【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保

文字の大きさ
20 / 34

第20話 リリース(2)原因不明

しおりを挟む
「おかしなところはないですね」
「ありませんね」

 一通り確認したあと、原因不明、という結論に達した。

「うちじゃないかもしれないですよ」

 奥田が早苗を振り向いて言った。

「対向先の問題ってことですか?」
「可能性としてはあり得ます」
「いやでもそれで連絡して、やっぱりこっちのせいだったってなったら……」
「ですが、繋がらないと他の作業が進みませんよ」
「うーん……」

 接続先の方に問題があって繋がらないのだとしたら、それを確認してもらわなければならない。

 だが、早苗たちが直接連絡することはできなかった。別のシステムだ。確認してもらうには顧客に間に入ってもらわなければならない。

 疑っておいて、やはり早苗たちのシステムのせいだとわかったら、顧客にも相手にも迷惑がかかってしまう。

 早苗は迷った後、決めた。

 報告連絡相談ホウレンソウは早くすべきだ。

 あとで平謝りすることになろうとも、リリースに間に合わなくなるよりずっといい。

「奥田さん、影響がない作業をリストアップして、スケジュールを組み直して下さい。他の人は今やっている作業の区切りがついたら、エラーの解析をお願いします。私は課長に報告してきます」

 まずは課長に報告だ。

 どのみち課長は早苗の判断を支持するだろうが、責任者である課長の承認なしに勝手なことはできない。

 リリースという大きなイベントなので、普段は早苗に任せっきりの課長も、さすがに今日は夜勤をしている。

 早苗は虹彩認証をして高セキュリティ区画を出、課長の席へと向かった。

「トラブル発生です。対向先との接続にエラーが出ました。原因は不明ですが、今のところこちらに問題は見つかっていません。対向先に原因があるかもしれません」
「確定ではないんだな?」
「はい。可能性、というだけです。ですが、このままだとリリース失敗の恐れがあります。お客様に確認して頂くべきだと思います」
「仕方ないか……。連絡しよう」
「わかりました」

 課長の承認を受けて、早苗は自席に戻る。

 まずは顧客宛にメールだ。

 件名の最初に【トラブル第1報】とつけ、起こったこと、確認した内容、原因と思われることを詳細に記す。

 一応、情報共有の意味で、営業部隊も宛先に含めた。

 送信した後、担当者の川口へと電話をかける。当然、川口も早苗たち同様に夜勤をしていた。

「お世話になっております。皆瀬です。作業中にトラブルが発生しました。今メールをお送りしましたが――」

 早苗は向こうがメールを見ているのを確認してから説明した。

 文章を見ながらの方が、内容が頭に入りやすい。

「……わかりました。こちらから対向先に連絡します。オンライン会議の招待メールを送りますので、ご準備をお願いします」
「承知しました」

 川口は一度難色を示したが、早苗の説得に応じてくれ、三者でオンライン会議をすることを約束してくれた。

 早苗はオフィスの窓際にある会議卓のディスプレイにノートパソコンを繋ぎ、オンライン会議の準備をする。

 そこへ、リリースのスケジュールを手書きで直した紙を持って、奥田がやってきた。

「スケジュール組み直しました。確認お願いします」

 早苗はそこにさっと目を通す。エラーの出た作業とは関係のない作業を先行するようになっていた。

「確認しました。私はこれからオンライン会議があるので、統制お願いします」
「わかりました」

 スケジュール表を返すと、奥田は高セキュリティルームと戻って行った。

 本当は社員ではない協力会社の人間に統制させるのは良くないし、できることなら奥田には会議に一緒に参加して欲しい。

 だが、他にできる人がいなかった。奥田ならば安心して任せることができる。

 と、そこへ、バタバタと走り寄ってくる人物がいた。

「先輩っ」
「桜木くん!? なんでいるの?」
「メール見ました」
「そうじゃなくて、なんでこんな時間にまだ残ってるのって」
「担当してるプロジェクトなので、一応俺も夜勤してたんです。何かあったときのために」
「うっそ」

 すごい。普通営業はそこまでしない。役割が違うのだ。

「俺にできることはありませんか」
「できることって言っても……桜木くんはセキュリティルームに入れないでしょ。虹彩登録してないもん」

 たとえ入れたとしても、指紋を登録していないからパソコンも触れないし、三年以上も開発のブランクがある桜木に、いきなり本番環境を触らせるわけにはいかない。

「ですけど、何か他に」
「他にって言われても……」

 早苗は今繋いだノートパソコンを見る。

 オンライン会議に出てもらっても、技術的な内容になるだろうから、営業の出る幕はない。

「会議するなら、議事録書きましょうか」
「あ、そうだね。うん。それは助かる」

 早苗は桜木に議事録作成を任せることにした。

 話についてくることはできるはずだ。わからなかった所は後で早苗が補完すればいい。

 オンライン会議のツールには、音声解析で自動で発言を記録する機能もあるにはあるが、まだまだ実用できるほどではなく、議事録を取ってくれるのはありがたい。

 ピロン――。

 ノートパソコンの右下に、メールを受信した知らせが表示された。川口からのオンライン会議の招待状だった。

 顧客の意向で打ち合わせがある時は直接訪問することが多いが、緊急時にはこうやってオンラインの会議が開かれるし、リモートワークをしている時や、社内の他の拠点との会議の時もよく使っている。オンライン会議ツールは今や必需品だ。 

 早苗は手慣れた手つきで顧客の開いた会議室にアクセスした。

「お世話になっております。皆瀬入りました」

 早苗は自分の名前だけを告げた。発言をしない桜木は、カメラに映らない席に座っている。

「お世話になっております。川口です」

 すぐに対向先のシステムも入ってきて、カメラとマイク・スピーカーが接続されていることを確認し、三者での会議は始まった。

 資料を準備する時間がなかったので、早苗は送ったメールの文面と、会議ツール上のホワイトボード機能を利用して説明した。「繋ごうとしたらエラーが出て繋がらなかった。確認したけど原因が見当たらない」が言いたいことの全てだ。

 しばらく互いに技術的な見解のやり取りが行われた。

 言いたいことはほとんど全て川口が言ってくれて、早苗の出る幕はなかった。

 早苗が口を挟んで補足しなければならないような、複雑な箇所ではない。

 なのに、それだと思える原因が出てこない。

「本当にうちなんですかね? そちらのシステムの問題じゃないですか?」

 相手に懐疑的に言われて、聞き役に徹していた早苗は言葉に詰まった。

 システム間のやり取りがあるから、相手方とはまったくの初対面ではない。だが、やはり面識の少ない人との会話は緊張する。

 不安になってふと桜木の方を見ると、目が合った。

 桜木が小さくうなずく。

 それが何だというわけでもないのに、なぜだか心が落ち着いた。

「そう、かもしれません。ですが、テスト環境では起きなかった、事象です。……お手数ですが、ご確認、頂けないでしょうか」
「こちらからもよろしくお願いします」
「……まあ、そうですね。詳細な調査は社内の作業承認手続きを てからになりますが、ひとまず監視の確認はしてみます」
「ありがとうござい……ます」

 川口の援護射撃もあって、なんとか相手の了解を得ることができた。

 エラー監視をしているログの確認なら、すぐに監視センターで見てもらえるだろう。それで原因がわかるとも限らないが、リクエストが飛んでいっているのかいないのか、その情報だけでも欲しい。

 接続した時間などの詳細は別途メールで送ることになり、先方の調査が終わり次第また開催することにして、会議は終了した。

「議事録できました。確認お願いします」

 桜木が自分のパソコンを早苗に向けた。

「ありがとう。助かる」

 さっと目を通すと、ところどころ専門用語に誤りがあったが、内容的にはほぼ完璧だった。間違っていた用語をその場で修正し、桜木にパソコンを戻す。

「それそのまま、お客様に送ってもらえる? あと、私の落書き、ちゃんとした資料に起こしてもらっていい? お客様に正式な報告求められると思うから」
「わかりました」

 桜木は、心得た、とばかりにしっかりとうなずいた。

「ホワイトボードのは――今メールした。システム構成図とかの場所パスは知ってるよね?」
「はい。わかります」

 早苗は高セキュリティルームに戻ろうと立ち上がる。

「あ、それと、作業ログから接続時間と――」
「時間と接続コマンド抜いてお客様に送っておきますね」
「ありがと!」

 話が早くて助かった。




■■■■■ 第21話 リリース(3)原因 ■■■■■

 早苗は高セキュリティルームに戻り、奥田の椅子の後ろに立った。

「進捗はどうですか?」
「作業は順調です。ですが、トラブルの原因がわからないと、そこから先の作業ができません。僕もエラーの解析をしていますが、やはりこちらには原因はないかと思います」
「対向先に調査して頂けることになりました」
「さすがですね」
「私じゃないですよ。川口さんのお陰です」

 奥田の感心した声に、顧客が頑張ってくれたのだと告げる。

 相手も渋って見せてはきたものの、状況が状況なだけに、あそこで調査を断られることはなかっただろうとは思うが。

「でも、対向先でも見つからないかもしれないので、引き続き解析お願いします。統制はいったん私が引き取ります」
「わかりました」

 開発チームは作業を続けていった。

 早苗もホワイトボードを前に、ああでもない、こうでもない、と考えていく。

「だめだ……何もわからない……」

 がっくりと肩を落とした時、高セキュリティルームのガラスの窓を、ドンドン、と叩く音がした。

 桜木がパクパクと口を動かしている。

 早苗は急いで部屋を出た。

「何かあった?」
「今メールがあって、あっちの接続口インターフェースが変更になってたそうです」
「え!?」
「変更したのに、こっちが古い方のインターフェース情報で繋いで来てるって」
「接続情報が間違ってるってこと!?」

 早苗の顔から、さぁぁっと血のが引いた。

 接続の情報が間違っているなら、エラーが出るのは必然だ。

「メール見せてっ」

 桜木からパソコンを受け取り、食い入るようにメールを読んでいく。

「ほんとだ……。インターフェース変えたって書いてある……。私たちは古い方に繋いでるんだ……」
「オンライン会議、もう始まります。準備はできてます」
「桜木くん、奥田さん呼んできて! リリース作業はいったん中断!」
「わかりました!」

 早苗は会議卓へと移動した。

 ちょうど相手先のシステムも入ってきて、会議が始まる。

 高セキュリティルームから出てきた奥田が走ってきた。

 その後から、他のメンバーもついてきていた。作業ログを監視していてる一人を残して全員だ。

 ぞろぞろと人が集まっているのを見て、課長も様子を見に来る。

 カメラに顔が映っているのは早苗だけだが、その後ろには立ち見のメンバーの体がずらりと並んでいた。

 最初に口を開いたのは、接続先のシステム側だった。

「メールでもご連絡した通り、そちらの接続情報が間違っています。新しいインターフェースにリクエストを投げて下さい」
「テスト環境でのリハーサルの時点では、正常に接続できていました」
「その後変更になりました」

 何だそれは。

 早苗は絶句した。

 何のためのリハーサルだと思っているのだろうか。こういうミスを防ぐのも目的の一つなのに。

「……連絡は頂いていないと思いますが」
「したはずです」

 早苗は振り返って奥田を見た。

 奥田は首を横に振る。

 少なくとも奥田は知らない。他のメンバーにも思い当たるふしはないようだった。

「接続情報の変更はできませんか」

 聞いてきたのは川口だ。

 接続情報の変更? 今から?

 あと四時間で切り戻しのデッドラインだ。その時間までに終わらなければ、リリースは失敗とみなし、今日やった作業を全て巻き戻して、元の状態に戻さなければならない。

 設定ファイルの変更、セキュリティシステムの変更、こちらのインターフェースの変更……。

 やることが多すぎる。

 しかも、ファイルのレビューも設定情報のレビューも手順書もテストもなく、いきなり本番環境での作業。

 リスクが高い。

「インターフェースを戻して頂くことはできませんか」
「すでに別のシステムが接続してきているので無理です」

 ダメ元で言ってみたものの、無情にも接続先にあっさりと却下された。

「そちらのミスですから、そちらでなんとかして下さい」

 ぐぅのも出ない。 
 
 川口も同じ目で早苗を見ている。

「少し、検討のお時間を下さい」
「わかりました。決まりましたらすぐ連絡を下さい。こちらは上に連絡しておきます」

 会議が終わったあと、早苗は頭を抱えた。

 リハーサルの後の変更とはいえ、その連絡を見逃したのなら、早苗たちのミスだ。

 それによってリリースに失敗すれば、顧客に多大な迷惑がかかる。

 サービスが予定通りに開始できないことで機会損失が生じる。賠償金を払えとまでは言われないにしても、早苗たちは顧客からの信頼を失う。社内でも大きな問題に発展してしまうだろう。

 全部ちゃんと準備してきたのに……!

「奥田さん、設計連絡票は来てないですよね?」
「今確認してますが、ファイルサーバ上には置いてないですね。来てないか、メールを見逃したか、です。メールを確認してみます」

 正式な連絡ではなく、打ち合わせで口頭で伝えられただけなのかもしれない。後で送っておきます、と言われて送られてこない事はたまにある。

 そんな覚えはない。が、取りこぼしていないとも言い切れない。

 どうしよう、どうしよう、と頭の中がぐるぐると渦巻く。

「犯人さがしは後だ。できるのか? できないのか?」

 言ったのは課長だった。

 そうだ。誰が悪いかは後でいい。まずはこれからどうするかを考えなければ。

「みんな、それぞれ自分の担当の所の変更箇所を洗い出して下さい。奥田さんは私と構成図から別視点で確認お願いします。短いですが、十五分後に一度ミーティングを開きます。その時点では漏れがあってもいいので、なるべく挙げて下さい。それで判断します」

 わかりました、とメンバーからパラパラと返事が返ってくる。

「俺、資料印刷します」
「お願い」

 早苗は奥田と共に、桜木が印刷してくれた構成図を前に、変更が必要な場所にペンで印をつけていった。

「ウェブサーバーとファイアウォールの穴開けは必要ですよね」

 早苗がぐるぐると丸を書き込む。

「環境変数とアプリの設定ファイルもいります」
データベースサーバD Bはどうですか」
「設定は入ってないはずです」
「あの」

 割り込んできたのは桜木だった。

「これって、電文でんぶんの変更まではされてないですよね……?」
「えっ」
「まさか、さすがに、それは」

 桜木の言葉に、早苗と奥田がぎくりと体をこわばらせた。

 もしも宛先情報だけでなく、やりとりするデータの中身まで変えなければならないとしたら、一巻の終わりだ。プログラム自体を書き換えなければいけない。さすがにそこまでは試験なしではできなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました

蓮恭
恋愛
 恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。  そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。  しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎  杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?   【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです

星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。 2024年4月21日 公開 2024年4月21日 完結 ☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

幸せのありか

神室さち
恋愛
 兄の解雇に伴って、本社に呼び戻された氷川哉(ひかわさい)は兄の仕事の後始末とも言える関係企業の整理合理化を進めていた。  決定を下した日、彼のもとに行野樹理(ゆきのじゅり)と名乗る高校生の少女がやってくる。父親の会社との取引を継続してくれるようにと。  哉は、人生というゲームの余興に、一年以内に哉の提示する再建計画をやり遂げれば、以降も取引を続行することを決める。  担保として、樹理を差し出すのならと。止める両親を振りきり、樹理は彼のもとへ行くことを決意した。  とかなんとか書きつつ、幸せのありかを探すお話。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 自サイトに掲載していた作品を、閉鎖により移行。 視点がちょいちょい変わるので、タイトルに記載。 キリのいいところで切るので各話の文字数は一定ではありません。 ものすごく短いページもあります。サクサク更新する予定。 本日何話目、とかの注意は特に入りません。しおりで対応していただけるとありがたいです。 別小説「やさしいキスの見つけ方」のスピンオフとして生まれた作品ですが、メインは単独でも読めます。 直接的な表現はないので全年齢で公開します。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

処理中です...