顔だけ美醜逆転の世界で聖女と呼ばれる私

猫崎ルナ

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不穏な王都編

居なくなった聖女といなくなった騎士

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*レイ*



「ヴェルがいない?」

「はい、昨日から消息が不明だと報告がありました。皆は聖女様のところへ行っているものだと気にしていなかった様です」

「…最後にヴェルを見た場所と時間はどこだ?」

「最後に目撃したのは洗濯中の下女です、昼前に裏手の森付近で座り込んでいるところを目撃されています。気づけば居なくなっていたと聞きました。」


報告をしてくれた使用人が扉から出ていく中、俺は独りごちた。

「ヴェル…お前が関与してるなんて事はないよな…」



*リュカ*



「はぁ!?優里がいなくなったですって!?まだ見つかってないの!?周りのやつは何してたのよ!」

「はい、メイドのミミと散歩に出かけた後に消息が不明となっています。最後に聖女様を見かけたのは、同じく庭を散策していた侯爵令嬢とその婚約者です。

聖女様とメイドを見かけた後少しして馬車にのり侯爵家でお茶をしていた様なのでその後は知らないとのこと。

レイ様は城内で調べ物をしていたらしいです、今は聖女様を探していると聞きました。問題なのはヴェル様です。」

「ヴェルの何が問題なのよ?優里を連れ去ったのがヴェルとでも言いたいわけ?」

「いえ…ヴェル様は昨日の昼から消息不明だったらしいです。」

「…は、はぁ!?どうして誰も気づかなかったのよ!」

「聞くところによると、ここ数日ヴェル様は以前住んでいた寮に寝泊まりしていたそうなんですが…いなくなった日の朝に『聖女宮に帰る』と言ってたので誰も気にしなかったそうです。

聖女宮の方には本人が連絡をすると言ったらしく…聖女宮にヴェル様が居ない事は誰も知らなかった様です。」

「…タイミングが悪かったのか、わざとタイミングを合わせたのか…考えたくはないけれど『ヴェルが優里を連れ去った』可能性も考慮すべきなのかしらね」



(…あと数日で優里は出産すると言うのに…早く見つけ出さなくちゃいけないわ。)



「優里、なんとしても私が見つけてあげるからね」



リュカは何かを決心したように両手の拳をにぎり、自室へと消えていった。



*ティル*



「おい!なんで俺閉じ込められてんだよ!」

「聖女様が不在の中、誰がどう関与しているのかわからないので。」

「…待てよ。今なんて言った?」

「誰がどう関与してるのかわからないので。」

「ちっげーよ!優里がいなくなっただと!?」

「はい。メイドと二人消息不明になっていると上から。」

「なんで早くそれ言わねーんだよ!」

「知っているものだと思ったので…聞かれもしなかったですし。」

「俺は聞く前に閉じ込められてんだよ!!」



散歩してたら急に捕まって部屋に閉じ込められ、やっと人がが来たと思えば優里が行方不明だと?

確かに俺は夫になる事への返事はしていないが…ちゃんと説明してくれたら力になるのに。

俺は舌打ちをした後、そいつに向かって『使用人まとめてるやつらと話したい』と言った。


「俺が返事する前に消えてんじゃねーよ!」



俺は誰も居なくなった部屋の中、そう独りごちた。



*???*



「やった!やった!完璧だ!」

「…」

「忌まわしき女は生き埋めだ」

「汚れた女、危険な女、この国は守られる」

「どうだ?死んだか?」

「まだまだ生きてる、しぶといやつ」

「絶望させろ!恐怖させろ!絶望させろ!恐怖させろ!」



7人の人影が円になり何かを見下ろしながら会話する、その表情は虚で口からは涎が絶え間なく垂れている。

深く被ったフードのせいで口元しか見えないのだが、それを誰も気にすることは無く話は続く。



「成功したら私たちは英雄になる」

「…」

「忌まわしき女のせいでこの世界は」

「あの女が来ると世界が歪む」

「殺せ!早く殺せ!」

「直接手を下すことができないのが歯痒い」

「もっと痛めつけよう!もっともっともっと!」



6人はそれぞれ会話になっていないような会話をした後、散り散りになり夜の森へと消えてゆく。

消えてゆく6人の後ろ姿を見たあと、ずっと黙っていた人物が独りごちた。



「…必ず、必ず助けますから」



そう言った後、大きな風が吹き深く被っていたフードが捲れる。

の顔にはあるはずの眼球が無かった。
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