27 / 33
不穏な王都編
聖女はどこから子を出したのかと悩む
しおりを挟む魔力の出し過ぎだろうか?私は少しの間気を失っていたようだ。
痛む頭を抱えながら私は周りを見渡す。
真っ暗だった先ほどとは違い、壁も天井も吹き飛んだおかげで日光が私を照らす。
ジメジメと石と土の匂いばかり嗅いでいた私は、新鮮な空気を肺いっぱいにと取り込む為大きく深呼吸をする。
この場所から移動しないと。
私をここへ閉じ込めた人が来るかもしれないと思った私は立ちあがろうとした。
ふらつく体を手を支えにして立とうと思った時、私のすぐそばに何かがある事に気が付いた。
それは手のひら程の小さなスライムに見えた。
私はその中に何かが見えた気がして、手に取って見てみる事にした。
すると、その中には小さな小さな赤ん坊が入っていて、すやすやと眠っている様だった。
「えええ?!もしかして私の子?!」
驚きすぎた私は勢いよく尻餅をつく。
確かにそろそろ出産だとリュカは言っていたが、私はこの赤ん坊をどこから出した?!
私はその子を落とさない様慎重に服で包んだ後、ちゃんと下着をつけてるか確認をした。
…ちゃんといつもの様に履いていた。
血がついている訳でも、穴がある訳でもなく、普通にいつもの様に履いていた。
私は動揺したが『異世界だもん、こんなこともあるよね』と無理矢理自分を納得させ、子を抱いて歩き出した。
ふらふらする体で私は腕の中に居る子を落とさない様、自分が転けない様に気をつけながら森の中を歩く。
どのぐらい歩いたのだろうか?
私はここまで来れば十分だろうと思い、大きな木の根元に腰を下ろした。
服に包んだ子を見てみるが、すやすやと気持ちよさそうに寝ている。
どちらの子だろうと思い眺めるが、まだよくわからない。
むしろ、私に似てるかすら今はまだわからない。
子が寝たまま小さな手を動かして顔を擦っているのを見て、久しぶりに笑顔になる事ができた。
私はこの子を守らないといけない。
それは当たり前のことだけど…改めて私は思ったのだった。
私が子を見つめていると、少し遠くで葉の擦れる様な音がした。
味方か敵か分からないので私は息を潜める。
体をできるだけ縮こませ、音を立てない様慎重に見る。
そこには人が7人いた。
皆が同じ大きめの外套を着てフードを被っているので、男か女かすらわからない。
私はその怪しい集団が味方だとは思えなかったので、そのまま息を潜めて観察をしていた。
その人達は何かを話し合っているようだったが、その声はよく聞こえない。
何度か会話をした後、一人を除き6人は散り散りに消えていった。
残った一人はそこに佇んでいて、どこかにいく様子はない。
この場所から移動しなきゃいけないと私は思い、ゆっくり立ちあがろうとした。
その時、フードの人が動き出した。
しかも、その人は明らかにまっすぐ私の方へと近づいて来る。
動揺した私は大きな木を背に、その人が通り過ぎるのを待とうとおもった。
その人が通り過ぎようとした時、私は座っていたのでフードの中の顔が見えてしまった。
「ひっ…」
その顔には眼球がなかった。
私はその顔に驚き、小さい声を出してしまった。
軽い気持ちで顔をのぞこうと思った数分前の自分を心の中で恨みつつ、相手に聞こえてない事を願うが…聞こえていた様だ。
「動かないほうが良い。無闇に歩き回れば捕まる。」
そう言ってそのまま歩いて何処かへと行く彼女に私は…声をかけた。
なぜならその声には聞き覚えがあったからだ。
「セレナさん…なんですか?」
私に声をかけられると思っていなかったのか、その後ろ姿からも動揺が見てとれた。
「…。私の名を知ってるのか?あぁ、そうか。私も結局そうなのか」
「よく意味がわかりません。セレナさん、何で私を閉じ込めたんですか?わた…わたしは…」
セレナさんは問いかけてきたにも関わらず、すぐに自分で答えを見つけた様で返事とは言えない返事をしてきた。
私はそれを聞いて意味がわからなかったが、1番聞きたかった事を聞く事にした。
セレナさんは少しの間黙っていたが、私の問いには答えないままに話し始めた。
「あいつ、ヴェル…が、居る。」
「え?どこにですか?」
「ここには居ない。が、そばに居る。」
「ここに居ないのにそばに居る?」
「ヴェルを見つけないといけない、手遅れになる前に」
「それはどういう…」
セレナさんが私にそう言った瞬間、目の前にいたセレナさんが消えた。
瞬きする間の出来事だった。
急いで周囲を見渡すが、結局私はセレナさんを見つける事ができなかった。
呆然とする私を誰かの手が捕える。
「いやっ…!」
「ちょ、待ちなさいよ」
私はその手から逃れようと体を捻らせるが、その人の声を聞いた瞬間逃げるのをやめた。
そこには服や髪が乱れに乱れたリュカが息を切らして立っていた。
51
あなたにおすすめの小説
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
ブラック企業に勤めていた私、深夜帰宅途中にトラックにはねられ異世界転生、転生先がホワイト貴族すぎて困惑しております
さくら
恋愛
ブラック企業で心身をすり減らしていた私。
深夜残業の帰り道、トラックにはねられて目覚めた先は――まさかの異世界。
しかも転生先は「ホワイト貴族の領地」!?
毎日が定時退社、三食昼寝つき、村人たちは優しく、領主様はとんでもなくイケメンで……。
「働きすぎて倒れる世界」しか知らなかった私には、甘すぎる環境にただただ困惑するばかり。
けれど、領主レオンハルトはまっすぐに告げる。
「あなたを守りたい。隣に立ってほしい」
血筋も財産もない庶民の私が、彼に選ばれるなんてあり得ない――そう思っていたのに。
やがて王都の舞踏会、王や王妃との対面、数々の試練を経て、私たちは互いの覚悟を誓う。
社畜人生から一転、異世界で見つけたのは「愛されて生きる喜び」。
――これは、ブラックからホワイトへ、過労死寸前OLが掴む異世界恋愛譚。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
天使は女神を恋願う
紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか!
女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。
R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m
20話完結済み
毎日00:00に更新予定
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる