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三話目(※) イザベラ視点

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 施術を担当してくれるマリオンが私をどのような目で見ているかなど、はじめて会ったときからわかっていた。人の好さそうな、ともすれば気弱そうな薄い茶色の瞳が、彼女の心中を容易に悟らせてくれたからだ。私よりわずかに背が低く、引き締まった細身の体型。最低限の化粧しかしていない肌は瑞々しく、仕事道具であろう手指はその先まで徹底して整えられているのが見て取れた。手触りの良さそうな黒い髪をそっけなく後ろで束ね、私の視線に身を縮こめる彼女を……可愛いと思った。
 ––だから揺さぶりをかけてみたのは、ほんのいたずら心だったのだ。
 貴族として商売人として仕事ばかりの毎日を過ごしていても、私の財産と事業に群がってくる男どもは数え切れなかった。あるいは若いころから女らしい体付きをしていた私を手に入れて、事業もろとも自分の支配下に置きたいと思う輩が多かったのかもしれない。特別に心惹かれる相手もいないまま、気付けば年齢を重ねてしまっていた。だが私にも、性欲はある。熟れた体を持て余している自覚はあった。手ごろに発散するにはその手の店に行けばいいのだろうけれど、下手をすれば私の立場では付け入られる隙となってしまう。そのため商売の伝手で手に入れたおもちゃを使って、自分を慰めるのが精々だった。
 真面目な施術者として振る舞うマリオンは、時折遠慮のない熱い眼差しで私を見つめた。わざとらしく肌を見せつけ無防備な姿をさらしてみたら、頬を染めて狼狽えるマリオンの下半身は反応を示していた。本人は施術に没頭して意識していなかったのか、上手く隠せていると思っていたのかはわからない。けれど誤魔化しようのないその反応こそが、彼女の弱みに違いなかった。これまでずっと観察してきたが、逆上して私を襲うような大胆なことをする人間ではないだろう。それに自ら私の担当を下りないということは、少なからず下心を持っているのかもしれない。––であれば、弱みを突いたらどうなるだろう。私は性欲旺盛だと聞くふたなりの彼女に、興味を引かれていった。



 施術後、下半身の反応を暴いた私に対して見せた彼女の反応は、概ね予想通りだった。声も体も震わせて土下座をする彼女の姿に、これまで感じたことのない愉悦が湧き上がる。私は支配されるより、支配するほうが性に合っているのではないのかと気付いた瞬間でもあった。いまにも泣き出しそうな顔をしているくせに、マリオンは従順に私の命令に従う。歪だとわかっていたけれど、気に入った人間を意のままにする嗜虐的な興奮が歯止めをきかなくさせた。

「窮屈そうね……。それも、さっさと脱いでしまいなさい」
「……っ」

 ぐっと唇を引き結んだマリオンが、黒い下着をずり下ろす。弾かれたようにあらわれたペニスは、私の想像以上に逞しかった。彼女のおへそにまで反り返る昂ぶりは真っ赤に膨れ上がり、段差の付いたカリ首から血管の浮き上がる太い陰茎はおもちゃとは比べ物にならない立派さだ。黒々と茂る濃い陰毛もぱんぱんに精子の詰まっていそうな陰嚢も、童顔の彼女の体が成熟した大人のものだと教えてくれる。

(可愛いマリオンに、こんなに凶悪なものが生えているなんて……♡♡♡♡ ふたなりは人一倍性欲が強いらしいのに、よくいままで体に触れる仕事をできていたわね……。私以外にこんなになったことはないと言っていたけど、……とっさについた嘘というわけでもないのかしら?)

「……はじめなさい、マリオン。貴女が欲情してしまったこの体を、好きなだけ眺めながらするといいわ」
「そ……っ、そんな!」
「見たくないのなら、無理にとは言わないけれど」
「っ……、お待ちください! お許しいただけるのであればぜひ、お願いいたします……っ!」
「ふふ……、いいわよ」

 彼女は私の言葉にすがり、肉欲の僕となった。これ見よがしに脚を開いて手招きすると、浅い呼吸を繰り返すマリオンが近づいて私を視姦しはじめる。欲望に満ちた眼差しで体を見られることなど不快にしか感じたことがなかったのに、私はかつてない興奮を覚えた。

「発情しきった、いやらしい目つきね……。私の体に触れながら、こんなふうに揉みしだくのを想像していた?」
「ぅ……っ! ぁあ……っ♡♡♡」

(食い入るように見つめて、いまにも涎を垂らしそうね……♡♡♡♡ マリオンが興奮しているのがわかると、……なんだかたまらない気持ちになるわ♡♡♡♡)

 肩の凝る原因にもなっている乳房を自分で揉みしだいて見せると、膝立ちで腰を突き出しているマリオンのペニスからだらだらと先走りが垂れた。羞恥より欲望が上回ったのか、自分の手で陰茎を握りしめてじゅぽっ♡♡じゅこっ♡♡と上下に扱きはじめる。乱暴な手付きからはまったく余裕が感じられず、その必死さを目の当たりにした私は体の奥底からぞくぞくと湧き上がる快感に身震いした。

「ずいぶん必死ね。そんなに我慢していたの?」
「くっ、ぅぅ……っ♡♡! は、ぁっ♡♡ もうしわけ、ございませんっ♡♡♡!」
「いいえ……、興奮してたまらないって顔した貴女、可愛いわよ♡ ……ここに注ぐのを想像して、イキなさい♡」
「はっ♡♡♡ はぁっ♡♡♡ ……っ♡♡♡♡!」

 オイルを含んだマイクロビキニからはみ出すように、両手を使って女陰を広げて見せる。無遠慮な視線が突き刺さるのを感じて言葉でも煽ると、彼女は堪えきれない様子で私を呼んで射精した。勢いのある白濁が手の間から飛び散り、私の脚にまで降りかかる。膝を折ってベッドにへたりこんだマリオンは、快楽の余韻に弱弱しく震えているばかりだ。
 マリオンの若々しい汗の香りとつんと鼻を衝く性臭に誘われて、指で掬い取った濃い精液を嗅ぎ、味見してみる。独特の匂いも味も、癖になりそうだった。

(凛々しかったマリオンが……私の目の前で私をオカズにして、情けない声を上げてイってしまった……♡♡♡♡ ……なんて快感なのかしら♡♡♡♡♡ あぁ……、涙目も可愛らしい♡♡♡♡ このくらいにしておこうかと思っていたけれど、……マリオンに触れたくなってしまったわ♡♡♡♡)

 興味本位の行動だったが、マリオンの目には淫靡に映ったらしい。長い射精を終えて収まったかのように見えたペニスが、張りのある太ももの間でまた完全に反り返っていた。

「あらあら……、困った子♡ またこんなにして……♡」
「ぅっ……!? ぁああっ♡♡♡♡!」
「腰を引いてはだめよ。このままではお店に戻れないでしょうから、手伝ってあげるわ♡」
「ぁっ♡♡♡♡ く……っ♡♡♡♡ んんっ♡♡♡♡!」

 私のいいようにされるマリオンが可愛くて虐めたくなってしまい、硬く太い陰茎を足裏で踏みつけ、陰嚢を摩り、亀頭までを爪先で辿った。こんなにしても気持ちいいのかは疑問に思ったが、腰を跳ねさせてされるがままになっているマリオンは潤んだ瞳で私を見つめてくる。もっとして欲しい、と言葉にせずとも伝わってくる要求をわかりながらあえて撥ねつけると、マリオンはくしゃりと顔を歪めた。

「っ……、ぁ、イザベラ、さま……っ♡♡♡♡」
「足裏で雑に扱かれても感じてしまうなんて、……ふふ、物欲しそうな表情カオ♡ 安心なさい、ちゃんとイかせてあげる♡」

 起き上がった私はマリオンに迫り、お預けされて震えているペニスに両手で触れた。

(足裏でも感じたけれど……、熱くて、とても硬いわ♡♡♡♡ こんなに凶暴なもので突き上げられたら、気持ちよさそうね……♡♡♡♡)

「っふ、ぁああっ♡♡♡♡!? イザベラ様の手が、汚れてしまいます……っ♡♡♡♡!」
「後でいつものように拭き取ってくれればいいわ♡ どうされたいのか、言ってごらんなさい♡」
「く、ぁあ……っ♡♡♡♡! っどうか、そのまま上下に、はっ♡♡♡♡ ぁあっ♡♡♡♡♡!」
「がちがちね……♡ このくらいかしら♡? マリオンは少し強めにされるのがいいのね♡ 気持ちいい♡?」
「はぁっ♡♡♡♡ は、いっ♡♡♡♡ ぅあっ♡♡♡♡ よすぎて、もう、でてしまいますっ♡♡♡♡!」

 じっくりと反応を探りたいのに、限界が迫っていたマリオンはもう堪えられないらしい。てのひらで精液を塗りたくるように裏筋やカリ首をやんわりと扱いてぐりぐりと亀頭を擦ると、あられもない声を上げたマリオンがふたたび大量の精液を放って達した。

「……っ♡♡♡♡ ふっ、はー……♡♡♡♡ はーっ♡♡♡♡ ぁ……っ♡♡♡♡」
「息を荒げて腰を震わせているのに、ここはまだまだ足りないみたいね……♡」

 ベッドにも私にも白濁を散らせたマリオンは、荒い呼吸を繰り返して呆けている。すっかり蕩けきった顔にあてられた私が誘惑したけれど、苦し気に呻いた彼女は頑なに続きを拒んだ。もつれる脚を動かして謝罪を繰り返し、後始末をしてくれる。刺激的な夜をもっと楽しみたかったが、無理強いして逃げられてはつまらない。私は鷹揚に彼女の言い分を聞き入れて着替えに向かった。
 挨拶を交わすときでさえ私の顔をまともに見られない可愛いマリオンは、逃げるように部屋から出ていく。私は彼女へのさらなる欲求を自覚しつつ、次の機会を楽しみに待つことにした。
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