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番外篇
ある日のひだまり 梨恵side
しおりを挟むとある日のひだまりでの出来事。
「京輔さん!」
「え?なに?」
「これ!このメニューダメって言ったよね?!」
「えー?なんでー?」
「なんで?!なんでって聞く?!」
「いいじゃん!梨恵スペシャル!」
新年度になり、メニューに新しいものを加えようということで京輔さんが考えたのが、『梨恵スペシャル』だった。
内容は『春の野菜を使ったサラダ、鰆の香草焼き、菜の花のおひたし、炊き込みご飯、ジャガイモのおみそ汁』のセット。
何が梨恵スペシャルで、どう考えても梨恵スペシャルではないのは確かなのだ。
前にも同じようなこと考えてて、その時は私の好きな料理のセットを考えてたけどそれも断固拒否してお蔵入りにした。
今回は、特に私の好きなものでもないし、私が作る料理でもない。
なのになぜ、『梨恵スペシャル』なのか…。
「だってさぁ、梨恵は俺の奥さんでしょ?」
「まぁ、そうだね」
「だったら奥さんの名前使ったセット作ってもいいじゃんって」
「よくない!絶対によくない!!」
「えー?」
そんなの恥ずかしいに決まってる。
なんで私の名前?!お店の名前で出せばいいじゃない!そんなの、恥ずかしいに決まってる!!
常連さんがきたら確実にニヤニヤされるだろうし、新規のお客さんは「これなに?誰?」って確実になる。
その度に説明しなくちゃいけないこっちの身にもなって欲しい。
「梨恵ちゃん、諦めな」
「正行さん…」
「京輔はそれだけ梨恵ちゃんが好きなんだよ」
「…そんなので好きを感じたくないのですが」
「まあまあ」
正行さんは京輔さんに甘すぎるんだ。
親戚だから仕方ないかもしれないけど、それでも甘すぎる。
だからいつも悦子さんに怒られるんだ!
なんて、八つ当たりもいいところだけど、八つ当たりしないとやってられない。
「じゃあ、梨恵も俺の名前でなんか考えてよ」
「はい?」
「京輔スペシャル!考えて!」
「え、やだよ」
「即答?!」
やだよ、そんなの。
最近若い女性もお年を召した女性もみんな京輔さんを見にき来てるのはわかってるし、もし京輔さんの名前のセット作ったらそれしか売れなくなるよ?いいの?ダメだよね?他にも色々メニューあるのにそればっか売れるってダメじゃない?
だったらそれ一本でやれよって思われちゃうよ?そんなのダメでしょ?何考えてんの?
「…そこまで言わなくてもいいじゃん」
「京輔、梨恵ちゃんはきっと嫉妬してるんだよ」
「はぁ…っ?!」
「え…そうなの…?!」
「ちがっ!もうっ!正行さんも京輔さんも嫌い!!」
「えええええ?!り、梨恵?!ごめん!梨恵ごめん!!嫌いって言わないでぇぇぇ!!!
「あっはっはっはっ!」
「叔父さん笑い事じゃないから!梨恵本当にごめん!!」
もう!ほんっと、正行さんも京輔さんも嫌いだ!
その後、遅番だった悦子さんに2人ともしっかりと叱られてた。
「女の子を揶揄うんじゃない!」とか「京輔くんも梨恵ちゃんが大事ならもうちょっと考えなさい!」とか、色々。
悦子さんも、私の名前のセットに思うところがあったらしい。
そりゃそうだよ。
従業員の名前が入ったセットを繰り返しの時毎回言わないといけないんだから。しかもなんでその名前なのか聞かれた時も説明しなきゃいけなくなるんだから。
「梨恵ぇ…本当にごめんね?」
「………」
「嫌い?俺のことまだ嫌い?」
「………」
「梨恵ぇー…」
「アイス」
「えっ?」
「アイス、たっかいアイス買ってくれるならいいよ」
「!!買う!何個でも買う!ずっと買う!」
「ずっとはいいよ」
はぁ…結局私も京輔さんに甘いんだよなぁ…。
でも、だからってやっぱり『梨恵スペシャル』はあり得ない。
今後も出してきそうだけど、全力で拒否していこうと思います。
END
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