顔だけ美醜逆転の世界で聖女と呼ばれる私

猫崎ルナ

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新しい出会いに胸を躍らせる聖女

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私が起きるともうすでにレイは起きていて、朝の支度を手伝ってくれることになった。



「レイーおはよう」

「おはようございます優里様」



そう言ってレイの唇へとおはようのキスをした。

あんな事をした後だと言うのに、キスだけでレイの顔は真っ赤になる。



「聖女様、レイ様、食事の準備ができました」



メイドがそんな私たちを呼びにきたので、大人しくついてゆく。



「レイ様は聖女様の夫になられましたので今日からはレイ様といることが仕事になります。職場の方へは昨日のうちに連絡をしていますので気にしなくても大丈夫です。」



歩いているときにメイドはレイにそう言っていた。


(私といる事が仕事…まじか。すごい世界だなぁ。)


そんなことを思いながら歩いていると到着した、そして二人でご飯を食べた。もちろんご飯は美味しかった。



レイと食後に城の中を散歩していると、凄い大声が聞こえた。

あのまま部屋へと帰っても良かったのだが、せっかく異世界に来たのだから色々な場所を見てみたいと思ったのだ。



「レイ、あの声は何?喧嘩?」

「あぁ、あれは騎士団の練習中の声ですね」

「騎士団?あそこで剣で戦ってるの?」

「木剣だとは思いますが、多分そうですね」



私が興味を示したことが意外だったのか、レイはキョトンとして私を見ていた。



どうも、この世界では肌の色が白い方が好まれるので、どうしても肌が焼けてしまう騎士団には女性があまり興味を示すことはないそう。

ただし、肌が黒いだけで容姿や体型に難ない場合には同じように仕事柄肌が焼けてしまうもの同士で婚姻するのでそこまで女に飢えてることはないらしい。

前世で言う肌の綺麗さみたいなもんか??

よくわからないこの世界の美の基準に私は頭を傾げる。


(レイは肌白いからそこはモテポイントって事かな?)


聞く限りでは、この世界で容姿が悪い人が極端に迫害されてるとかは無いそうだ。

ただ、結婚相手にはされないらしい。



「あ、そういえば。」

「なぁに?レイどうしたの?」

「騎士団に見るに絶えないほどの容姿の男がいると少し前に噂が…」

「はいっ!?行こう!今すぐに行こう!」



私はまだ見ぬイケメンに対して思いを馳せつつ、レイに対して早く行こうと言ったのだった。


私の後ろにいたメイドが先に騎士団へと私がいくことを伝えに走ってゆくのを見ながら、レイと歩いてゆく。


(この世界の美醜の基準がわからないな。)


一つわかるのが、顔だけなんだろうってことだ。

メイドが私を褒める言葉を聞いていたが、肌がきめ細やかで白いだとか胸が大きいとかお尻がキュッと上がっているとか体に対しての賛辞はごく普通だった。

顔に対しては頬ボネがセクシーだとか鼻口が横に開いていてセクシーだとか唇が分厚くてセクシーだとか目がこんなに薄いだとか聞くに絶えない賛辞だったが。…むしろ惨事だな。


(どこもかしこもセクシーなのか私の顔は、歩いていていいのか?…私はセクシーの具現化??)


そんな馬鹿馬鹿しいことを脳内で考えてるうちに騎士団がいる場所へと到着した。



騎士団演習場の受付で待っていたメイドと合流して演習場へと入る。

そこは前世で例えるならばサッカースタジアムのような形をしているが、それよりかは規模が小さいものだった。


私は来賓席に座ってワクワクしながら騎士団を見学していた。

レイも騎士団を見るのは嫌いじゃないらしく、横で目を輝かせていた。



「レイ、レイ、どの人が例の人かわかる?」

「えーっと、えーっと?…あの人かなぁ?」


私がレイが指を刺した先にいる人を見るが、そこまでカッコいいとは思えなかった。


(やっぱり噂は噂かー)


そう思いつつため息を吐く。


そしてふと、私たちがいる来賓席の左側の端に誰かが腕を組んで座っていることに気づいた。

その人は寝ているのか顔は見えないが、着ている服が騎士団の制服のような気がする。



「ねぇねぇ、あの人なんであそこにいるんだろう?」



私は気になったのでレイにそう聞くが、レイもよくわからないようで私と一緒に頭を傾げていた。


そうしてるうちに、みんなが一箇所に集まり始める。

その時さっきまで全く動いてなかった左側にいた人が急に立ち上がり、みんなが集まっているところへと走っていったのである。


そして私はそれを魂が抜けたような顔をしながら見送ったのだった。



「はわわ…レイとは違うタイプのイケメンがいた…」



私の言葉を聞いたレイが驚愕の表情を私に向けているのがらわかった。

もう今の私には誰の声も聞こえないし顔も見えない。



ここが日本だったとして、浮気症だとなんだろうと罵られようがいい。


だってここは異世界なのである。


子供を産むのが仕事なのである。そうだ、そうなのだ!私は聖女なのだ!

一人で最低な事を考えながらメイドへと夫にしたいから声をかけてきて欲しい事を伝える。


「レイ、レイの事私は大好きだからね?他の人も夫になったとしても、第一夫はレイだからね?」


私はハッとレイの方を向きながら急いでそう言うと、レイは『え?いきなりどうしたんですか?』みたいな顔をしていた。

レイに嫌じゃないのかと聞くと、この世界では一夫一妻の方が少ないので気にすることはあまりないのだと。

でも、夫同士妻同士の相性があるので基本的には話し合いの場が設けられたりするらしい。

けれどこの場合、話し合いで決めるのは婚姻するかしないかではなく、棲み分けはどうするのかの話し合いらしいので、異世界って凄いと改めて思ったのである。


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