若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

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第十四話 実力

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「そ、そうよ! あんたには確認したい事があるのよ!」

 ハッと目を見開き、水を得た魚のように指差して来るユニ。
 ので、その指をギュッと握った。

「人を指差すのはダメらしいぞ。理由は知らんが」
「なっ、放しなさいよ!」

 さっきとは別の感情方向で赤面し、腕を振り払うユニ。

「そんなに慌てなくても折ったりしないって」
「——折っ!?」

 俺に握られた指を守るかのように握って隠された。だから折らないってば。男なら容赦無くやってたけど。
 十本あるわけだし、一本くらい良いだろう? それが無礼の対価だ。

「や、やっぱりあんたは危険だわ! 風紀委員権限で拘束するわ!」

 そう言ってバックステップをし、左右から抜刀するユニ。
 腰の左右に差してある鞘から引き抜かれる二本の剣。どうやらユニは二刀流の剣士らしい。
 本来二刀流ってのは格好良さばかりで実用性は低いのだが、ユニが握る二本の両刃剣は片手でも扱い易いように調整されているように見えた。

 刀身は一般的な剣よりも短く、柄も同じくだ。両手で握るようには出来ていないな。
 一撃一撃の威力よりも、手数重視の双剣だ。

「はぁー、本当にここの生徒は物騒だな。こちとら編入二日目だぞ。まっ、昨日と比べたら随分と楽だけどな」
「——っ! やっぱりあんたの仕業だったのね!」

 目を見開いた直後、ユニは真剣な戦士の顔となると床を強く蹴り跳び出した。

「はっ!」

 簡潔な掛け声と共に速力のある斬撃を放つユニ。

「あー、やっぱりその話だったか」

 白刃を生身で防ぐ事なんて人間には無理って事で刀を抜いたけど鞘ごとだ。紅蓮の刃をお披露目する事なく金色のまま受け止めた。
 斬撃を受け止めたものの迫り合いに発展する事なく、ユニはすぐに刃を引き戻すと反対の刃を振るった。

 両手の剣を高い回転率で交互に振るい続けるユニ。結構な運動量だと思うけど息遣いは一切乱れていない。中々の体力だ。

 力を力で鎮圧する風紀委員の実力に感心しながらも、俺は意識を周囲に向けた。正確には教室内にいる奴らにだな。
 戦闘が発生しているため距離を取っているものの、クラスメイトたちは逃げる事なく観戦をしていた。それについてはそこまで驚かない。ユニの感じからして結構学院内バトルが起きている気がしたからな。戦いを見る事もまた特訓だ。

 異様なのは観戦する者たちの性別だ。
 俺はそうなるだろうと知っていたから気にしていなかったけど、教室内外共に、女子生徒ばかりなんだ。
 確かにここに来てから女子生徒としか話した事がないけど、こうして俺が在籍しているように女子校ってわけでなければ、男女比が極端に偏っているわけでもない。

 昨日の自己紹介の時に見回した限り、このクラスの男女比は同じくらいだった。となれば他のクラスも同じだろう。
 にもかかわらず、男が少ない、異様に。
 男は肝っ玉が小さいから逃げた? 違う。そうじゃない。むしろ逆と言っても良いかもしれない。
 本日校舎まで登校している男子生徒の数が異様に少ないんだ。それは何故か? そりゃ今頃全員寝てるだろうからな。

 昨日の夜から今までぐっすりと、な。

「答えなさい! 昨夜何をしたのよ! さっきの言い振り、何か知ってるんでしょ!?」
「あー、知ってる知ってる。答えるから取り敢えず止まってくれないか?」
「お断りよ!」

 いや、何でだよ。
 とりあえずしばいてからお話とか、物騒が過ぎる。これが風紀委員会のやり方なのか!

「今朝になって突然多くの男子生徒が登校しなくなったわ! あんたがやって来た次の日からなのよ! 無関係であるはずがないわ! 白状しなさい!」
「だから言うって言ってるだろー」

 一体何なんだこの暴走娘は。
 騒いでるやつがいると逆に落ち着くという謎現象があるけど、まさにそれだな。あまりにも暴走しているユニと対峙しているため、俺の心は凪の如くだ。
 むしろ冷静を通り過ぎて呆れているまである。
 あれ……騒いでるとかじゃなくて、怖がってるだったっけか?

「オスどもが来ない理由について知ってるぞ。言い方によれば確かに俺がやった事だが、これだけははっきりと言える。俺は悪くない」
「自白したわね! その上で言い逃れようだなんて、なんて図々しいのよ!」

 攻撃を止める様子が欠片もないため、防御を続けながら話したところ、火に油を注いだらしい。回転率が上がった。
 驚いた。配慮かどうかはわからないけど、まだ全力じゃなかったのか。

「仕方ないだろー。襲って来たのは向こうなんだからさー」
「出鱈目言うんじゃないわよ!」
「本当だってー」
「なんでそんな事になるのよ!」

 ユニの疑問もごもっともだ。
 初日である昨日。その夜に俺は襲撃を受けたんだ。大勢の男子生徒にな。何も知らないユニからすればわけわからないよな。
 けど、原因はお前の身内だからな?

「生徒会のアイドル二人に部屋まで案内して貰ったからな。随分と優しいお姉ちゃんだな」
「お姉様が優しい事は知ってるけど一体……——っそういう事!? あんたお姉様に何をしたのよ!」

 顔を真っ赤にして一撃一撃の威力を高めるユニ。

「いや、ナニもしてないっての! ただ部屋まで案内してもらっただけだ! それを見てた奴らが勝手にNTRは許さねえとかほざいて襲って来ただけだっての!」

 そもそもあの二人は元々お前らのものじゃねえだろってな! 将来のハーレムメンバー筆頭候補たちだぞ! むしろそっちが俺からNTRすな!

「この変態狼!」
「ああ、もう!」

 こうなったら仕方がない。やりたくはなかったけど、このままじゃ止まらないと言うのならば、抜くしかねえよな!
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