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聖女は騎士に美人局と思われている?
しおりを挟む私が浮気がバレてしまった時の旦那みたいな言い訳をし『突然どうしたんだ?』とレイが思っている時、騎士団の方はざわついていた。
「こ、コイツが聖女様の夫にですか?」
突然そばに近づいてきたメイドの言葉に騎士団長が驚く。
「はい、聖女様が本人が嫌でないならそうしたいと」
その言葉を聞いた騎士団の団員たちは皆ざわつく。
「…本当に俺なんすか?違う奴と間違えてないっすか?」
そんな時、夫にと求められることが間違いじゃないのかと本人が言い出した。
「そ、そうだよな。間違っていたら困るしな、聖女様にちゃんと間違いじゃないのか見てもらったほうがいいよな」
団員はこの時皆、威厳があり尊敬する団長の困ってる姿というレアな姿に動揺していた。
そして騎士団長はそのメイドに対し『聖女様の所へ皆で挨拶をしにいってもいいか』と聞く。
その言葉を聞き、メイドは聖女に伝えに行く。
そのメイドの後ろ姿を眺めながら団長がボソボソと小さな声で話しかける。
「なぁ、ヴェル。お前が本当に夫として求められてたらどうすんだ?」
「俺が?求められるわけねーだろ。親父は俺のこと馬鹿にしてんのかよ」
…不機嫌そうな表情をして返答するこの男は騎士団長の息子であった。
☆
「ええ?皆が挨拶したいの?私に?」
「はい、どうやら人違いだったらいけないからと一度挨拶する場を設けたいみたいです」
「人違い…?あぁ、えっと、じゃぁ、私があそこへ行こうかな?きてもらうのも悪いしね」
人違いかもしれないと言われることに不思議がっていた私だったが、そういえばあのイケメンはこの世界では不細工と思われてる事を思い出し納得。
まぁ、一瞬みただけで夫に選ばれるなんて思わないだろうから、それも理由かもしれない。
わざわざメイドを走らせて伝えさせてこっちに来てもらうなんて申し訳ないと思った私は、騎士の皆が集まっている場所にレイと一緒に歩いてゆくことにした。
「初めまして、騎士団長を務めています バルバス フェルトグと言います」
「初めまして 優里と言います」
軽く挨拶をした後にお目当てのイケメンを探す。
あ、いたいた。
後ろの方で顔を背けている男性の方へと歩いてゆく私に皆が軽く目を見開き視線を動かす。
「こんにちわ、優里と言います。もしよかったらお話ししませんか?」
私がにっこりと笑ってそう声をかけると、その男性はやっと私の方へと視線を向けてくれた。
「っ…!?」
私の顔を見たイケメン男性は突然話しかけられたことになのかひどく動揺していて、切長の瞳がひどく揺れていた。
何かを話そうとしているのだろうか、口をぱくぱくさせて私を見ている。
私がその姿をじっと見つめていると、このままでは埒が開かないと思ったのだろう団長が、そのイケメンに『行ってこい』と言いながらその背中を押した。
わーい。
話す時間が欲しかった私は団長の言葉に喜び、絶対口説き落とす!と心に決めつつ更に話しかける。
「では、私の部屋でお話ししましょう!」
そう言った私はイケメンの手を掴み、反対の手でレイを掴み歩き出した。
そう、これが、両手にイケメン!私の夢ここに叶えられたり!わーい
そんな馬鹿な事を考えながらご機嫌で歩いてる私を見てレイは柔らかく微笑んでいたが、もう一人の方はカチカチに固まってただただされるがままになっていた。
そんな私達の後ろ姿を呆然と眺める団長と団員達は、その後後ろ姿が見えなくなるまで無言で佇んでいたらしい。
自室へとたどり着いた私はソファに座り、両隣に二人を座らせる。
私が今から口説き落とす事を察しているのだろうか、レイは私の隣で分厚い本を開いて読み出した。
私はそんな気遣い屋さんのレイに心の中で感謝しつつ、口説き落とす事に集中する。
「さて、お名前はなんですか?…おーい?おーーーい?」
騎士団演習場から一言も言葉を発していないこのイケメンは真っ赤な顔をしてガチガチに固まっている。
…。
返事が返ってこないことには名前がわからない。
『団長に名前だけでも聞いてくればよかったかな』と思いながら私は男性を見る。
程よく褐色に焼けている肌に短髪の銀髪。髪の毛はレイよりも少し太めかな?硬そうだ。
唇は薄く、鼻は筋が通っていて高い、目は切長でよくみると瞳は淡い金色だ。
…。
うーん?息してる?ちょっと心配になってきた私は、その唇に指を近づける。
そうすると、ものすごい勢いで腕を掴まれた。
さすが騎士。
驚き硬直していたにも関わらず、反射的に敵からの攻撃に対象できる様に訓練しているのだろう。
…いや、私は敵ではないのだけれど。
「わわ!びっくりした!」
私が態とらしくそう言うと、男性はひどく驚いた顔をしていた。
えぇ…?いや、どちらかと言うと驚いたのは私の方なんだけども…。
「あの、俺!あ…すんません」
そう言って尻すぼみになる言葉とともに腕から力が抜けてゆく。
そして視線がなぜか私の後ろに向いている。
チラリと顔を少し動かし後ろを見ると、顔を本に向けているレイの視線は男を射抜いていた。
「優里様の腕に跡が付いたらどうするんですか」
聞いたことないほどに冷たい声色で私はびっくりした。
まぁ、聞いた事もないと言うが、まだ1日しかレイとは関わっていないので大抵の事はそうなんだろうけれど。
夫としてなのか、その性格からなのだろうか、レイがそう言ってくれただけで私はとても嬉しくなった。
『レイを後でたっぷり愛そう。』そう心のメモ帳に記入したのだった。
『やってしまった…』と言う様な表情をしている男性と『傷付けるなら容赦しない』とでも言いたげなレイ。
『このまま二人が不仲になってしまったら拙い!』そう思った私は必死に二人へと話しかける。
「気にしないで?ね?大丈夫だから、レイもありがとうね?大丈夫だよ?ね?」
私のイケメンパラダイス計画を遂行するため、私は必死にそう言った。
動悸が不純すぎるが仕方がない。喧嘩するイケメンは見たくない。
イケメンは幸せでいてくれ!あ、違う違う。
「ねぇ、ごめんじゃなくてさ、名前が知りたいんだけどいいかな?」
「あ、すんません。俺はヴェルって言います…」
「ヴェル、ヴェルね!やっと名前が聞けたわ!ありがとう、私のことは優里って呼んでね?」
「優里…様」
様はいらないんだけどなーと思うが、言わないことにした。
「じゃぁ、ヴェル!」
「な、なん…でしょうか?」
「私の夫になる気がありますか?」
そう言った瞬間、ヴェルは挙動不審になり、そして私に袋を渡してきた。
突然差し出された袋に困惑した私だが、一先ず受け取る事に。
「俺はこれしか今は…」
そう言いながら両手を膝の上で硬く握りしめるヴェルを横目に、私が受け取った袋の中を見ると金貨と銀貨が数枚…って
「欲しいのはお金じゃなーい!」
私の言葉は何故かヴェルには金目当てだと思われてた。
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