13 / 33
疫病の旅編
落ち込んだり動揺したりする夫と怒りの聖女
しおりを挟む「聖女様!ありがとうございます!貴方様のおかげで村は救われました」
そう言って村長は私達へと深々と腰を折りそして、是非御礼をと言われたのだ。
何度もこういった場面には遭遇していたし毎回断っていたのだが…今回は少し困った事になったんだよね、その困った事なんだけど…。
「聖女様はとても素晴らしい女性なので夫様達を保護されているんですよね?とても素晴らしい事ですが、これでは聖女様は女性としての幸せを知る事がないままに一生を終えてしまうのじゃないかと私は心苦しいのです…。幸い私の倅のトミニはとても見目がいいと評判なんですよ!もしよければ聖女様の夫様の一人として旅へとご一緒させては貰えませんか?」
…ことの始まりは村長のこの発言から始まったのだ。
私は元々この村長があまり好きではなかった、初めから私を見てはニヤニヤ。夫たちを見ながらニヤニヤ。
本当に気分が悪かったし、自分の息子に対して高圧的な態度をとったり、神官達に対しても『あれをやれ』『これもやれ』『それもやれ』と、上から目線で命令するのだ。
そして、この発言…さも私の事を思っていますよと言うような言い方な事も癪に障るが、夫達を見下している発言や自分の息子の意見も聞かずに夫へと進める発言。
私が好きで夫達と一緒にいると言おうが、村長の中で私は『容姿が良くない男を保護してる聖女』という思い込みが無くならないのだ。
「いえ、私の事を思って言ってくれているのでしょうが大丈夫です。私は夫達を愛していますし、夫達も私を愛してくれるので…」
何度もそう言うのだが私の発言は全て右から左へと流れてしまうようだ。
(ていうか、女性としての幸せを知る事がないって決め付けてるけど…恩人だと思ってる人に対してすごいこと言うよな?言ってるだけでそもそも恩人だと思ってないのかもしれないなぁ)
夫達はこの発言をそばで聞いていたのだけど、二人とも違った反応を見せていた。
レイは『私は周りから保護対象として見られているのですね…』とひどく落ち込み、ヴェルは『女としての幸せを俺では与えられない…?』とひどく動揺していた。
そんな夫達を慰めるのは少し大変だった、私の自己肯定感を少し分けてあげたいぐらいだ。
ちなみにティルも近くで聞いていたんだけれど大爆笑していた。ヒーヒー言いながら『聖女様お辛いんですかぁー大丈夫ですかぁー』と息も絶え絶えだった。酷すぎる…ティルはもう少し優しさを覚えたほうがいい。
そして名前を出された息子本人はというと、容姿面は至って普通で性格に関しては親とは違い今の所は常識があるように見えた。
こんな親なのに吃驚するほど『至って普通に育ったな』と言う感じである。反面教師にでもなったのかもしれない。
そして愛し合っている女性も居るようで私に対して『父がすいません…僕には愛する女性がいますのでどうかお気になさらないでください…』と、私が見てわかる程に憔悴していた。
当人同士がこの話題に関して乗り気では無かったので、当然流れると思っていたのだが…まさかの事件が起きた。
私達が次の村へ行く用意をしていると一人の女性が訪ねてきたのだ。
「聖女だからってして良い事と悪い事の区別ができないんですか?!」
私がその女性の元へ行くと突然そんな事を言われたのだった。
目を白黒とさせつつその女性を見ていたのだが、そんなことはお構いなしに女性は私に対して罵声を浴びせ続ける。
「トミニがかっこいいからって無理矢理婚姻を結ぼうとするなんて最低だわ!聖女って周りからチヤホヤされてるからって良い気になってるのよね!人の気持ちを考えないアンタが聖女っておかしいのよ!この村を救ったのも本当はアンタじゃないんじゃないの!?神官の人もアンタの尻拭いが大変だって言ってたし、偽聖女なんじゃないの!?」
私は何が何だかわからないままに、女性の言う言葉をぼーっと聞いていた。
最初の方は私も『いや、そんなことはないよ』『その話はお断りしてるよ』などと言っていたのだが、全くもって話を聞かないので静かに聞いてることにしたのだった。
(トミニって村長息子のことだよね、うーん?お断りしたこと知らないのかな?あ、もしかしてこの人がトミニの言ってた愛する人なのかな?まぁ、自分の恋人が連れていかれそうになったらこんな反応になるのは頷けるのか?…いやでも、人の話は聞いてほしいや)
そんなこんなで気がつくと周りに人が集まってきていた。
「あの、あなたは誰ですか?私の妻に対して酷いことばかり言ってるみたいですが…」
そう言って話に入ってきたのはレイだ。
不機嫌な表情を隠しもせずに話に割り込んできた夫に対しても女性の罵倒は止まらない。
「ふん、名前だけの夫って聞いてますよ。その容姿だからってお情けで婚姻して貰ったんでしょ?聖女様の名声上げに使われてるのに気づいてないんですか?それともわかっているけど綺麗な人だからそばにいるんですか?」
レイを見て鼻で笑いながらそう言った女性に私はつい声を荒げてしまった。
「ちょっと!私の夫に対して失礼じゃない?何度も言ってるけど、私はトミニさんとの婚姻はお断りしています!夫のことも愛してますし、そもそも夫の言うようにあなたは一体誰なんですか?!」
夫を鼻で笑われたこともそうだが、その内容の酷さに私の怒りゲージは一気に爆発してしまったのだ。
69
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
ブラック企業に勤めていた私、深夜帰宅途中にトラックにはねられ異世界転生、転生先がホワイト貴族すぎて困惑しております
さくら
恋愛
ブラック企業で心身をすり減らしていた私。
深夜残業の帰り道、トラックにはねられて目覚めた先は――まさかの異世界。
しかも転生先は「ホワイト貴族の領地」!?
毎日が定時退社、三食昼寝つき、村人たちは優しく、領主様はとんでもなくイケメンで……。
「働きすぎて倒れる世界」しか知らなかった私には、甘すぎる環境にただただ困惑するばかり。
けれど、領主レオンハルトはまっすぐに告げる。
「あなたを守りたい。隣に立ってほしい」
血筋も財産もない庶民の私が、彼に選ばれるなんてあり得ない――そう思っていたのに。
やがて王都の舞踏会、王や王妃との対面、数々の試練を経て、私たちは互いの覚悟を誓う。
社畜人生から一転、異世界で見つけたのは「愛されて生きる喜び」。
――これは、ブラックからホワイトへ、過労死寸前OLが掴む異世界恋愛譚。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
天使は女神を恋願う
紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか!
女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。
R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m
20話完結済み
毎日00:00に更新予定
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる