生徒。

「は?」

 女子生徒の反応にそんな返しをしつつも、一体彼女がなんなのか、その正体におおよその見当がついた。
 彼女が指差したところにあるのは腕章だ。そこに書かれているのは漢字が二文字。
 それはズバリ、[風紀]だ。

(絶対面倒な奴だ。だから周囲のこれなのか)

 クラスメイトの女子たちから集まる意味深な眼差し。そこに込められた感情はいまいちわからないけど、多分……そういう事だよな。
 風紀の二文字から容易く連想出来る事、風紀委員会。

 ……うむ、この時点で結構な……結構だよな。
 しかも、そこに武力肯定の学校って情報を加えると更に結構度が上がるというか、爆上がりするんだよなー。
 戦闘能力を競う場所。その治安を維持する組織となれば当然、強いはずだ。

 ここで改めて彼女について語るとしようか。
 語ると言っても内面は今のところ全くわからないに等しい状況だし、それは今後の追加情報を期待してもらうって事で当然のスルー。
 となれば献上出来るデータは外面しかないってわけだ。

 髪の色は深く燃えるような紅色。それを二つに分けて結んだ所謂ツインテールってやつだ。
 身長は当然と言うとどこかからか怒られそうだけど、男である俺より低く、同性で比較対象にしやすい例を用いるなら、カユとソラよりも小柄だ。
 ちなみにどことは明確に言わないものの、母性の象徴たる部分も同じくだ。いやいや、別に小さいのが悪いとは言わないぞ? それもそれでステータスだという文化がある事も知っているし、むしろそういう派閥からすると彼女のそれは大きいと思うんだ。
 決して小さくはない。ただ、カユとソラが大きいのだよ。……って事。

 外見についてはこれくらいで良いかな。どうせ何かしらの補足というか、今後のあれでわかるだろうし。今はこれで。

「なんとなくは理解したけど、俺は昨日ここに来たばかりでな、そういう暗黙のなんちゃらは知らないんだ。という事で自己紹介してくれるか?」
「……いいわ。あたしは西塔ユニ。風紀委員会所属の一年生よ」

 一瞬不愉快そうにムスッとした表情を見せるものの、すぐに目を閉じて感情を隠したユニ。
 それにしても、随分と気になる事を言わなかったか?

「西塔? もしかしてソラの妹か親戚か?」

 苗字が同じ西塔ならその可能性は大いにある。それに顔付きも似てるような気がするしな。高確率で血縁者なんじゃないか?
 そう思ってのごく普通で自然な質問だったのだが……なんだ? 明らかに周囲の空気が変わった。
 例えるならそう、あっあいつやったな、みたいな。そう、暗黙の禁句を口にしてしまったかのような……。

「気安くお姉様の名前を口にするんじゃないわよ!」

 あっ、全てを理解。はい、実にわかりやすいですね。こいつ、ソラ大好きっ子だ。それも結構なレベルのシスコンなんだ。
 こういう感情の起伏がヤバい奴の相手は真っ向からしちゃいけない、と思うのだけど、こちとら一種の興奮状態でな。
 つまり、真っ向入りまーす。

「断る。それをお前にとやかく言われる筋合いはない。妹だか従姉妹だか知らんけど、俺とソラの関係性は俺たちだけで完結してんだ」
「な、なんですってっ!?」

 わかりやすいくらい顔を赤く染め上げて怒気を放つユニ。こりゃ拗らせてますわ。

「家族だとしても友好関係に口出しするのはダメだろ。常識的に考えてさ」
「な、何よ偉そうに!」
「別に偉ぶっちゃいねえよ。ただの正論パンチだ」
「うっ」

 おや、怯んだのか? 完全に思考回路がバツになっていると思っていたけど、意外と冷静な部分が残っていたのか?

「ぐぬぬ……」

 おっ、まさかリアルでそれを聞くとは。ソラもそうだったけど西塔家って電波系とは言わないけど、そういう傾向にある一族なのか? これが血の定めか。

「少しは落ち着いたか?」
「むうー」
「はぁー。それよりも本題に戻ってくれるか? 風紀委員殿」

 やや涙目になって頬を膨らませている姿は結構可愛い。暫定姉であるソラは美人系だったけど、ユニは幼さも相まって可愛い系だな。数年経ったらソラみたいに成長するかもしれないけどさ。
 美しい姉と可愛い妹。これもまた血の定めか。
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