顔だけ美醜逆転の世界で聖女と呼ばれる私

猫崎ルナ

文字の大きさ
26 / 33
不穏な王都編

聖女は力の暴走中に子を産み落とす

しおりを挟む



真っ暗な中閉じ込められて、もう何日こうしてるのだろうか?

一日も経ってない気もするし、もう何日もこうしてる気もする。


喉が渇いた、お腹がすいた、誰かと話したい、体が動かない。


そんな言葉が頭の中をぐるぐると回り続ける。

誰かが私のことを助けてくれるなんてもう楽観視はしていない、ここから助かるには自分自身が何か行動を起こさないといけない筈なのに…何も出来る気がしない。


そんな時、私は地面が揺れていることに気がついた。

ほんの少し…地面に寝そべっているからこそ気がつくことができた微細な揺れ。

何かが外で起こっているのだろうか?いや、自分の心臓の鼓動がそう思わせているのかもしれない。


私はもう、何も考えたくなくて目をつぶった。



その瞬間、私の寝そべっている地面がいきなり消えたのだ。

何を言ってるのかと思うだろうが、急に消えたのだ。


私はこの状況にとてつもない既視感を抱いた。

そう、この状況はなのだ。


私はまたどこかに召喚されてしまうのだろうか?

そんなことを考えながら私は落ちてゆき…そのまま気を失ったのだった。




「起きなさいよ。」



誰かが私のことを呼んでいる。



「起きなさいってば!」

「っ!」



私が驚き目を開けるとそこにはがいた。

状況が飲み込めない私に向かってリュカが早口で話し始める。



「時間がないから簡潔に私の言うことに答えてちょうだい、あんたは今どこにいるの?何か今いる場所についてわかることを教えてちょうだい」



なぜ目の前にリュカがいるのか、私は助かったんじゃないのか、色々なことが頭の中を駆け巡る。

けれど、リュカの様子があまりにも真剣だったので要望通り、出来るだけ簡潔に答えてゆく事にした。

今いる場所はわからない事やセリナさんが来たこと、その時に話したことや今私の置かれている状況などを淡々と答えていった。


全て答え終わる頃にはリュカの顔色は真っ青で今にも倒れてしまいそうだった。

私が大丈夫なのか聞こうとした瞬間、視界がブレた。

私が見ているリュカや景色がミキサーで混ぜられてゆくようにブレる中『私たちが絶対に助けるから待ってなさい』と言うリュカの声を最後に、気づけば元の暗闇の中に私は戻っていた。



「夢…?」



私は全く意味がわからなくてしばらく呆然としていた。

あれは夢だったのか、夢じゃなかったとしたら何だったのか、何度も脳内で考えてみるがわからないままだった。

この世界には廃れつつあるが魔法があるのだ、リュカも魔法が使えたとしておかしくない。

さっきのリュカが魔法によるものなのか、私の妄想なのかはまだハッキリしないが…おかげで落ちていくだけだった気持ちが少し落ち着いた。

そうだ、何を私は諦めてるんだ。

今私が諦めたら誰がお腹の中の赤ん坊を守るんだ。


私はふらつく身体を床から起こし、ここから出るためにできることを探すことにした。

改めて探せば、もしかしたら…何かあるかもしれないと思ったのだ。

酸素が薄い今、無闇矢鱈に動く事は悪手なので先ずは今の状況をもう一度整理する。


床も壁も手が届く範囲で穴や隠し扉の様なものはなかった。

天井付近に無数の穴があったけれど今は無くなっている。


…もしかしたら天井付近の穴があった場所はここよりも壁が脆いかもしれない。


そんなことを考えた私はどこか登ることがないか探す事に。



「私は絶対ここから出てやる」



ボソボソと声にならない声で私はそう呟いた。

自分を鼓舞する為の言葉だったのだが、声を出したその瞬間…私の体に異変が起きた。



「これは…あの時と同じ?」



私の身体が薄緑色に発光し始めたのだ。

その光はじわじわと強くなり…『あ、これはヤバい』と思った瞬間、目が開けられなくなるほどの光が私を襲う。

咄嗟に目を閉じた私だが、体の奥からどんどん何かが抜けていく様な感覚があり不安になる。



「きゃあああ!」



どこにそんな力が残っていたのか、耳をつんざく様な叫び声が自然と口から漏れる。

それと共鳴するかの様に、自分の髪が…服が…バサバサと暴れ出す。

自分を中心に風の渦が出来始める。

目を開ける事も叫ぶ事を止める事も出来ないまま、自分の身体から濁流の様に魔力が出ていくのを感じていた。

訳がわからないまま、私はパニックに陥っていた。


壁や地面が嫌な音を立て始める。

このまま力を出し続けたらどうなるのかはわからない。ひとつわかるのは、このままだと壁や地面が吹き飛ぶと言う事だ。

けれど、力に弄ばれ続ける私はどうすることもできない。

力を出し過ぎて身体が強張る、頭もガンガンし始め手足の先が痺れ始める。


壁や地面がえぐれたのだろうか、私の周りの壁に固いものが当たるような音がし始める。

その音はどんどん多く、大きくなってゆき…最後には轟音と共に何かが壊れる音がした。

それと同時に止めることのできなかった力が急に収まり、私はその場に倒れ込んだ。



「し、死ぬかと思った…」



そうつぶやいて私は気を失ったのだった。

その時の私は気がついていなかった、その力の暴走の最中…子供を産み落としていたことを。

子供が産まれた瞬間に力の暴走が止まった事を。



膜の中でスヤスヤと寝ている我が子と私が対面するまであと数分。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

処理中です...