初めての恋

ぱる@あいけん風ねこ

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私の好きな人には、好きな人がいる。
とても明るくて、可愛くて、愛嬌があって、誰とでも仲良くなれる、そんな子。
私とは正反対の性格をしてて、クラスのみんなから好かれてていつも会話の中心にいるような子。

彼と彼女は小学生の頃からの幼馴染で、ずっと一緒にいる。
でも付き合ってはない。

そんな2人を、私はただ眺めてるだけ。

集まるグループが違うから、話したこともないし、近づいたこともない。

彼、野木崎 柚乃のぎさき ゆのくんは、活発的で、優しくて、頼りになる人。
爽やかイケメンで、屈託なく笑った笑顔がすごい素敵。


彼に恋をしたのは高校1年生の時。
たまたま同じ委員会になって、1人で作業してた時に手伝ってくれたのがきっかけ。
その時に初めて話をして、初めて彼を認識して、恋に落ちた。

でも、それだけ。
その後に仲良くなることなんか出来なくて、話も出来なくて、ただ眺めてるだけ。

自分でも気持ち悪いな、とは思うけど、どうしてもやめられない。


2年になって同じクラスになった時は嬉しかったのと同時に戸惑った。
今までは遠くから見てるだけでよかったのに、それがこんな近くにいるなんて…って。

彼のことを目で追ってて気付いたのは、彼には好きな人がいるという現実。
相手は、彼の幼馴染の愛原 夢菜あいはら ゆめなさん。
さっき言った通りの明るくて可愛らしい子。

敵うはずもなく…というか、私は付き合いたいとは思ってないし、勝負してるわけでもないから敵うとか敵わないとか関係ない。
側から見たら本当にお似合いな2人で、周りの人たちも「付き合わないのかな」って言ってるくらい。




「夢菜!」
「なに?」
「委員会、時間」
「あ!ほんとだ!行ってくる!」
「おう」




愛原さんは生徒会に所属してて、ここ最近毎日忙しそうに動き回ってる。
野木崎くんは、そんな愛原さんのサポートみたいなことをしてて、本当に仲良いなぁ…てちょっとだけ羨ましく感じる。




「麻希?」
「えっ?」
「どした?」
「あ、ううん。なんでもない!」
「そ?じゃあ、部活行こ?」
「うん」




そんな、野木崎くんに恋をしてる私、惣谷 麻希そうたに まき

私は、自分でもかなりの根暗だと自負してる。
オシャレとかよくわからないから、髪型もいつも一緒。
ストレートすぎる髪の毛をそのまままっすぐ伸ばしっぱなし。

制服を着崩すことも怖くて出来なくて、人と話すのも苦手。
仲良くならないとしっかり喋れないくらい。

本当に、あの2人とは全然タイプが違うから、仲良しグループになることは絶対にない。

同じクラスだからって、みんなと仲良いわけじゃないし、無理やり仲良くなろうとも思ってない。
自分のことはちゃんと理解してるつもりだから、無理なことはしない。




「麻希は、大学どうするの?」
「一応、受けるつもり」
「え、どこ?」
「地方の大学」
「そっかぁ…ここ出て行くんだね」
「うん」




本当は、地元の大学に通いたかったけど、家の都合で高校を卒業したら独り暮らしをしなくちゃダメになって、流石に1人でここに住むのは大変だから、比較的1人でも暮らしやすい県の大学に受験することにした。

それに、地元に残ってあの2人を見るのは、やっぱ少しだけ辛い気持ちもあるから、だから離れる。
高校生の間だけの初恋。




「お疲れ様でしたー」
「「お疲れ様ー」」




部活が終わって、後片付けも終わってあとは帰るだけ。
因みに部活は美術部。
大学も美術系の大学に進学するつもり。




「じゃあ、麻希また明日ねー」
「うん。お疲れ様」




2年になって私が部長に選ばれたから、最終点検をして部室の鍵を職員室に持って行く役目があるから、友達とはここでお別れ。
3年生はいるけど、受験があるから部長は2年がやることになってる。




「…わ、きれい」




点検も終わって、鍵を閉めて静かな廊下を歩いてたら、窓から差し込む夕陽がすごく綺麗で、この描写を描いたら素敵かも、と思いながら指で窓を作る。
指の間から覗いた先は、本当に綺麗で、カメラ持ってたら良かったな、とちょっと後悔。




「なにしてんの?」
「っ!!」




ずっと眺めてたいな、と思いながら指の間からずっと夕陽を見てたら、背後から肩を叩かれて声をかけられた。




「え…あっ…」
「なにしてんの?」
「あ…えっと…きれい、だなと思って…」
「ん?…あ、ほんとだ。すげぇきれい」




相手は、私の思い人の野木崎くんだった。
どうしよう…一気に緊張してきた。




「惣谷さん、部活だったの?」
「え、名前…」
「あれ?惣谷さん、だよね?」
「あっ…う、うん」
「よかった…違ってたらどうしようかと思った」




野木崎くん、私の名前知ってたんだ…そっか…。
どうしよう、それだけで嬉しい。
まさか名前知っててくれてるとは思わなかった。




「俺の名前知ってる?」
「あ、うん。もちろん」
「そっか。よかった」
「……あの、」
「うん?」
「野木崎くん、は…なんでここに?」
「え?」
「あっ…いや、ここって美術部員意外あまり人来ないから…」
「そうなんだ?ここ、俺のサボり場なの」
「へ?」




そう言って指差したのは、美術部の隣の空き教室。

ここは、西側にある別館で、基本美術関係の物しか置いてないような場所だから、美術の授業や部活でしか使われない場所でもある。

だから空き教室はいっぱいあって…まさか野木崎くんのサボり場になってるとは思わなかった。




「…部活、サボったの?」
「うん」
「そう、なんだ…」
「ノブやんが嫌でさ」
「ノブやん…」
「あ、高田先生ね?サッカー部の顧問」
「ああ…高田先生」
「そ。ノブやん今日機嫌悪くてさ、とばっちりくるの嫌でサボった」
「ふふ。そうなんだ」
「うん。ノブやん、フラれたとかで機嫌悪いんだよ、今日」
「へぇ」




あれ?私、なんだか普通に話せてる…?
いや、これは野木崎くんのおかげかな?
本当に話しやすくて緊張はするけど、ちゃんと話せてる。すごい。




「あ、夕陽もう隠れちゃった」
「…ほんとだ」




気付いたら夕陽は沈んでて、辺りは少し薄暗くなってきてる。
冬に差し掛かってる時期だから、暗くなるのは一瞬。




「帰ろうか」
「あ、うん」




何の気なしに歩き出した野木崎くんを追う形で私も歩き出す。
目の前には野木崎くん。
この状況は、なんなんだろう?何かのご褒美?




「惣谷さんはさ」
「え、うん?」
「大学、ここじゃないとこ受けるんでしょ?」
「え?」
「ごめん。聞こえてた」
「あー…うん」




そっか。部室に来る時に聞こえてたのかな。
そりゃそうだよね、廊下で話してたら聞こえちゃうよね。
でも…あれ?その時、野木崎くんって教室にいなかった…?




「どこの県の大学なの?」
「えっと…三つ隣の県」
「どこ?」
「…静岡」
「静岡か…」
「うん」




なんだろ?なんで聞いたのかな?
意外だったかな?私がここから出て行くの。




「2時間もあれば行けるのか…」
「え?」
「あっ、なんでもない!」
「そう…?」
「うん。やっぱ美術に強い大学なの?」
「うん」
「そっか」




それだけ言うと、また前を向いて歩き出した野木崎くんは、どこか真剣な顔をしてた。




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