雨と五線譜

ぱり

文字の大きさ
14 / 16

翠雨(晴れた空で)

しおりを挟む
目が覚めると自分が何かを口ずさんでいたことに気づく。
しかしもう何を歌っていたのかは分からなくなってしまった。
いつも目が覚めると夢の大体はわすれてしまうのだ。

俺は体を起こす。なぜだかその時、俺は大きな安心感と深い深い、喪失感がただあった。

体の上に本を乗っけて寝ていたようで、起きた勢いで本がバサリと落ちる。読みながら寝てしまったのだろう。

ふと携帯で時間を確認しようとすると、メールが一件届いていた。
知らない番号からだった。
開けてみると、結構長文だった。
「私も本当に、楽しかったです!すぐるさんといるとポカポカしたりウキウキしたりなんだか時間があっという間に過ぎる感じがします。一緒に飲んだミルクティーも、熱かったけど美味しかったですね!いつか私もあんな美味しいミルクティーを作れるように練習したいです。また、会いたいです。
オススメの本今度教え合いっこしましょう!」
誰だか分からないが俺の名前を知ってるし、俺がミルクティーを好きなことも知っているっぽい。えー?でも誰だろ…

ふと窓の外を見るとキラキラと日差しが眩しかった。
何か大きな変化があるような…
それに気づく前に朝の忙しさで忘れてしまう。
テレビの中では長い梅雨が明けたことを告げていた。


俺はきつねにつままれているのだろうか…
今日が休みになってしまったのでぶらぶらと散歩する。くそー、昔もこんなことなかったっけ。
このまま歩いて街にでも行こうかなーと考えていると道の端に空色のシャツを着た青年が立っていた。ただ立っているだけなのに存在感がある。なかなかの美青年だな…と思いながら通り過ぎようとすると「あっ、ねぇ」と声をかけられた。
「えっな、なに」
「お兄さん、今暇?よかったら一緒に本屋にでも行かない?」
…生まれて初めて男にナンパされたんだが…いや女性にもナンパされたことないけど。
「どうせ暇でしょ」
「心外だな」初対面なのに
「オススメの本教えてよ。ほら、あーえっと…なんだっけ…」
青年はうーんと首を捻ってからぽんと手を打った。
「そうだ!ペンギン!ペンギンの出てくる本!ある?」
思い当たる本が一冊だけあった。あれは名作だよな。本屋にあるといいけど。
「まぁ、いいや。教えてあげる」
2人は青々とした空の下ゆっくりと歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

処理中です...