顔だけ美醜逆転の世界で聖女と呼ばれる私

猫崎ルナ

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不穏な王都編

驚いた聖女は一先ず果物を食べることにした

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「ふわー、あと二週間で子供が生まれるなんて実感わかなーい!」



私がソファーでゴロゴロしながらそんな事を言うと、部屋の隅で素振りをしていたヴェルが『夢のようっす!』と大きな声で返事をしてきた。
隣にいるミミちゃんはそんな私達を見て微笑んでる…可愛い。


『素振りをしながら返事をしてくれる様になるまで長かったなー』なんて事を考えながらヴェルを見つめる。

今日も相変わらずかっこいいヴェルは、そこに居るだけで私を幸せにしてしまう素晴らしい夫である。





そうそう、私の家がなったので、先週は大忙しだった。

大きすぎる家の維持の為に使用人を募集したのだが、働きたいと言ってくれる人が多すぎて決めるのに時間がかかったのだ。

それは聖女だからと言うわけではなく…その募集の仕方がまずかったと今は思う。

私は『犯罪歴がなければいい』『真面目に仕事してくれればいい』としか言わなかったのだ。


この世界では魔力があるものが優遇されたり『貴族』やそれに縁ある『商人』などが優遇されるので、後ろ盾もない魔力もない『平民』も働けるような募集要項を出してしまった私の元には膨大な応募者が集まったのだ。


犯罪歴などがある人達やいい噂が無い人達はおじさまから貸してもらった文官やメイド長達により選別されたらしいのだけれど、それでも募集していた人数の数十倍の人が残った。


そこから私は『貴族』や『魔力のある人』や『就職が有利な人』を省いていった。


まぁ、貴族はめんどくさそうだし…魔力ある人はもっと婚姻に有利な所に行った方がいいし…どうせなら魔力がなかったり後ろ盾がない人達を採用したいと思ったのである。

これ以上私は権力もいらないし、人間関係のあれやこれやに巻き込まれるのは嫌だからと言った理由である。

他に働ける場所がある人はわざわざここで使用人しなくていいし、寧ろ私からしてみれば才能がありすぎる人が働きたいと言って来ることに恐怖しかない。何を企んでるんだって思っちゃう。

基本的に少し貴族に関しては疑心暗鬼気味なのだ。貴族怖い。


けれどそれが周りにはなぜか『慈愛に満ちた聖女様』として認識されてしまったのだ。

面接をするたびに恍惚とした表情で『忠誠を誓います』と何人もの人に言われ続けた私の精神的疲労は計り知れないだろう…。


最終的に残った人達に幾つか質問をし、私や夫に対して対応が変わらないか、変な行動を取らないかの確認の為の一週間のお試し期間を経てやっと昨日…正式に採用したのである。

今回採用された使用人はこの世界ではいわゆるとされるものだったのも『慈愛の聖女』の名前を広める原因になったのは言うまでもない…。

ただ、美男美女にお世話されたかっただけなんだけどね。

私からすれば家の中にいる使用人も夫も最高に顔がいいので幸せである、頑張った甲斐があったと言うものだ!



(まぁ、顔がいいから選んだわけじゃないんだけど…有能な人を探したら結果的にが残っただけなんだよね。)



昨日までの大変だった事を思い出しながら今から何しようかなと考える私。


今日レイは使用人達と一緒に家の中の事をしたりするらしくてここには居ないし、ティルは『探検だー』とか言って朝ごはん食べた後から居なくなったし、リュカは神殿長と話しをした後に私物をここへ持って来ると言って出ていった。

今この部屋にいるのはヴェルとミミちゃんと私だけである。


ミミちゃんがニコニコ嬉しそうに私の隣で果物を剥いてお皿に並べてくれてるのをぼうっと眺めていると、なんだか扉の外が騒がしくなった。


なんだなんだと扉の方へ視線を向けると『バーン!』と勢いよく扉が開いた。

怠惰を極めていた私はすごく驚いてしまい目を見開くことしかできなかった、いや、だって『バーン!』ってすごい音を立てて開いた観音開きの扉はその勢いで外れ倒れたんだよ?吃驚して固まるよね?

まだここ新築だよ?もう壊れたよ?


しかも扉の近くで素振りしてたヴェルは外れてしまった扉の下敷きになってるのだ…。

もう、何から反応したらいいのかわからない状況の私はなぜかミミちゃんが剥いてくれた果物を手に取り一口食べた。
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