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好きな理由が知りたい

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自称元人魚-アクリちゃんと
暮らすようになって数日が経った。

「そういえば君は
 僕のどこを好きになったの?」

僕はなんとなく聞いてみた。

アクリちゃんは僕に彼女がいるから
引き下がってくれた。

でもその彼女がもういないと知ったら
諦めずに猛アタックしてくるだろう。

正直、僕は姫華以外を愛する気はない。

だからなるべく嫌いになってほしい。

「優しい所かな…」

「ほら結構前に虐められていた
 亀を助けた事あったよね?」

「その亀、私の友達でさ、
 聞いたんだよね~」

「あー…確かにそんな事あったね~」

でも確かのその後って…

もしかして知らない?

よし、ならその後の事を話そう。

これで幻滅するはずだ。

「実はその後、逆に虐められたんだよね」

「知ってる」

「…ふあっ!?」

知ってるの!?嘘だろ!?

「何で知ってて好きになったの…?」

「それは…」


ゴーンゴーン…


「…あ、もうこんな時間!
 今から晩御飯作るね」

「わーい!私、真琴くん料理大好き!」

「ふふっ、ありがとう!」

僕は冷蔵庫を開けた。

しかし冷蔵庫には
ほとんど食材が残ってなかった。

しまった…買い出し行くの忘れてた…

「買い出し行ってくるね」

僕は財布とエコバッグを
入れた鞄を持って玄関に向かった。

「私も手伝う!」

「え…いいよ、一人で。
 二人ぶんだからそんなに多くないし」

「い~や~だ!手伝いたい~!」

アクリちゃんは玄関前で駄々をこねた。

「…わかったよ」

僕はアクリちゃんと一緒にお店に向かい、
晩御飯に必要な食材と
アクリちゃんが欲しがった
お菓子をいくつか買ってあげた。

アクリちゃんて、もしかして子供…?

「ニャー…」

「「ん?」」

その帰り道、僕達は
木から降りれなくなった猫を見かけた。

僕は持っていたエコバッグをその場に置き、
慌てて木に登って猫の元に向かい、
震えている猫を捕まえた。






そこまでは良かったんだけど
下を見た途端、僕はある事を思い出す。





自分が





高い所が苦手である事に。




「どうしよう…動けない…」



どうして僕はいつもこうなんだろう。

困ってる人や動物がいたら
後先考えずに行動してしまい、
いつも失敗してしまう。

そして毎回、
姫華にフォローしてもらっていた。

…だけどそんな姫華はもういない。

自分一人でなんとかしなくてはいけない。

でも怖くて動けない…



「真琴くん!今助けるよ!」


「ア…アクリちゃ…」

僕はアクリちゃんがいる下を見た。

「え?」

そこには丸太を抱えた
アクリちゃんがいた。

僕も猫も
鳩が豆鉄砲を食らったような顔していた。

え?なんで丸太持ってるの?

その丸太で何する気なの??

そんな事を考えていると
アクリちゃんは丸太を木に叩き付けた。

何度も何度も

え!?まさか落として助けるつもり!?

危ないし何でそんな助けかたしか
思いつかなかっ…

「うわっ!」

僕は猫を掴んだまま落下し、
アクリちゃんはそんな僕達を
スライディングキャッチで受け止めた。

アクリちゃんはドヤ顔を決めていた。

「何ドヤってるの…」

「いや、つい…思った以上に
 上手くキャッチ出来たから…」

確かにナイスキャッチだったけどさ…

「アクリちゃん、危ないでしょ」

僕は掴んでいた猫を放し、
アクリちゃんに注意した。

「アハハ…ごめんね~、
 私、木登りした事ないし、
 早く助けなきゃって思って
 プチパニック状態になって…」

「そしたら近くにあった丸太に
 視界に入ってこれでいける!
 って思っちゃってさ」

「途中で冷静になったけど…」

「もう…でも、ありがとう」

「どういたしまして」

僕はエコバッグを拾い、
二人で家に帰った。

「ねえ」

「ん?」

「どうしてアクリちゃんは
 僕の情けない所を知ってるのに
 どうして僕の事が好きなの?」

僕は歩きながら
さっきの話しの続きをした。

「え…」

「僕は確かに優しいかもしれない…」

「でも助けようとして後先考えずに
 行動して失敗しちゃうんだよ…」

「さっきみたいに」

「情けないでしょ…」

「私は情けないとは思わないよ」

「…え?」

「だって真っ先に助けたようとするなんて
 凄く素敵な人だと思うし!」

ー情けない?何言ってるの?

ーこれはあなたの良さじゃない

「それに後先考えずに
 行動するのは私もよくやるから」

「だからもし、失敗して真琴くんが
 ピンチになったら私が助けるよ!」

ー困ったら私が助けてあげるわよ

「やり方は強引になるかもしれないけど…」

「だから自分の事を
 情けないなんて言わないで」

ーだから自分を否定しないで

「そのままの優しい君でいてね」

ー私が支えるから

「…っ、ありがとう…」

僕は泣きそうになった。

アクリちゃんが姫華と
似たような事を言ったから…

アクリちゃんが姫華が重なって見えて…

泣いちゃダメだ…

泣いたって姫華にはもう会えない…

僕が泣いたら天国の姫華が悲しむから…

ふわっ

「え…」

アクリちゃんは優しく僕を抱き締めた。

「大丈夫だよ」

「泣いてもいいんだよ」

「悲しい気持ちは閉じ込めないで」

「悲しい時は泣いちゃえばいいんだよ」

「泣いてる姿を見られたくないなら
 私が隠してあげるから」

「思い切り泣いて」

「そしたらきっと次は幸せに
 笑えるようになってるはずたから」

「…っ」

アクリちゃんにそう言われ、
僕の目からポロポロと涙が溢れた。

僕は姫華を悲しませたくなくて
姫華のぶんも笑顔で生きたかった。

だから悲しみを押し殺そうと思っていた。





でも…



「う…」



心は


「わあぁぁぁぁ…っ」



ずっと苦しかったんだ。


僕はアクリちゃんに思い切り泣き付いた。

アクリちゃんはそんな僕を優しく撫でた。

ありがとう…アクリちゃん…

そして姫華、ごめんね…

でも次は無理をしないから。

ちゃんと君のぶんも
幸せに笑って生きるから。

そのために今だけは泣く事を許して







💧To be continued…💧





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